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[ 158 ] 決着

「さて、勝負は私の勝ちでいいかな?」

「み……認めません!」


 レオラの重力魔法で地面にへばりついたロゼさんに、もはや逆転の手は無さそうにみえる。


 どうやらロゼさんが使っていたフリューネルなどは、魔石を嵌めたブーツによる一度限りの魔法だったようだ。両足でフリューネル二発、左手にザントシルド、右手にヴェルアが発動出来る回数の限界だったらしい。


「わ、私の方が……ロイエさんを愛しています!」


 レオラの重力魔法の中、ロゼさんが無理やり身体を起こして、闘志みなぎる瞳をレオラに向けた。


「ア、アイゼンヴァント・オルト!」


 重力に抑えられながら放った練度★4の氷魔法は、ザントシルドのように地面から無数の氷柱が次々と出現して、レオラを襲った。


「ハアッ!」


 レオラはナックルで次々と氷柱を破壊しロゼさんに向かって走り出す。それを迎撃しようとロゼさんも重力魔法に必死に抵抗して、氷柱を無数に発生させる。


「私だってロイエが好きだよ! でも! 愛ってのは押し付けるんじゃなくて、二人で育むものでしょ!」


 バリン!バリン!と負傷している拳を振りまわし、次々と氷柱を破壊し前進するレオラに対して、ロゼさんは自らの足元に氷柱を出現させて無理やり重力圏を脱し、蛇のようにしなる氷柱に乗ったままその勢いでレオラに向かって襲いかかった。


「わたくしの思いの方が強いです!」

「それを決めるのはロイエだって言ってんのよー!」


ガシャン!バリン!バリン!バリバリ!!と氷が次々に割れる音が鳴り響き、ぶわっと白い煙が辺りを包んだ。


「ピヨ頼むっ」

「おっけーピヨ。フリューネル」


 風魔法で白煙が晴れると、レオラの右ストレートがロゼのお腹にめり込み、その場にロゼさんは倒れ込んだ。


 僕はすぐに駆け寄ろうとしたが、無言でラッセさんに止められた。どうやら二人は何やら喋っているようだ。ここからは聞こえない。


 しばらくするとレオラが手を差し出して、倒れているロゼさんがそれを握り返した。


「終わった……でいいですかね?」


 無言で頷くラッセさんの様子を見て、僕は二人の元へ駆け出した。


「うわ、二人ともボロボロじゃないですか」


 レオラは両腕の負傷に加えて氷柱による打撃ダメージも多そうだ。あちこち擦り傷や、切り傷だらけで出血が痛々しい。


 ロゼさんはそんなに怪我した感じはなかったけど、最後の衝突の際に殴られたのか顔は腫れ、お腹に数十発殴られたような後があり服が破けている。


「グローリアヴァイト!」


 範囲回復魔法が二人を包み込む。


「ほらね?」

「ふふ、そうですわね」

「え? 何が……」


 回復魔法で癒される二人が、お互いに視線を合わせて突然笑った。


「この勝負、私とロゼさんのどっちを先にロイエが癒すか、それが勝敗の決め手でした」

「あ……」

「私とロゼさん、どっちを先に回復させるのかと思ったら、やっぱり同時だよね。ロイエはそれでいいと思うよ」

「わたくしの方を先に癒していただけると思ったのに……まだまだ愛が足りなかったようですわ」

「そうそう。ロイエにとって、私たちは冒険者仲間の枠からまだ出てないって」

「ですわね」


 アハハと笑う二人を前に僕は困惑していた。どっちが勝つかではなく、僕がどっちを助けるかを見ていたのか……。確かにどっちが好きとかはまだ僕の中では答えが出ていない。二人とも大切な仲間だ。それは間違いない。


「ごめんなさい。僕にはやらなきゃいけない事がまだまだたくさんあって、えとその……まだ恋人とかは早いので、大人になるまで保留させてください!」


 なんと言ってもいいのかわからず、とりあえず謝るしかなかった。


「あーあ、振られちゃった」

「いえ、保留ですから。ロイエさんのやらなきゃいけない事が終わるまでに、愛を育むとしましょう」

「そうだね。あ、でも夜這いは禁止ね」

「わ、わかっておりますわ。ロイエさん、今日から冒険者仲間としてよろしくお願いしますわ」

「はい! 頼りにしています!」


 ロゼさんが差し出した手を握り返すと、そのまま身体を引っ張られて無理やりキスされた。


「んむっ?! んんー!」

「……これで同じ条件ですわ」

「ちょっと! 今、舌入れてたでしょ?! 私はそこまでやってないよ?!」

「何のことでしょう? わかりませんわ」

「あー! ロゼずるい! ロイエー! 私も!」

「ちょ! レオラ! 一人一回までですわよ!」


 こうしてレオラとロゼの決闘は終わり、二人の仲が良くなったみたいで良かった……。二人に告白された僕はいつか答えを出さなきゃいけない。とりあえず家族を探し終えるまでには、自分の答えを探そうと思う。

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