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[ 015 ] エルツ

「ねぇねぇ。ならギルドが手っ取り早いんじゃなーい?」


 それまで黙ってジョッキを磨いてたエルツが話しかけてきた。実は生まれ変わってから年頃の女の子と話をするのが初めてでちょっと緊張している。


 前世でも勉強一筋で女の子と付き合った事も無ければ、手を繋いだ事も無い。オペの時に汗を女の子に拭いてもらうだけでも心拍数が上がるのに……。


「ギルドの仕事なんて……待てよ。ありかもしれないな」

「でしょー? しっかりした身分が欲しくて信用が欲しいならギルドでしょ。事情は知らないけど、シュテルンさんに言えばなんとかしてくれるっしょ」

「そうだな。現状それがベストかもしれない」


 話を聞くと、この街にはギルドと呼ばれる施設があるらしい。元々モンスター討伐を主体とした冒険者の寄り合いだったけど、回復術師が減り冒険者も狩りに行くのが厳しくなり、いまはなんでも依頼を受け付けているジャンクショップに成り下がっているとの事。


「エルツ頼む! ロイエをギルドまで案内してくれないか?! さっき聞いてた通り、俺は明日までに三番のクズ岩を運ばなきゃいけなくて……」

「嫌よ。私も店の準備があるんだから」

「銀貨三枚で手を打ってくれ! 来月絶対払うから!」

「金貨一枚」

「ちょ! な……うぐ、払わさせてください……」

「よし決まり!」


 ご機嫌になったエルツは、拭いていたジョッキを棚に収めると、エプロンを外してバーカウンターから飛び出してきた。


「改めて自己紹介しておこうか。私はエルツ。ここ、キーゼル採掘所のバーを経営してるの。よろしくね」


 スタスタと近寄りながら自己紹介をするエルツは、おもむろに僕の手を握ってきた。僕はその柔らかい感触に慌てて手を引いてしまった。は、恥ずかしい、こんな若い子に手を握られるなんて……いや僕もまだ若いのか……。


「おや? もしかしてロイエ君、私のことが好きになっちゃったー? 髪型はヘンテコだけど、よく見たら可愛い系の顔してる割にキリッとしてて……私結構好みの顔かも。お金持ちになりそうな顔してる。私と付き合う?」


「ロイエ〜。そいつは辞めとけ〜。親分の娘だぞー」

「余計なこと言うなー!」


 ゲンナリしながら作業着を手にして店の奥に向かうハリルベルが、最後に大事な警告してくれた。あの親分と家族になるのは勘弁して欲しい……。


「あー、大丈夫! 付き合う男の条件は、うちのパパに勝つだけだから」


 そんな条件誰もクリア出来ないんじゃないか?! 挑む気もないけど!


「それじゃー! デートにしゅっぱーつ!」


 エルツがギュッと腕にしがみついてきた……胸が当たってます……とは恥ずかしくて言えず、されるがままに店を後にした。

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