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[ 013 ] ハリルベルの家

「あ、ここだよ」


 煉瓦造りの集合住宅の一階がハリルベルの家らしく。鍵を開けて家に入ると人が一人が寝れるほどの広さしかないワンルームだった。


「服は俺のを貸してあげるよ。洗い場は家の裏手にあるから使ってくれ。はいこれ石鹸」


 家に帰るや否やテキパキと手荷物の片付けをしつつ指示を出してくれるハリルベル。言われるままに着替えと石鹸を受け取ると裏手の洗い場へと向かった。


 もちろん屋敷にいた頃のようにお湯などは出るはずもないが、監禁生活ではずっと水だったので、特に抵抗感もなく洗うことができた。


「すんすん。洗うの上手いね。匂いは無くなったよ。けど……その髪、長過ぎない? 下手だけど切ろうか?」

「そうですね。お願いします」


 ハリルベルに髪を切ってもらいながら今後の作戦について話を進めた。


「この後だけど、俺の働いてる採掘所で働くのはどうかなと思ってるんだ」

「採掘所ですか?」

「うん、とにかくロイエには身分と保証人、信用、お金、住むところ、なにもないだろ?」

「まぁそうですね……」

「この街は、他国からのスパイを炙り出すために、身分証を発行してるんだけど、これは領主が認めた人物しか発行出来ない決まりがあって、うちの親方は発行者に認定されてるんだ」


 親方という単語に、盗賊団の親方を連想してしまい身震いをした。


「あ、ちょ! 動かないで!」

「ご、ごめんなさい」

 

 しかし、この街には不法侵入している。前世では戸籍票や保険証、住民票などがないと雇ってもらえないけど……この世界はそのへんが緩いのかもしれない。


「大丈夫。おっかないけど、すごく良い人だから」

「僕みたいに身分が不明でも大丈夫なんですか?」

「うん、俺も妹を親に売られて家を飛び出して、この街で路頭に迷ってるところを親方に拾ってもらったんだ」


 その時もハリルベルは身分不明の子供だったってことか……。同じ条件なら上手く誤魔化せるかもしれない。


「はい終わり。こんなもんでいい?」

「すごく上手ですよ。ありがとうございます」


 鏡を見ると腰まで伸びていた髪は耳の下辺りでバッサリ切られており、左右のバランスか絶望的に最悪だけど、とりあえず許容範囲だった。


 身支度をすると、ハリルベルの家を後にし採掘所を目指した。時刻はすでに昼を過ぎていたけど、僕らには昼食を食べるお金さえない。


 何度も訪れる階段でそろそろ足が限界を迎えそうな時、やっと目的の採掘所へ辿り着いた。

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