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[ 011 ] ナッシュの門

「これが炭鉱の街ナッシュですか、結構大きな街なんですね」

「ああ、この国でも有名な街だからね」


 炭鉱の街ナッシュは、ベルク山と呼ばれる山の麓に出来た街だった。ベルク山では様々な鉱石が取れるため、国としては防衛や産業の面からも重要な拠点となっているらしい。それゆえにモンスターや敵国からの攻撃に備え、物々しい高さの壁に守られている。


「な、何してるんですか?」


 門番に見つからないように草陰に隠れていたハリルベルは、大枚叩いて買った王国騎士団の鎧と籠手をもぞもぞと脱いでは、草木の中に隠していた。


「いやこんな格好で街に入れないよ……。偽装兵として捕まるからね。また使うかもしれないから隠しておこうかなと。えへへ」

「そういえば、鎧と籠手だけで兜や脛当てなどは……」

「はは、お金なくて買えなかったんだ……」


 ハリルベルは草の中に王国騎士団の装備を全て隠し終わると、入り口の方を指差した。


「見て、あそこに門番がいるだろ?」


 草木に隠れながら見つからないように街の入り口へ視線を送ると、二人の門番が座ってくつろいでいた。


 街に入る際、一般的には馬車でクルツ平原の街道を通るが、こっちのルント湖はモンスターの襲撃に遭いやすいため使う人が少ないらしい。門番がくつろいでるのが良い証拠だ。


「どうします?」

「俺に考えがある」


 そう言うと、ハリルベルは森の中から麻袋を探し出して来た。


「ロイエ君は小さいからこの中に入ってもらい、オレが荷物として担いで入るってのはどうかな」

「やってみましょうか」


 ハリルベルの提案で麻袋に入り、口を縛ってもらう。


「じゃぁ、持ち上げるよ。よい……ぬぐううう。うぉおお……くぅうう」


 ビリビリという音と共に麻袋の底が破れた。


「ぜぇぜぇ……ロイエ君、失礼……だけど何キロある……の。めちゃくちゃ重い……」

「あ、この足枷のせいですね」


 ちょっと足を失礼と、ハリルベルが僕の足を掴んで持ち上げると……持ち上がらない。


「うっそでしょ……この重さで今まで歩いてたの?!」

「これつけたままでも逃げられるようにと鍛えてましたから……」

「どんな足腰してるのさ……そりゃブラオヴォルフの頭も砕けるよ。よし! 別の作戦で行こう。というかもうこれしかない。ちょっと待ってて」


 そう言うとハリルベルは森から出て、無造作に門番の元へと向かった。流石に門番もそれに気付き立ち上がると警戒して槍を構える。しばらくすると、ナッシュの在住者だとわかったのか槍はすぐに降ろされた。


 ちなみに、ブラオヴォルフが出現するような湖なのに、門番があんなにダラけ切っているの門の近くに植えられたラングザームの花のおかけだ。街に近づくにつれて甘い香りが漂っている。


 なにやら身振り手振りで交渉していたハリルベルはポーチからレッドポーションを取り出して門番に手渡した。それに喜んだ門番はハリルベルに目配せすると、門の中に消えていく。


「お待たせ。いまのうち入ろう」

「すみません。僕のためにレッドポーションを」

「いいのいいの。散々回復してもらったからね! 実質無料だよ。それよりも早く」


 ハリルベルに急かされて、ドキドキしつつナッシュの門へ足を踏み入れた。

 

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