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[ 112 ] 修行開始

 半年ほどかかった村の復興が完全に終わった翌日、僕らは朝からレーラさんの特訓を受けることになった。


「よーし! 今日から修行を始める!」

「あ、その前にレーラさんの練度っていくつなんですか?」

「俺か? 練度★8だ!」


 練度★8か……。レーラさんでさえ最大の練度★10には到達してないのか……。


「な、なんだその思ったより低いな?みたいな反応はー!」

「あ、すみません。レーラさんなら練度★10くらいあるのかなと思ってまして」

「わかるわかるぞ。俺様ほどの強さならそれくらいあると!だが残念、俺の知る限りでも練度★10なんて奴は会ったことも聞いたこともない」


 そうなんだ……。


「魔法研所でも、把握出来ているのは練度★7程度で、練度★8ですら幻と言われています」

「幻の存在が俺ってわけだ!」


 レーラは持ち上げられて上機嫌のようなので、先に答えを聞いてしまおう。


「練度★3はツヴァイでしたが、それ以降はどんな魔法を覚えるんですか?」

「まぁ知りたいよなぁ?! 特別に教えてやろう。練度★4はオルト。★5はゼレン、★6はヴェルト、★7はレルム、★8は教えてやらん!」


 次がオルトか。オルトがあればジオグランツの二倍重力が三倍の六倍、さらにジオフォルテを、重ねれば十二倍まで加算できる。これは相当強い武器になる。


「★5のゼレンっていうのは、どんな魔法ですか?」

「村の復興頑張ってくれたからな、特別に見せてやろう」


 やった! 僕が将来取れる魔法を先に見れるなんて嬉しい。


「ロイ、あそこに立ってみろ」


 レーラさんから七メートルくらい離れた場所を指示された。こんなに離れていいのか? レーラさんは、僕と同じ近距離系の重力魔法使いだから、この距離はジオグランツでも届かないような。レーラさんは僕に向けて拳を掲げている。何が起こるというのだろう。


「ゼレン」

「わ! ぐへっ」


 レーラが魔法を唱えた瞬間、彼に引き寄せられ自ら拳を喰らいに行ってしまった。


「はなれにゃぃいい」

「ははは! 見たか、これぞゼレンの効果!」


「なるほど……。重力の方向が自在になったんですね?」

「ほぉ、よくわかったな」

「んあ! じ、自在……ですか?」

「ゼレンはジオグランツとジオフォルテの上位互換でな。最大五倍の重力を方向性まで操れる。しかも有効範囲も十メートルだ」

「ご、五倍?! しかも方向まで?! 範囲十メートル! めちゃくちゃ強いじゃないですか!」


 ジオグランツとジオフォルテはどっちも二倍までだ、ツヴァイで合わせても四倍まで、それがゼレン単体で五倍の上に広範囲で方向まで自在とは、破格過ぎる……。


「まぁ消費魔力は半端ないけどな、俺でもゼレンにオルトやヴェルト付けるのは相当キツイ」

「早く身につけたいですね……!」

「まぁあと五年くらい修行したらいけるんじゃないか?」

「五年ですか!?」

「ああ、早ければ三年くらいか? まぁそんなもんだろう。まずはオルトだがな」


 五年かー。そうだよね。ルヴィドさんも大変だったみたいな話してたし、レーラさんは確か年齢が三十八歳って言ってたけど、その歳でその強さはやはり規格外なのか……。


「よし、ロイ。お前はこれから自分にジオグランツを掛けたまま生活しろ。まずは重さ二倍からな」

「え、軽くするのはダメですか? 魔法の総使用時間を稼ぐなら軽くても……」

「はぁ? 体も鍛えなきゃ意味ねーだろうが! このバカ!」

「痛っああああ!」

「どんどん重力を重くしていって常に四倍の中で生活すれば、筋肉への負荷も相当なものになるし、解除した時の体の軽さはそれこそ魔法と言っていいほどだ」

「な、なるほど……。すみません、生意気言って」

「分かれば良い! ほれ!今からだ! 自分に負荷をかけて腕立て百回!」

「ひぃー!」


 僕とレーラさんのやり取りで、ルヴィドさんが何かを掴んだのか、立ち上がると魔法を唱えた。


「ゼクンデ! ぐぁああああ! ぬううう!!」

「ル、ルヴィドさん?!」


 ルヴィドさんは何を思ったのか、自らを雷魔法で攻撃し始めた。


「遠距離系雷魔力回路の私はこれまで、ずっと敵に近づく事なく遠距離で倒してきました……ぐっ。恐らく……ですが、魔法ダメージを受ける事。これで私の練度が上がる気がします!」


 そんなことも条件に入るのか……。やや信じられないが、ルヴィドさんが直感でそう感じたなら、可能性はある。現にレーラも僕に自らの魔法をかけるように指示してきた。


「遠距離系の魔法使いは……。自分の近くに魔法を出すことが出来ない……のですが、練度★2のゼクンデだけは、特殊魔法で近距離でしか発動しないので……くっ。これしか手段がありません」

「ほぉ。いい根性だ」


 自らを攻撃するルヴィドさんをレーラさんが珍しく褒めると、レーラさんはミルトへ向き合った。


「さて、あとはミー。お前は自分との対話をしろ」

「自分と対話? ちょっと何言ってるのかわからないんだけど」


 今日は思考力がまともなミルト。いつも思考力が低下してるせいかまともなミルトを見ると違和感がすごい。


「お前の中には六つの魂が宿っている。それは六つの魔法を使えることからも明白だ。お前は自分の中にある他の五人の存在を感じる努力をしろ」

「?? よくわからないけど……。やってみるわ」

「右手にヴェルア、左手にヴァッサーを出して自分の中の魔力回路を感じてみろ」


 ミルトは言われた通り、左右の手で別々の魔法を発動させると、目を閉じて自分と向き合う修行を始めた。


「よし、ロイは特別に回復の修行もしてやろう」

「この状態でさらに?!」

「ほれ、ルーとミーも範囲にいれつつ、グローリアヴァイトを使ってみろ」

「グ、グローリアヴァイト!」


 辺りの地面に魔法陣が広がり、四人を回復の光が包んでいく。


「んじゃやるぞー。ほれ!ほれ!」

「ぐあ! ちょ! なにを!」


腕立て伏せしている僕を、レーラが宝剣カルネオールで攻撃してくる。傷は浅いから持続回復魔法陣であるグローリアヴァイトが出ている限り、すぐに回復するけど……。


 僕だけでは飽き足らず、ルヴィドやミルトまで攻撃し出した。


「いやー、やっぱり回復魔法はいいなー。レッドポーションいらずだもんなぁ。これがあれば俺ももっと早く練度上げられたのになぁ」

「ぐあ! レーラさんがやりたかったことって、これですか!?」

「ああそうだよ。魔法ってのは使わなきゃ伸びねぇ。ルーやミーも回復された、という感覚が大事だ。回復したってことはロイの魔力が流れてる。これはつまり攻撃と同じような効果があるのさ」


 な、なるほど。回復も攻撃の一種と……。だからって、なんて……は! そういえば市長が奴はドSだからなって言ってのは、こういうことなのか?!

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