死にたくないから殿下を篭絡したらなぜかドMになった件について。なぜですの?
ちょっと長めの短編です!
初作品初投稿となります!よろしければ読んでってくださいませ。
みなさまごきげんよう、流行りの異世界転生なるものをした悪役令嬢ですわ。
そう、わたくし自分がいつ死んだかは知りませんけど、気付いたら魔法とかいう不思議ぱわ~が常識の乙女ゲーム『魔法学園恋愛譚』の世界に、いち公爵令嬢(悪役)レティシア・オルロックとして転生していましたの。
主人公でもなく、脇役でもなく、悪役令嬢!?えぇ、最初はもう本当に驚きましたわ。今流行の悪役令嬢に転生した系の小説を前世嗜んでいた身としましては、この先苦労するのは目に見えていましたもの。しかし人間本当に驚くと放心してしまうものですのね、しばらくは思考を停止し、現実逃避をしておりましたわ。ですが、そうもしていられない事情がありましたの。
そう、この悪役令嬢(自分ですけれども…)、あらゆるルートで断罪処刑、もしくは追放生死不明(まあ十中八九明るいみらいではない)となってしまうんですの!なんですのその救いのない未来は!?普通に考えて公爵令嬢といういわばカースト上位の者をそう簡単に処刑したり追放できるものなんですの!?まあ、ファンタジーに現実味を求めるのは無粋、というものなのかしら…。まさにいま現実として直面していますのに。
そこからわたくしはどうすれば良いのか三日三晩考え、知恵熱をだし寝込みましたわ。その結果、まあありがちですけれど、婚約者になる方を主人公よりも先に篭絡し手中に収め、なんとか追放を逃れようと考え付きましたの。ゲームの中に出てくるどぎつ~い、高慢な女性ならいざしらず、ゲームや前世から得た知識と今のわたくしの性格を持ってすればきっといけますわ!
あぁ、遅ればせながら紹介しますと、わたくしの婚約者になる方はこの国第二王子殿下であるクラウス・フォン・ローゼンタール殿下ですわ。ふわふわの陽の光を透かしたような金髪に、美しいサファイヤのような深い青の瞳を持つ、まさしく王子様の代名詞のような容姿のイケメンですわ。性格はすこしツンデレだけれど根は優しく、頭脳明晰・文武両道の非の打ちどころがない王子様ですの。この方を本当にわたくしなんかが篭絡できますの…?と不安にもなりましたが、根性ですわ。やるしかないんですの、それに悪役令嬢とはいえゲームの設定上かなり容姿端麗ですので、そのらへんの少しかわいいぐらいのレディに負けませんわ!
そんなこんなで今後の方針を決め月日が経ち、殿下とわたくしが6歳の時にお茶会ではじめて顔を合わせる運びとなりましたわ。
お茶会当日、それはそれは美しいショt…、いえ美少年を目にしてわたくしそれだけで生きててよかった…と昇天しかけましたけれどなんとか目的を思い出し踏みとどまりました。
ゲームからの知識によりますと、殿下は頭脳明晰で文武両道ですけれど、その裏ではかなり努力されたそうですわ。周囲の期待になんとか応えようと早いうちから子供らしい甘えやわがままを捨て、我慢を覚えたそう。環境が環境とはいえ、6歳の子供にそれは酷ですわよね…まあその反動で主人公の優しさに触れコロッと落ちてしまうのですけれど。
それなら主人公よりも先に、前世がある分実質年上であるわたくしが先に殿下に優しくし、褒めに褒めることで好感度を上げようと思い実行しましたわ。そうしたら効果は絶大。最初は褒められるたびに謙遜していた殿下ですが、だんだんと照れながらも素直に褒めらるようになりましたわ。なんてかわいいのかしらr (ゲフンゲフン) 。勉学や鍛錬にはじまり、その輝かんばかりの容姿や優しいけれどすこしだけ甘えん坊な性格、日常の些細なことに至るまで褒めちぎりましたわ。しかし飴だけではただの甘えたのおっきい子供が完成してしまうかもしれない(ありますわよね、親が甘やかしすぎてダメになってしまう例)、と考え鞭も振るいましたわ。まあ鞭というほどでもありませんけれど、他の令嬢や貴族に対しての素っ気ない態度やわたくしが領地に帰る際にだだをこねた時などに年上然として諭しましたわ。持ち前のツリ目をはじめとしたすこしきつめの容姿を活かして、しっかりと威厳をもってかつお姉さん風に話せたのではないかと思いますわ。
そんなこんな(二回目)で時は過ぎ、殿下は原作のツンデレとは違い、誰にでも優しく人当たりの良い紳士へと成長しましたわ(わたくしには甘えてきてかわいいですわ)。まさしく理想の王子様のような人物に育ったのではないかしら。
その頃のには殿下はわたくしにとてもなつき、どこに行くにも何をするにも大抵ついてくるようになりましたわ。…会うたびにかけられる甘い言葉や距離の近いスキンシップには多少、えぇ多少!ドキドキして戸惑ってしまいますけれども、これもわたくしの努力の賜物ですわよね。
さて、いよいよゲームの場となる王立魔法学園に殿下もわたくしも、もちろん主人公も入学し、わたくしにとっては命がけのゲームが始まりましたわ。殿下を篭絡した今、怖いものはないと頭ではわかっていても、やはり不安が無いわけではありませんでしたわ。ですが結論からいうと、そんな心配は全くの無用でしたの。
ゲームのシナリオ通り殿下と主人公が出会うイベントやその他複数のイベントは確かに起こりましたわ。しかし、殿下はまったく主人公になびきませんでしたの。まあ優しい態度ではありましたけれど、あくまでそれはその他大勢に対すると対応と同じもので、特別な感情などは微塵も感じませんでしたわ。なんとそのまま時が過ぎいよいよわたくし達は卒業、殿下とわたくしはそのまま結婚といところまできましたわ。え???あっさりしすぎではありませんこと???と考えもしましたが、まあそうなった物は仕方がない。むしろ私は命も家もお金も家族も失わず、殿下と結婚までできるのですから、願ったり叶ったりですわ。…でも、本当になぜ殿下は一ミリも主人公に興味を示さず二人の仲は進展しなかったのかしら?どうせ結婚するのですもの、疑問は早いうちに解消した方がいいと思いわたくし殿下に聞いてみましたの。
「殿下、学園でよく殿下に話しかけていたシュジン・コーウさんっていましたでしょう?彼女はよく殿下のそばに来ては話をしていましたけれど、殿下はその方に惹かれたり、興味を持ったりしませんでしたの?」って。そうしたらこう返ってきましたわ…。
「レティ、君は何もわかっていなよ。僕が君以外の女性に興味を、まして好意なんて持つわけがないだろう。だって僕が好きで、愛しているのは君だけなんだから。」
「でも、わたくしは彼女のように綺麗なミルクティー色の柔らかそうな髪も、大きなクリクリとした小動物のような瞳も、かわいらしい小鳥のような声も持っていませんわ。世の中の男性はあのような女性を守りたい、愛したいと思うものではありませんの?」
「あぁ、レティ…。君がそんなに不安がるなんて、僕の愛の伝え方がきっと不十分だったんだね。僕は君の夜空を溶かしたような髪も、シトリンのような輝かんばかりの凛々しい瞳も、静かで耳障りの良い声も、時々子供のように笑うキラキラとした笑顔も、大人びているけれどかわいらしいものが好きで、僕のことが大好きな性格も、全部大好きだよ。君のすべてが好きなんだ、愛おしいんだ、レティ…。」
「殿下、もう充分です…。わたくしが無粋なことをききましたわ!」
「いいや、まだだよ。まだ一番素敵な君の魅力を語れていない。」
「…わたくしの、一番の魅力?」
なにかしら、容姿や性格のことはさっきおっしゃっていたし…。家柄とか?いえ無いわね。
「レティ、君の一番の魅力は…」
「僕を叱るときにだけ見せてくれる、僕だけに見せてくれるあの冷たい眼差しだよ!!!」
「…え?」
「君のあの僕を叱る時ににだけ、僕にだけ見せてくれる冷たい蔑んだような眼差し、あぁ、思い出すだけで喜びで震えそうだよ!最初は君に叱られるのがすごく嫌だったんだ。いつも優しい君に怒られるのが苦手だった…。でも、君は本当に大切な人、つまり僕にしか怒らないし叱らないことに気が付いたんだ…!それに気が付いたあの時の喜びは今でも覚えてるよ。君も知っての通り、僕は周りから期待はされど、大切にされたり愛しては貰えていなかった。いや、はたから見ればきっとすごく大切にされていたんだろうね。でも、幼い僕にはその周りの打算や欲にまみれた優しさも、王子ゆえに大切に扱われる事もひどく無機質に思えてならなかった。そんな僕に愛を与え、優しさをくれたのが君だよ、レティ。」
「はじめは君も周りの人間と同じように僕に期待を押し付けるばかりで、きっと本当に愛してはくれないと思っていた。でも違った、君は当然だと受け流されていた僕の努力を誉め、僕の話を真剣に聞き、寄り添ってくれた。本当に心配して怒り、叱ってくれた。僕はそれが心から幸福だったんだ。」
「あぁ、この子は僕のことを心から愛してくれるんだ…。そう思ったよ。そう思ったら君が僕を叱ってくれることがひどく甘美で素晴らしいことに思えたんだ。」
なにを言っているのかしら、この方は。よくわからないし、わかりたくありませんわ…!つまり、あれですわよね、叱られたり怒られたりすることに興奮、するってことですわよね!?そんなの…
「そんなの、ただのドMじゃありませんこと!!???」
「ドM…?」
いけない、声を荒げてしまいましたわ…!
「…えぇ、マゾヒスト、もとい被虐趣味者のことですわ。人に罵られたり蔑まれたりすると興奮する方のことです。」
「興奮…。そうだね、僕は興奮しているんだ。君の、そう!まさにその蔑むような冷たい眼差しに…!」
いけない、つい意味が分からな過ぎて殿下を睨んでしまいましたわ。これでは殿下を喜ばせるだけ…
「とにかく!殿下は誰かに叱られることが少なかったからそんな勘違いを、そう!その感情は勘違いですわ!わたくしに睨まれたり叱られて興奮するなんて…」
「いや、レティ。僕は今確信したよ。君に睨まれ蔑まれ、冷たい視線で見られることに自分がはっきりと興奮していると!さあ、もっとその可愛い瞳で僕を睨みつけて、さっきみたいに声を荒げて僕を罵って…♡」
「い、いやーーー!殿下が壊れたーーーーー!!!」
その後、わたくしの叫び声を聞いたメイドが騎士たちを呼び、事情を聴かれ国王陛下と王妃様にまでこの出来事を話すこととなった。事情を聴いた両陛下は頭を抱えたが、わたくしがいる限り殿下は暴走しないとお考えになったのか、婚約はそのまま継続、結婚の予定も白紙とはなりませんでしたわ。
「こんなつもりじゃ、返品!いえ、今からでもこの結婚を考え直しませんこと!?きっとわたくしよりも殿下を満足させることのできる相手がいますわ!」
「そんなこと言わないで、レティ。僕は君を愛しているんだ、君じゃなくちゃダメなんだ。それに父上はこのまま婚約を継続するとお決めになられた、逃げられないよ、レティ♡」
「あ、あぁ…!こんなつもりじゃありませんでしたのに!あの天使のようにかわいらしかった王子様がドMだなんて、そんな、どうしてですのーーーーー!!!」
さてこのような結末と相成りましたwこれにてこの話は一時閉幕となりますが、好評のようでしたら長編(連載…?)で書くかもしれません。(予定は未定、これ重要)