9話
私達は準備を整え金券を持つとすぐに銀行のある場所へ向かった。
銀行の荘厳な入口の上には四つ足で翼の付いた妙な動物の像が眼下の客を睨んでいた。その像に纏う雰囲気に威圧感を感じ少々、気圧されながら建物内に入るとカウンターが並び女性の行員が客の接客を行っていた。
空いている場所に席に着き要件を述べた。
「この金札の換金と口座の開設を。」
「失礼します。」
女性行員は金札の書かれている金額を確認すると銀行の奥に歩いて行った。
数分、時間がたった後に私達の前に別の男性行員が現れ、握手を求めてきた。
私は握手に応じると
「私は支店長のフーリと申します。本日のご用件ですが換金と口座の開設とのことですがここではなんですのでこちらに。」
支店長と名乗ったフーリに案内されて応接間に通された。お互い席に着いたがミリアはなぜか支店長の隣に座ったり、私の隣に来たりとせわしなくふゆふゆと浮いて動いている。
私が少しにらみを利かせるとミリアはおとなしくなり、机の上の天井付近に留まった。
私は別に邪魔にならないのだけれどそれでいいの?
そうしているうちに支店長は持ち込んだ書類を整い終えてこちらに向き直って話し始めた。
「緊張しなくても大丈夫ですよ、まず今回、持ち込んでいただいた金札ですが効力のあるものだと確認されましたので換金は今すぐにでも可能なのですが、口座の開設がですね本人の確認が必要でして、この手続きが時間が掛かるのですがお時間はありますか?」
ミリアを目で追っていたためか緊張していると思われて気を使われてしまった...。
「この後は用事もないので時間は取れますよ。」
私が時間が取れると伝えると支店長はニコリッと笑い、側に置いてあった書類を目の前に差し出してきた。
「まずこちらが弊行のご利用する際のお客様との信頼関係を結ぶ為の誓約書でございます。」
誓約書が目の前に置かれるとミリアがこちらに寄ってきて耳打ちをしてきた。
(ラミーア、この誓約書わずかにだけど光ってるね。)
ミリアが言ったとおりに誓約書をよく見てみるとかすかに光っており、言われるまでは光の反射によるものだと思っていた。
誓約書の内容は光っていること以外は不自然なことが無い。
「どうしましたか?」
じっと誓約書を見つめていると支店長がたずねてきた。
「あぁすみません、こういった場所でやり取りするのは初めてですので。」
もちろん嘘であるがそういうと支店長は安心したような顔をした。
引き延ばすことでもないのですぐに誓約書にサインをした。
サインした誓約書を支店長は確認して誓約書をしまいこんだ。
「次に契約書も兼ねているのですが当銀行の伝統といいますか慣習に乗っ取った儀式を行いますので準備を行いますので少しの間、ここでお待ちになってください。」
「えっ?」
今、私の聞き間違いでなければ銀行では聞くことのないであろうような単語が聞こえてきた。
儀式?そんな事、銀行で行われるようなモノではないだろう。
思わずミリアの方を見るとミリアも同じように疑問に持っているようだった。
支店長が出て行った後に私達は顔を見合わせた。
「ミリア、儀式ってなんのことだと思う?」
「私は口座なんて作ったことないので、私達が知らなかっただけで銀行はこういったものかも?」
「う~ん?」
私が頭をかしげているとミリアが提案をしてきた。
「私が先に見に行って様子を探ってくる?」
確かに悩んでいても埒があかないから姿も見えないミリアに様子を見に行ってもらった方が安心であろう。
「えぇ、お願いしてもいい?」
「じゃあ、いってきまーす。」
「気を付けてね。」
私はミリアがドアの向こうに消えていくまでずっと見つめていた。