7話
馬車でずっと走って行き途中で休憩を取りつつ途中の町で一夜を迎えて最初の町から1日半、私達は港町ケールについた。
「あのラミーア大丈夫?」
「うぷっ、大丈夫...。風に当たりながら歩いて宿屋で休憩すれば何とかなるわ...。」
私は初めての馬車に激しい乗り物酔いに襲われてしまい馬車から下りた後に壁にもたれかかって動けないでいた。馬車で移動中で一夜を過ごした町も乗り物酔いでどこかに行く気力も残らずそのまま寝てしまった...。なんて勿体ないことをしてしまったのか。ミリアは私を心配して側にいていくれたので悪いことをしてしまった。ミリアも外で楽しみたかっただろうに。
「すこしマシになってきたわ。そろそろ宿を確保しに行きましょ。」
「ちょっと待って!私が探しに行くからラミーアはここで休んでいて!」
ミリアは今回も心配で側にいてくれたみたい。体調がよくなって頭を上げて周りをみると、やっぱり交易で栄えている港だけあって馬車や人通りが激しい。
景色を眺めているうちに気分が良くなってきた。そして、眺めていると目の前に馬車が通っていく中に一つの馬車が目についた。馬車の幌の隙間からボロボロの恰好をした人間が乗っているのを見つけた。馬車から一瞬、異様な臭いがしたため普通の馬車ではないとわかる。
「ラミーアー!宿見つかったよー。」
ミリアが宿を見つけて戻ってきたようで大声で叫びながら戻ってくる。彼女は物にぶつかるとかは無いだろうけどなんだか物に躓きそうな勢いである。
「ミリア、戻ってきたのね。」
「はい!この大通りを突き当りまで行って右に曲がって二つ目の曲がり角を曲がったところに海も見渡せる良い感じの宿がありましたよ!ところで体調は大丈夫?」
「ここで休憩していたから大丈夫だったよ。ありがとうね。」
馬車の事を聞こうと思ったがここでずっと話していると不審がられるので早々と宿に向かって部屋を確保することにした。
宿で部屋を取り、部屋に入って窓から景色を見ると海や港が見え、大きな帆船が海の上を走っていた。
「たしかに景色がいい部屋ね。活気があっていいね近くの市場も見えるけど楽しそう。」
「本当に楽しそうよね。各地から色んな食材が集まるからおいしい物が食べられるよ。」
「あとで行きましょう。そうそう、聞きたかったのだけど...。」
私はミリアに先ほど見かけた馬車について説明した。
「...という感じの馬車だったのだけど怪しいと思わない?」
私が説明するとミリアは少し考えたのち合点を得た顔をした。
「あぁ...。たぶん奴隷でしょうね。」
「奴隷?」
「そう奴隷。船での航海って過酷でね常に船員を求めているのだけど、その船員を奴隷で補っているのよ。ここは大きな港町だから多くの奴隷が求められるのよ。」
「へー。奴隷ってまさかどこかから無理やり?」
無理やり人を攫って来ているのであればなんと野蛮なことをやっているものだと思う。
「そんなの犯罪よ?奴隷は犯罪奴隷や借金奴隷などよ。まぁ中には騙されて借金を背負って来ていいる人もいるかもしれないけどね。船員とかは給金が高いからね上手くやれば借金をすぐに返すことができるから望んでくる人もいるみたいね。」
他にも鉱山などの危険な場所にも奴隷は使われているようだ。
「そうなのね。」
ミリアとの会話をしている間に荷物をまとめて置いた。市場に行くために財布を持って行ったが他の貴重品をどうするか悩んでいたら再びミリアが話しかけてきた。
「荷物なら置いて行っても大丈夫よ。プレートは荷物の中に入っているでしょ?」
「ええ。荷物の中に入ってるよ。」
「プレートに人が近づいたら私がわかるし、近くに行くことも出来るわ。最初に会った時みたいにね。もし盗みを働いていたら阻止しておくからその間に戻ればいいわ。」
妨害して相手がそのまま諦めて逃げたらいいがもしそのままいた場合に備えて武器は携帯しておいた方がよさそう...。使うことはないと思って荷物の奥にしまい込んでおいた短剣を腰に吊るすことにした。
「今まで知らなかったけどラミーア、短剣なんて持っていたのね。」
「一応、護身用に持っておきなさいって持たされてね。腰で揺れて少し鬱陶しいわね。」
「多分やらないと思うけど、短剣は持つことは犯罪じゃないけど街中で抜かないでよね。」
「もちろん。」
部屋に鍵をかけ市場に向かった。市場には異国の食器や小物に変わった模様の布があったりとなんというか文化の坩堝という感じがしてワクワクした。解説が一緒にあれば何日でもいることが出来そうだ。さすがに何も買いもしないのに店主に聞くような冷やかしはできない。
「これはガラスのコップ?綺麗だね。初めてガラスでできた食器を見たわ。」
店先に並んだガラス製の製品は綺麗で手に入れたいが旅をする上で邪魔になるため買うことはできないが。
「そこのお嬢さん!どうだいこのグラスは綺麗だろ普通のガラスと違って、この透明感!」
「いや...。わたし旅をしているので...。」
店主の大きな声にタジタジになりながらお断りをすると店主は大丈夫と話してきた。
「それならこのグラスはあの古代の大国!トネル帝国時代のグラスで不思議なことにどんな衝撃を与えても壊れないという一品だよ。見てな!」
そういって店主は後ろから金づちを取りだしてグラスを叩きつけた。叩きつけられた瞬間グラスから澄んだ金属音が響いた。
「ねぇ。ラミーア?これは本当にガラス?」
ミリアの言いたいことはわかるが見た目は明らかにガラスだし金属ではない...はず...。でも見た目が綺麗だし壊れないなら旅に持って行っても大丈夫なはず、是非に欲しい。
「このガラスはいくらになりますか?」
「金貨3枚ってところだな。あっもちろん。このグラスも良いがの他にも色々あるから他のも良い商品だからな。」
店主はこちらが旅人であることを思いだしたかのように別の商品をすすめだした。確かに旅人で大金を持っている人は少ないだろうし、見た目からして小娘がもっているはずがないのでただしいのだが。都合のいいことに私は今、大金が舞い込む予定なのである。
「すみません。おじさん。近々に大きな収入があるので取っておいて貰うことってできますか?」
「この値段の物は滅多に売れないから大丈夫だよ。」
私はまた訪れることを約束して店から離れた。