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エルフ娘のぶらり旅    作者: 車・轍
4/11

4話

宿で出た夕飯はパンにチーズに加えて具がたくさん入ったスープが出てきた。お母さんが作るスープより具沢山だったのでこの宿はサービスがいいのだろうか?


ベットから起き上がり美術商が取引が終えるまで時間があるので私はこの町を散策することにしていたので女将に話を聞くことにした。


「女将さん、おはようございます。」


「はい!おはよーさん。何か用事かい?」


「散策をしたいのですが、この町に来たばかりなのでどこか見て回るのにいい所ないですか?」


「そうだねぇ。教会前にある噴水広場はどうだい?あの噴水は立派なもので町が出来た時からあるものなんだよ。周りには出店も出ているから時間も潰せるしね。」


私はお礼を伝えて、昼は戻って来ないので要らないことを伝えて外に出た。今日はいつもより気分がよく足取りが軽かった。

この町の教会もどうやら町の真ん中にあるらしく、噴水をすぐに見つけることが出来た。 


「立派な噴水ですね。わたし、3人分くらいの大きさかしら。」


噴水は本の挿絵でしか見たことが無いけど水が出ている様子は涼しくも感じられる。周りが石の建物に石畳の中に自然を取り入れたいという考えなのかこの町の中に涼が感じられるようになっている。


噴水の周りには話の通りに屋台が多く出ており、まだ店の準備しているようだった。本の中の話だと屋台には昼食などに労働者が買いに来るというの読んだことがあるから昼前のこの時間では準備できていないようだ。

昼になれば人が集まり昼食が買えなくなるかもしれないので私は早く準備が終わり販売を始めていたサンドウィッチを出していた店で昼食を買った。

昼食を鞄の中に入れ周りを見渡すと一人の男の子が目に付いた。男の子は道に間隔をあけて小石を置きながら歩いている、そしてこちらを見ると建物の間に入り裏路地に走って行ってしまった。


「わたしの顔を見て走っていった気がするけど気のせいかな?」


男の子が置いていった石に視線を移すとなにやら石が白く淡い光を発しているように見える。しかし、周りの人は石の存在に気付いていないようでそのまま通り過ぎている。


「似たような光、どこかで見たことがあるような...。確か森の祭壇付近で...。」


里の祭壇の近くの木や石がこのような光を発していたけどこんなに白色だったかな?祭壇の近くの石は白というより緑掛かった光だった気がするけど。


白く発光した石を拾い上げようと手を伸ばした時、視線を感じて顔を上げると男の子がこちらを見ているのに気付いた。男の子はこちらが気付いたのを見て走り去ってしまう。


「あの男の子もよく見てみると、なんとなく町の人たちと違う雰囲気な気がする...。」


男の子が走っていった裏路地に歩いていくと大通りと変わらない景色だが人気が無く歩いている人が一人もいなかった。男の子の姿はそこにはなく何処にもいなかった。

奇妙なことに人どころか建物に灯りさえついていなく人の生活が営まれていると考えられないが、しかし、建物は放置されている様子もなく手入れがなされているように思う。


「走っていったとしても見失うとは思はないけど...。」


男の子の代わりに道にはあの白く発光している石がぽつぽつと落ちていた。 


「あの子が落としていったのかしら。」


拾ってマジマジと石を眺めてみると熱を発している訳では無いが何故かほのかと温かみを感じた。


ギィッ。


音がした方向を見ると宿らしい建物の扉が開くのを見た。


建物の中からは喧騒が聞こえて気がした。

建物は私が宿泊している宿と同じ気がする。


「え...。」


建物の中は私が宿泊している宿の内装と同じであった。そして、部屋の真ん中にあの男の子が座っている。


「お姉さん、エルフでしょ?」


「なんでそう思うの?」


「だってお姉さん、この通りに入ってこれたし僕のこと見えてるでしょ?」


男の子を最初に見た時の反応や町の様子から何となく普通とは違うと思っていたがまさか人間には見えてはいけないものなのか?


「あなたは何者なの?」


「君たちが神や妖精、精霊と呼んでいるものかな?」


「神?」


「まぁ僕の認識だと神というより生物の意識の集合体に近いかな?生物と言っても知能の発達している人間の意識が強いから信仰による存在といった方が正しいかな。」


この男の子はつまり神的なものらしい?


「さっき君はわたしが見えてるって言っていたけど人間には見えてないの?」


「そうだよー。エルフだけが見えるみたいなんだよね。昔、この町に来たエルフが僕のこと見えていたから間違いないよ。それに僕と同じ存在は君の里にもいたと思うけど?」


「えっ?わたし見たことないけど...。」


里にいた頃に隅から隅まで知っているつもりでいるけど一度でも見たことが...。似た雰囲気は祭壇で感じたことがあるけど。 


「エルフだと巨岩や巨木なんだけどなかった?」


祭壇の近くに巨木があったけどそれが?


「人間は神や精霊を身近な自分達の姿に似た姿を想像するからね。エルフの君たちは森ありきなところがあるからね。」


「君、別にわたしの前に姿を出さないでそのまま隠れていることも出来たのになんで今、わたしに姿を見せてここに誘いだしたの?」


「この宿にいる人に好感を持たれているようなのと個人的な興味かな?」


人々の意識からできているだけあって人々の印象を感じとれるため私に対しても好印象を持っているらしい。


「好感と言われてもまだ町に来て2日目よ?」


「君、宿に泊まる時に酒場で代金を奢ったのと女将さんからも好印象だよ、それだよ。だからその思念が強いこの宿の場所で姿を表したわけ。」


美術商の助言に従って奢ったけどなんて単純な。


「今日はいつもより気分がいいでしょ?」


「ええ。」


「僕の力の源が住人の意思とか意識からくるのだけど君に対しての印象分の力を君に還ってきたの。」


「それってみんなにしているの?」


「そうだよー。」


どうやら美術商が私に助言したのは誰かに好意を向けられると良くなるというのが経験的に分かったのかこの町にそういう話があるのか。


「教会でも同じようなことがあるよ。」


「どういうこと?」


「教会は自分達で住人の信仰が集まる対象を作り出すからそこから分配するんだよ。」


「君に入る力は減らないの?」


「感謝の対象とかが聖人に向いているから、少しだけ自分のところに入る力が減るだけだから大丈夫だよ。」


どうやら別に教会があっても影響はないが自分の領域に教会が入ってきたのだから面白くないと思うのだけど気にしていないのかな?


「気になるなら実際に教会に行ってみれば?面白いのが見られると思うよ?」 


?どういうことかわからないが行ってみろと言うなら覗くだけ覗いてみようと思う。


「じゃあね〜。」


男の子は手を振って送ってくれたので私も手を軽く挙げて振ってあげた。建物から出ると裏路地に入る前の場所に立っていた。後ろを見ると裏路地が見えたが人が歩いているのが見えて元の場所に戻ったことがわかった。


教会は目の先にあるのですぐに行ってみようと思う。教会は町にある分、村での教会より立派だった。この教会では人員も多くいるようでシスターが扉から出入りしていた。教会の扉を開けて中に入ると村の教会と同じく人の像があった。


「面白い物があると聞いたけど特に変わらないような?」


少し内装が豪華なだけで特に変わった物があるとは思えなかった。

像の近くの祭壇に近づき周りを見渡すと像の下の部分に名前のプレートがあり文字が光っているように見えた。


「この光ってそう言う光よね?」


うっすら黄色に光っているがこれ以外見当たらないような。


「ばぁ!」


「きゃっ!?何!?あなた誰?」


そこにいたのは像の人にそっくりな女性だった。褐色肌の綺麗な赤色の髪をしていた、そしてだいぶスタイルのいい...。驚いた私をみて愉快そうに笑っている。


「誰って?さっきから見ていたじゃないの。」


見ていた...。この像のこと?プレートに名前が書いてある...。


「え...と。ミ...リ...ア、ミリアさんでいいの?」


「そうよ。」


「なんで?わたしの事をいきなり驚かしてきたの?」


「いやね?プルムがなんか楽しそうな事しているから私も興味が湧いちゃったの。」


「プルム?」


「あら?会わなかったの?ほら男の子の。」


あの男の子の名前はプルムという名前らしく、この女性はこの教会にいる存在かもしれない。というか名前があったんだ。なんか神や精霊らしくないなぁ。


「あなた達、精霊や神とかの存在なのに名前があるのね。」


「エルフたちの神は違うのかしら?人間の神は名前がみんなあるわよ。」


「エルフにはあまり必要がないので...。」


大木や森に対しては信仰の対象としてあるがそこに固有名詞は必要なのだろか?ミリアは元々人間として名前があるのだから名前があるのは当たり前だが、プリムはなんで名前があるのだろうか彼は人々の思念からの存在とは言っていたが...。


「プリムがここに来たら面白い物が見れると聞いたけど貴方のことであってるの?」


「面白い物ってまるで見世物みたいな言い方ね。プリムがここを指定して言っているならあってるわよ。」


彼女は苦笑いしながら話していた。


「ずっと気になっていたけどプリムとあなたって知り合いなの?」


「知り合いと言ったら知り合いね。私が生まれた時からね。そんな話よりあなたこの町に来てから日が浅いでしょう?私が案内してあげるわ。」


話をそらすように言われたが実際この町のことはよくわからないのでありがたい提案であった。二人で教会に出た後にミリアはこの町を案内してくれた。広場を中心においしい食事ができる店、取り揃えの良いアクセサリー店、旅をするならこの雑貨店などを紹介された後にお店に入りお茶をして時間を潰していた。


「ミリアさん。私だけがお茶を飲んで暇じゃないかしら?」


「飲めなくはないけどね。空中に浮かぶカップって怖くないかしら?」


確かに周りの人は姿が見えないのだからカップが浮いていた気味が悪いだろう。しかし、私だけがお茶を飲んでいると申し訳なくなってくるので帰りの際になにかお茶菓子を買おうかしら。


時間がたったのでお店が出てお茶をしたお店でお茶菓子を購入したので教会の中で別れ際にミリアに手渡して分かれることにした。分かれた後に宿に戻って女将になにか伝言がないか聞いたがまだ美術商からの伝言は無いようなのでまだ時間がかかりそうだった。

話相手が出来たので待つまで暇はしなさそうだ。




















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