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夢も現実も男3人彼女さがし  作者: きつねあるき
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第1部、第4章~フリータイムで出負けるな

 フリータイムでは、10分経つとお相手を交代しなければならないルールでした。


 時間になると、会場係の方が右手を挙げて合図をします。


 「はーい!1回目のフリータイムは終了で~す」


 「次の方と交代して下さいね~」


(各々(おのおの)違う異性のもとに移動する)


 「くれぐれも同じ方とは話さないで下さいね」


 「ちょっとそこの男性!早く移動して下さいね」


(男性の中には本命の女性から離れたくないからと移動を渋る方もいました)


 「それでは、2回目のフリータイムを始めま~す」


「それでは、張り切ってど~ぞ~」


 と、まあ、こんな感じで進行します。


1回目のフリータイムで出遅れてしまうと、10分間は何もやる事がありません。


 次の10分間に備えて、話したいと思う女性の横でじっと待つ…、という実に非効率な時間の使い方をするしかありません。


 だとしても、次に話せるポジションを取ればまだ救いはあります。


 やはり、人気になる女性の横には何人もの男性が並んでいるので、その後ろにつくかどうかは考えてしまいます。


 フリータイムは、1セット目(前半戦)と2セット目(後半戦)があり、それぞれ30分ずつ行います。


 分かり易く言うと、10分×3回が1セットになります。


それが2セットあるので、最大で6人(6グループ)と話せる訳です。


 更に厳密(げんみつ)に言うと、フリータイムの枠は60分と決まっているので、1回10分-移動時間≒9分20~30秒にするか、最後の6回目だけを調整して短くするかは運営会社によって様々でした。


 後者の場合、最後の回だけ5~6分の時もあるので、お誘いするのであれば早めに交渉しないと間に合わなくなります。


 フリータイムで人気の女性の横に並んでしまうと、60分で10分弱しか話せない事もざらにあります。


ただ、人気の女性の横に2人以上並んでも意味がないので、3番目に並ぼうとすると会場係の方が他の女性のもとに行くように(うなが)します。


 それに納得が出来ない男性は、会場係の方に詰め寄るケースもありますが、これ以上並んでも話せない旨説明すると仕方なくその場を()り行くのです。


 不貞腐(ふてくさ)れて、そのまま途中退室をする男性もチラホラおられますが、会場係の方はそれを見て見ぬ振りをしてやり過ごします。


 大概(たいがい)、そういうタイプの男性は短気でキレやすいので、余計なお世話をすると八つ当たりされる事もあるからです。


 いくら仕事上の事とはいえ、暴力を振るわれては(かな)わないので、会場係の方が一番恐怖感を覚える一時(ひととき)でもありました。


 逆に、人気薄(にんきうす)の女性となら6回分フルで話す事も可能です。


 その条件としては、3人で連携(れんけい)している事が前提となります。


仮に、うちら3人が連携したとしたら、前半戦に誠司君がA子さん、実君がB子さん、ぼくがC子さんとそれぞれに話しているとします。


そうしたら、10分経つ(ごと)にうちら3人と話している女性と入れ替わればいいのですから。


 後半戦も、うちら3人がD子さん、E子さん、F子さんと話して同じ様に入れ替われば、ほぼ確実に6回分話す事が出来ると思います。


 但しこの作戦は、うちらと話している女性の横に1人でも他の男性が並んだ場合は成立しません。


 それでも、うちらが仲間だと察知(さっち)すると、自分には勝ち目がないと思って離れて行く男性もいるにはいました。(そうなるとチャンスは継続します)


 なので、3人共話せた場合は、頃合いを見計らってお互いの存在をアピールする事にしていました。


 この方法だと、圧倒的に有利にはなるものの、3人の思惑が一致しないと連携を図る事は出来ませんでした。


 それは、1人でも人気の女性の横に並んでしまうと、この作戦は企画倒れになってしまうからです。


 カップルになる可能性は低いものの、数分間だけでも人気の女性と話すのか、何人もの人気薄の女性と話して可能性を広げるのかは難しい選択でした。


 効率を考えれば後者だと思いますが、参加料として5000円~6000円支払っていると元を取ろうと考えてしまい、その見解がブレブレになってしまいます。 


 それは、性風俗で指名料を支払ってでも可愛い女性を選ぶのか、基本料金でお店側に一任するのか判断するのに似ていると思います。


 性風俗では、可愛い女性を指名すると大概(たいがい)待たされます。(予約していない場合)


 そこで、黒服の方がすぐにご案内が出来る女性を選ぶよう促しますが、お客様の重い腰はなかなか上がりません。


 人気薄のホステスは、何とかお客さんを取ろうと思いロビーまで来て勧誘(かんゆう)しますが、そこで立ち上がるお客さんはごく少数なのです。


 出会いを求めるという目的は一緒でも、目の前に可愛い女性が現れると当初の戦略なんていとも簡単にすっ飛んでしまいます。


 せっかくお見合いパーティーに来たのだから“美形の女性しか有り得ない!”と思って、一心不乱に立ち向かうのか“ここは冷静になってカップルになる事だけを目指そう”と自分を(いまし)めて人気薄の女性と手堅くお話しをするのかで行動パターンが変わってきます。


 だったら、“毎回戦略を変えればいいじゃないか”と思うかもしれませんが、人間の趣味嗜好(しゅみしこう)はそうそう変えられるものではありません。


 結局は、自分の本心に逆らう事は出来ないのです。


 それでも、何人かで連携という形態をとれば打開策が見つかると思います。


連携するか否かは、お見合いパーティー当日にジャンケンで決めます。


勝った人が監督(かんとく)役になり、ホームラン(ねら)いかコツコツ(つな)ぐ野球をするのかを決めます。


 ホームラン狙い(上玉狙い)で連続三振するよりかは、何人かで1点を取りにいった方が戦略は立てやすいというものです。


しかし、ホームランは男のロマンでもある訳です。


 一方、コツコツ繋ぐ野球の場合、1番打者はバットを短く持ち出塁する(話しやすい女性を探してアプローチする)事だけに集中します。


1番打者が塁に出たら、2番打者は手堅く送りバント(素早く仲間のフォローに努める)をする事になるでしょう。


 得点圏にランナーが進んだら(1、2番打者でうまくいったら)、3番打者(監督兼主砲)は畳みかけて(合コンに誘うかカップルの交渉をする)いきます。


 その時、1、2番打者は3番打者に任せてその場から離れてはいけません。


 交渉が成立しても、近くに仲間がいないと興ざめしてしまうからです。


女性「あれ~?ご一緒に合コンする方々はどこに行ってしまったのでしょう?」


 何て、言われてしまったら、3番打者の立場がありませんからね。


 大体、ここまでが連携プレーの概要(がいよう)になります。


しかし、バントのサイン(カップリング重視の戦略)が出ていても、平気で無視するような人とは連携が出来ません。


結局は、監督と選手で()めるだけだからです。


お互いの信頼関係は、1度ヒビが入ってしまうと修復が難しいので、そうなる前に事前の対処が必要になります


 これで、連携の意義が何となく分かってもらえたでしょうか。


 フリータイムの1セット目が終了する迄には、司会進行以外の会場係の方々は総出で集計作業をしています。


 お見合い回転寿司の後に参加者が書いた相手の番号を、2人1組で(あわ)ただしくPCに打ち込んでいきます。


 打ち込みが終わると、何人かの会場係の方が実際の紙とPC画面を照らし合わせてダブルチェックしています。(その際、判読しにくい数字が書かれていると集計作業に時間が掛かります)


 そして、マッチングした方のみ相手の番号が書かれた紙(第一印象マッチングカード)を双方に手渡ししてくれます。(これが(もら)えると2セット目が格段に攻略しやすいです)


この紙は、上位人気にならないと受け取れないので、貰えたとしたら皆さんから羨望(せんぼう)の眼差しを受ける事になるでしょう。


 会場係の方が数人の男女に第一印象マッチングカードを渡していくと、その他の参加者から“お~”という声が上がります。


 お見合い回転寿司の後に配られる紙が貰えたら、必ずそのお相手のもとに出向くのがセオリーです。


 でも、よくよく考えたらその紙に書かれている相手が、第1希望の女性ではなかったとしましょう。(第2希望同士でもマッチングします)


 どうしても第1希望の女性がいいと思っても、そのセオリーを破るのは頂けません。


 しかし、次のフリータイムで第1希望の女性ともう一度話したいという気持ちは(くす)ぶっているかと思います。


 それでも、確実にカップルになる事を目指して、第一印象カードでマッチングした女性に方向転換しないと2セット目に臨む意味がありません。


 もし、仲間の1人が第一印象マッチングカードを貰った場合、そのお相手のもとに一丸となって辿り着かなければなりません。


 それは、カードを貰う貰わないに関係なく、フリータイムの2セット目がスタートするからです。


 せっかくカードを貰っても、その女性のもとに行けず、かつ、横に2人の男性が並んでしまったら実質無効になってしまうからです。


 だから、第一印象マッチングカードを生かすも殺すも自分次第なのです。


 結局、お見合いパーティーは選択の連続なのです。

 

 自分がうまくいかなくても、仲間の為に(かべ)にならなければならない事もあるのです。


 よって、自分の経験が活かせられるよう、あらゆるケースでシュミレーションしておかなければならないのです。


 それと、フリータイムで出遅れるとかなり不利になります。


 例えば、お目当ての女性と1回目に話したとするとします。


 次の回は誰かとチェンジしないとならないので、もう一度お目当ての女性と話すのは3回目以降になります。


 しかし、3回目か4回目だと話すタイミングが早過ぎるので、お目当ての女性から嫌われてしまいます。


「あの~、もっと他の方ともお話がしたいんでー」


 っていう感じで、拒絶(きょぜつ)されてしまう事があるからです。


 よって、次のアプローチは6回目を狙うのです。(間隔を空けつつ、さりげなく最後の回に滑り込むのです)


 2回目~4回目までは他の方とお話しをします。


 そして、5回目に話し掛けるのは、お目当ての女性のすぐ近くにいる方にします。(近くであれば誰でもいいと思います)


 そうすれば、6回目に再びお話しが出来るかも知れないからです。


 (ただ)し、そこには強者がいて、人気の女性がライバルに近付かないように小細工してくる男性がいるのです。


 さりげなく窓際に移動するように促したり、フリードリンクを取りに誘ったりして、ライバルから遠ざけるのです。(あちこち動かされている女性はそれだけ人気だという事です)


 なので、満を持して6回目に挑もうとしていると、お目当ての女性は(はる)か向こうにいる事もあるのです。


 いろいろな必勝メソッドがあるものの、思い通りになる事なんほとんどなく、如何(いか)に判断力が(きた)えられているのかが肝心です。


 攻略が出来ない参加者は、フリータイム後半戦は(あきら)めてしまい、会場の(すみ)にある軽食に手をつけ、フリードリンクを片手に傍観者(ぼうかんしゃ)になるのです。


 うちら3人は3連敗はしたものの、段々とお見合いパーティーに慣れてきました。


 ぼくは、女性のある表情で脈ナシかどうかだけは分かるようになりました。


 それは、フリータイムで話しかけた瞬間(しゅんかん)眉間(みけん)凝視(ぎょうし)するのです。


 一瞬いっしゅんなんですが、眉間がグッと寄り嫌そうな表情をしたら10分も必要ありません。


 すぐに退散モードに切り替えなくてはなりません。


「どうもありがとうございました~」


 と、言って切り抜けるのが定番です。


 それを言う前に、嫌悪感(けんおかん)を抱かれた女性から、


「ごめんなさ~い、あなたには興味無いの~」


「カッコいい俳優さんみたいな人としか話したくないの~」


 と、言われる事もあります。


「そうですか…、じゃ、頑張って下さいね」


 と、大人の対応をしたものの、先手を取られた感は(ぬぐ)えませんでした。


 そこで、(おもむろ)にパーティー会場を見回してみました。


「何だよ、そんな奴全然いないじゃんか!」


 そう、突っ込みを入れたくなる事もありました。


 そういう女性は、知らず知らずのうちに男性を傷つけてしまうので、しばらくすると誰も寄ってきません。


 理想が高いのは自由ですが、瞬殺(しゅんさつ)され続ける男性も気の毒だったと思います。


 毎週末にいつもの仲間とお見合いパーティー。


 その度に、参加料が5000円~6000円かかるのは痛かったけど、見知らぬ女性と必ず1分間トークは出来るのでそれだけでも楽しい…。


 …なんて、呑気(のんき)に言ってられないのは重々承知(しょうち)していました。


 あまり覚えていませんが、緊張(きんちょう)してろくに話せなかった1~4回目に比べればけっこう話せるようになったし、盛り上がりそうな話題も知ることが出来ました。


 だけど、カップルになる為には圧倒的に何かが足りませんでした。


 お見合いパーティーを3人で参加している以上、人数を生かして連携プレーが出来ないと何の意味もありませんでした。


 (むし)ろ、男3人で参加するってチキン野郎と言われても仕方がない事かもしれない…。


 何か、他の男姓参加者を出し抜けるいい方法はないものか…。


 人気になっている男性の後ろでトークを聞いていると、自慢話が半分、自虐的(じぎゃくてき)な話が半分といった感じでうまく笑いを取っていました。


 それと、話のパターンは2つ位でそんなには多くありませんでした。


 人に合わせて毎回会話を変えていると途中で詰まってしまう事があるので、その辺はとても参考になりました。


 それに、会話についてこない女性には無理にあれこれ話す必要はありません。 


 仲間がいればすぐにヘルプを求めます。


 自分のトークがダメでも、仲間とはうまくいく可能性があるからです。


 ぼくの場合だと、もうダメだと思ったらすぐに逃げ腰になってしまいます。

 

 いろいろと学ぶ事はあったものの、実際にそれが出来るかどうかは別の話でした。


 ぼくに圧倒的に有利な力が欲しい!


 そうすれば、早々にカップリングするのは間違いないだろう!


 その日は、そんな事を思いながら(まぶた)を閉じました。

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