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夢も現実も男3人彼女さがし  作者: きつねあるき
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第1部、第3章~恥ずかしくて赤面していた頃

 お見合いパーティーの1回目、2回目は、緊張(きんちょう)し過ぎて終始心臓がバクバクいっていました。


 それと、前述した通りお見合い回転寿司以外ではろくに会話が出来ずにいました。


 そこで、会話の訓練(くんれん)として積極的に職場内の女性に話し掛けていましたが、職場恋愛には全く興味がありませんでした。


 何故なら、職場恋愛で関係が破綻はたんしてしまうと、仕事場に居づらくなるからです。


 会話の訓練の甲斐(かい)があって、フリータイムでは何とか無難に話し掛けるところまでは()ぎ着けましたが、会話が途切れる度に女性からリードされていました。


 心拍数が上がり過ぎてしまった時に、変に上ずった声でこんな事を言ってしまった過去がありました。


 剛史「今ぼくは…、ひ、非常に緊張しています…」


 それを聞いて同情してくれる女性もいました。


 女性「実は私も(すご)く緊張していますよ」


 剛史「お、面白い事を言おうと思っていましたが…、す、すっ飛んじゃいました…」


 女性「それなら一旦落ち着きましょうよ、向こうにあるドリンクでも取りに行きましょうよ」


 剛史「ええ、そうですね」


(2人で紙コップに入ったジュースを飲む)


(その時に飲んだオレンジジュースが妙に美味しく感じる)


 剛史「ふ~、あとは深呼吸でもしますか~」


 女性「そうですね、ハァ~~~、フゥ~~~~」


 剛史「ハァ~~、フゥ~~~」


 女性「外の空気も吸いたいですね」


 剛史「そうですね、ここに居ると息苦しいですよね」


 女性「じゃあ、頑張って下さいね」


 “えっ、もう見限られたのか”とは思ったものの“またお会いした時には飲み誘いますんで”と言うのが精一杯でした。


 会話が続かない事により、ぼくは何度も何度もお相手に逃げられていました。


 そこで、フリータイム中に女性の様子をウォッチングする事にしました。


 すると、こんな事が分かったのです。  


 フリータイムで話せないのは男性だけではありませんでした。


 お見合いパーティーの会場には女性が少ないので、人数の関係で話下手の女性にも次々と男性が話し掛けにやって来ます。


 しかし、話下手の女性とは全くと言っていい程会話が盛り上がっていませんでした。


 しばらくすると、男性はしどろもどろになりながら、立ちどころにその場を去って行くのです。


 それを見て、先程同情してくれた女性に再度アタックする事に決めました。


 それは、彼女が話下手の部類だったからです。


 先程、ぼくと普通に話せていたのは、こっちがあまりにもダメだったからだと思います。


 案の定、その女性と話していた男性は大苦戦をしていました。


 ぼくは、“これはあと3分もつかもたないかだろう”と、推測(すいそく)しました。


 そこで、冷静に順番待ちをしたところ、5分も掛からずに自分の番が回ってきました。


 ウォッチングをした事によって、ぼくは再び同情してくれた女性とお話しする事が出来ました。


 この時ばかりは、“よし、チャンスが到来した!”と、思っていました。


 話下手同士ならば、他の人よりも心が通じ合うんじゃないかと推察(すいさつ)したからでした。


 ですが、これもうまくいきませんでした。


 剛史「こんにちは、今度は飲みのお誘いをしようと思って来ました」


 女性「思い切ってパーティーに出てみたんだけど、つまらないしカップルになれそうもないから帰るね」


 剛史(冷や汗をかきながら)「あっ、あ~、帰っちゃうんだ…」


 女性「ごめんなさいね、あなただけは誘ってくれたのにね」


 剛史「ははは…、つまらないなら仕方がないですね…」


 もし、ぼくが1人でパーティーに来ていたらこんな事を言ったのかも知れません。


「だったら、このビルの入り口付近で待ち合わせしてさ、頃合いを見計らって時間差で逃げようよ」


 そう言いたいのは山々でしたが、うちらは3人で来ているので2人に無断でそんな事が出来るはずもありませんでした。


 パーティー会場に来ている多くの方は、真面(まとも)に会話が出来ないと心が折れてしまうようです。


 それを、“つまらない”とか“自分には無理だ”とか決め付けて最後まで参加しない方も実際におられます。


 女性の場合は、男性から話し掛けてもらえる事が多いので、受け答えさえキチンとしていれば良さそうに思えます。


 自分からは動かない、動けないという女性の方は思ったよりも多くおられますので、そういうタイプの方は男性が多いお見合いパーティーは向いていると思います。


 しかし、女性から積極的にアタックしたいという方にとっては、お目当ての男性といつまでも話せない(来てくれる迄待つしかない)という面があるので、つまらないと感じる方もいると思います。


 それ以前に、パーティー会場に目ぼしい男性がいないと判断すると、頃合いを見計らって逃げ出す女性が後を絶ちませんでした。


 そうなってしまうのは、男女の料金差に起因(きいん)していると思われます。


 男性の参加料が5000円前後なのに対して、女性は高くても1000円位だったからです。


 場合によっては0~500円の時もあったので、いい男がいないと思ったらすぐに退室しようとするのは必然の結果でした。(男性の途中退室もあるにはありましたが…)


 本来は、お見合いパーティーの途中退場は禁止なのですが、“酸欠気味なので外の空気を吸ったらすぐに戻って来ます”と(うそ)をついてまんまと逃げ(おお)せるようです。


 実際に逃げるかどうかの判断は、パーティー会場のクロークルームに荷物を預けているかどうかなのでしょう。


 男性の方は、何の躊躇(ためら)いもなくクロークに荷物を預けるでしょう。(荷物が大きくて邪魔(じゃま)になるからだと思います)


 一方、肩掛けの小さいバックだけの女性はクロークに預けるのは少数です。


 なので、女性はお手元に荷物がある分、途中で逃げ出す事も可能なのです。


 初めてお見合いパーティーに参加した時は、緊張したのと同時に逃げ出したいという気持ちになったのは否めませんでした。


 その場に行くと分かりますが、どうしてもネガティブな思想になってしまうからです。


 それと、見知らぬ女性数十人とお見合い回転寿司をすること自体が慣れるまで()ずかしくて仕方がなかったのです。


 “人と話す時は目を見て話しなさい”とは言われますが、日常生活では同性と話すことの方が圧倒的に多いと思います。


 それが、お見合いパーティーの会場に入った途端、大勢の(めか)し込んだ女性が所狭しと並んでいるのです。


 場の雰囲気(ふんいき)に慣れた男性は、すぐに会場にいる女性をチェックしていきます。


 しかし、新参者にはそこまでの余裕はありません。


 会場にいる女性達を端から端迄()める様に見ていると、必ず誰かとバッチリと目が合うからなんです。


 そこで、“ドキッ”としてしまうのです。


 ここで、一際(ひときわ)目を引く美人がいると、あからさまに男性陣の視線はそっち側に流れます。


 一方、女性陣は(さわ)やか系でおしゃれな男性に目がいくようです。


 なので、パーティーが始まる前でも皆さんの視線の先を見れば(おの)ずと人気になる方が分かるのです。


 結局のところ、男女共にお互いを目敏(めざと)くチェックしているので、パーティーの開始まではなるべく横や下を向かないようにしていました。


 お見合い回転寿司では、まずは女性陣が円になって並びます。


 その後、男性陣が女性陣の円を囲う様にして円を作って並びます。


 1分間トークがスタートする前は、女性陣がそわそわしながら男性陣に背を向けたまま円になって並んでいます。


 会場係の方がお見合い回転寿司をスタートさせると、そこでやっと女性陣は男性側に向き直るのです。


 ですが、それからすぐにお話を始める訳ではありません。


 しばらくしてから会場係の方がこう言うのです。


「今あなたの目の前にいるのが一番最初に話す人になりま~す」


「しばらくじっと見つめ合っていて下さいね~」


(その間、およそ1分間です)


 それが、恥ずかしくて恥ずかしくて露骨(ろこつ)に赤面するわで、スタート前から心臓の鼓動(こどう)がバクバクしていました。


 誠司君と実君は身長が高い為、女性を見下ろす感じになるので、お相手との距離はそれほど近くは感じないでしょう。


 一方、ぼくは多くの女性と背丈があまり変わらないので、向かい合わせになると女性との距離がより近くに感じるのです。


 何せ、お互いの顔の位置が、ほとんど変わらないままで見つめ合っている訳ですから。


 時には、恥ずかしさに()えられなくなってしまい、つい、下を向いてしまう事もありました。


 パーティー会場では、お見合い回転寿司が始まるや否やアップテンポの曲が大音量で流れてきます。


 よって、1分間トークの時にボソボソと(しゃべ)っていると大音響に()き消されてしまうので、只管(ひたすら)大声で話す必要がありました。


 この時に、小声で話されるとほとんど聞き取れませんでした。


 お相手の方が何を言っているか分からないまま、首を(かし)げつつも次々と進めていく方もおられますが、何とか聞き取ろうとして躍起(やっき)になっている方も結構いるのです。


 ぼくは、小声にならないよう気を付けてはいましたが、どうも声が通らなかったようでした。


 すると、お相手の女性が耳を傾けながら、ぼくにぐぐっと近付いてこう言ってきたです。


 女性「え、えっ?」


 剛史「あの、鈴木と申します」


 女性「えっ、何?もう一回言って!」


 それが2回も続けば、女性との距離が一気に(せば)まってきます。


 どのくらい近いかというと、ちょっと顔を(かたむ)けただけで、お互いの口唇(くちびる)が触れてしまいそうになるのです。


 お相手の女性からしたら、そんなニアミスなんかよりもぼくの話を聞こうとしていたのでしょう。


 ぼくは、お相手の口唇に誤って触れないようにする為、若干()け反りました。


 そして、極力顔を動かさないように耐え忍んでいるのですが、ふわっとした髪の毛がぼくの側頭部に接触してしまった事がありました。


 その際、何とも言えない(かぐ)わしい香りがするのです。


 ぼくはそれだけでドキドキでした。


 女性の中には、意図的に男性の間近に来てブラウスの胸元をバサバサさせてくる方がいます。


 その様子が不自然なので、何でそんな事をしているんですかと(たず)ねた事があります。


 その女性は、“胸元と両脇にフェロモンが拡散する香水を吹き付けてきたからよ”と答えてくれました。


 更には、“体温が高いところにこの香水を付けると効果覿面(こうかてきめん)なのよ”と教えてくれました。


 その言葉に間違いはなく、ぼくはムンムンに(あふ)れたフェロモンを吸い込んで、クラクラになっていました。


 何人かの女性はリップグロスを()っていましたが、口唇の(つや)があんなにも可愛いとは思いませんでした。


 男性を(まど)わさんばかりに(あや)しいほどに(なま)めかしく、思わず魅了(みりょう)されていました。


「ああ、世の中にはこんなにも男性を悩ましい気持ちにさせる化粧品があるとは…」


 ぼくはそんな事を思っていました。 


 お見合い回転寿司で全員と話し終えたら、会場係の方から番号が2つ書ける小さな紙(第一印象カード)を渡されるので、プロフィールシートを見ながら投票していきます。


 ここで大事なのは、とりあえず投票をするという事です。(多くの男性は投票しますが、女性は滅多(めった)に投票しません)


 お気に入りの相手がいない、分からないからといって投票用紙を無駄にしてしまうと、フリータイムで不利になります。


 この時点で、もうやる気がありませんと言っているのと同じなんですから。


 お見合いパーティーで慣れないうちは、フリータイムが始まる時に二の足を()んでしまいます。


 パーティーに慣れてきたとしても、要領が悪いとフリータイムで出遅れてしまいます。


 気が付いた時には、全ての女性が誰かしらとお話し中…、という事も珍しくありません。


 話相手に(あぶ)れてしまうと、あてどもなく会場をウロウロとするしかありません。


 パーティーに出続けていると、フリータイムの時に最短ルートでお目当ての女性のもとに行けるようになります。

 

 ただ、それで満足してはいけません。


 お見合い回転寿司が終わると、皆さんの(のど)はカラカラに(かわ)いているので、水分を補給しないでフリータイムを過ごすのは相当しんどいからです。


 かといって、パーティー会場の(すみ)にあるドリンクコーナーに寄ってしまうと、誰とも話せないでフリータイムが終わってしまう事も多々あります。


 2人分のドリンクを持って女性のもとに行くと、その時にはもう誰とも話せないというジレンマがあります。


 その対策としては、男性が2人以上で分業をするのです。


 フリータイムが始まるや否や、真っ先にお目当て女性に行く人と、そこに素早くドリンクを届ける人と役割を分担すれば理想的な流れになります。


 ドリンクコーナーが混み合っている場合、まずは女性の人数分だけ持って行くのがベターです。


 しかし、実際にそうなる事はほとんどありませんでした。


 何故なら、僕ら3人共好みの女性が違うからです。


 フリータイムで、僕ら2人以上が連携(れんけい)プレーで(のぞ)んだならば、ほぼ確実に人気の女性にアプローチする事が出来るのは分かっていました。


 ですが、3人共好みの女性しか目に入っていないので、必ず誰かが連携プレーを拒絶してきます。


 結局、僕ら3人は単独行動でフリータイムに突入してしまうのです。


 無鉄砲に動き回ったとしても、1人の活動力なんて高が知れていました。


 それでも、()しの女性を曲げる事が出来ませんでした。


 連携プレーをしない事により、カップルになれないというジレンマがありましたが、これも男の(さが)といったところなんでしょう。


 しかし、ある日を境にぼくはフォロー役に徹する事にしました。


 誠司君か実君がフリータイムでお目当ての女性と話していたら、ぼくが自主的にドリンクを持っていく事にしました。


 そうする事で、カップルになる可能性が向上するし、皆さんにも喜ばれるからです。


 ドリンクを届け終えると、やっと自分の分を取りに行けるのですが、そこでウーロン茶をグビグビと飲んでいると、とても爽快(そうかい)な気分になります。


 充分に水分補給が出来ると、そこで終わった感が出してしまいそうになります。


 しかし、ここで(くつろ)ぐ訳にはいきません。


 次に話す女性の分までドリンクをもらいに行くと、早速フリータイムに加わるのでした。

 

 ドリンクを2杯持って行く理由は、1杯だけだと遠慮(えんりょ)する女性がいるからです。


「よかったらドリンクどうぞ」


「1つはぼくの分ですけどね」


 と、言うと、安心して受け取ってもらえます。


 個人的に思う事なのですが、皆さんの喉がカラカラな状態でフリータイムに突入するのは、配慮に欠けていると言えるでしょう。


 なので、お見合い回転寿司が終わり次第、会場係の方がドリンクを配って頂けたらこんな苦労はしなくてもいいのに…、と切に思っていました。

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