《続編》第3部~男女ペアで行うゲーム 第1章~風船割りゲーム
とはいえ、誰に声を掛けたらいいのか分からず、テンパっていました。(テンパる→焦りや不安で一杯一杯になる事)
ぼくは、二の足を踏んでぐずぐずしていたので、完全に出遅れてしまいました。
お見合いパーティーに参加したばかりの頃は、出遅れるのが定番だったのですが、回数を重ねていくうちにスタートダッシュが切れる様になっていきました。
ただ、男女混合のゲームとなると、何を基準に動いていいのか見当も付きませんでした。
そこで、形振り構わず、一緒にゲームをしてくれる女性を探し回りました。
しかしながら、数秒もしないうちに平常心を取り戻しました。
何故なら、男女比が19対21だったので、焦らなくてもペアになれる事が分かったからでした。
但し、人気の女性は一瞬でペアを組まれてしまうので、次のゲームからはもたもたしている訳にはいきませんでした。
人混みを掻き分け、会場の端の方に行くと、ペアになれずにいる3人の女性を発見しました。
その中の1人に近付くと、何だかとっても浮かない顔をしていました。
それを見て、ばつが悪い思いをしました。
そこで、ペアになる女性を探しているふりをして、必要以上にキョロキョロと見回していると、右端にいた女性と目が合いました。
ぼくは、透かさずその女性に声を掛けました。
剛史「あの、よかったらぼくと一緒にゲームをしてもらえませんか?」
と、話し掛けたところ、
「ええ、いいですよ」
と、快く応じてくれました。
ぼくが、初めてペアになった方は、6番の女性でした。
プロフィールシートを見ると、6番の女性は大越優さんと書かれていました。(以後、6番の女性を優さんと表記します)
優「最後の1組だったけど、ペアになれて良かった~」
剛史「ぼくも、ペアになれて嬉しいですよ」
優「実を言うと、さっきからずっと目線を送っていたのよ」
剛史「それで目が合ったって事ですか~」
優「そうなりますかね~」(2人で笑う)
会場係の方々は、参加者がペアになったのを見計らって、色とりどりの風船を配っていきました。
ぼくのペアには、白色の風船が配られました。
最後までペアになれなかった女性は、2番と10番の方でした。
プロフィールシートを見ると、2番の方が稲島留理子さんで、10番の方が松橋玲蘭さんでした。(以後、2番の女性を留理子さん、10番の女性を玲蘭さんと表記します)
ペアになれなかった2人の女性は、谷口さんの近く迄行って質問をしました。
留理子「あの、私達はどうやってゲームに参加したらいいんでしょうか?」
谷口「あっ、ごめん…、その説明はしてなかったか~」
玲蘭「最後のペアは、女同士で組んじゃってもいいでしょうか?」
谷口「そう、急かさないで下さいよ~、これからその事を手短に論議して発表しますから」
玲蘭「分かりました」
谷口さんは、会場の隅の方に行き、鍋嶋さんと話し合いを始めました。
男女ペアで行うゲームでは、どちらかの異性に偏りがあると、このような事態になってしまう事は必然でした。
気の弱い人や、臨機応変に対応する人だったら、迷うことなく同性同士でペアを組むのでしょう。
しかし、彼女らの申し出により、ゲーム毎に発生する余り者を蔑ろにする事は出来なくなりました。
ただ、初回のゲームではペアになれた女性も、次のゲームから確実に2人溢れるのは必至でした。
女性同士で組んだ場合、次のゲームでは優先的にペアにするしか打開策が無いように思えました。
仮にそうなったとしたら、次のペア探しは、初回のゲーム以上に熾烈な争いになる事は火を見るより明らかでした。
よって、会場内の空気が段々と淀んでいきました。
男性の皆さんは、これからどういう采配をするのか、固唾を呑んで見守っていました。
それに対して、何人かの女性はこの時間を利用して、“次のゲームは私とご一緒しましょう”と事前に交渉している方もいました。
とはいえ、そんな声が掛かるのは人気の男性だけでした。
ぼくは、この状況を鑑みて、1組だけ女性同士になるものだと思っていました。
そんな中、留理子さんが痺れを切らして鍋嶋さんのもとに向かいました。
それを見た玲蘭さんは、彼女に遅れまいと付いて行きました。
留理子さんは、鍋嶋さん前に立ってこう切り出しました。
留理子「先に言っておきますけど、スタッフの男性と組むくらいなら、女性同士での方がいいんじゃないですか?」
玲蘭「そうね、私もそれでも構わないわ」
留理子「やったところで、時間の無駄ですものね」
玲蘭「こういう場合、そちらのマニュアルではどうなっているんですか?」
そこで、鍋嶋さんは狼狽えながらこう答えました。
鍋嶋「え~、これまでのパーティーでは、ゲームで揉めた事がなかったもので、対策という対策は…」
留理子「してこなかったんですね」
鍋嶋「は、恥ずかしながら…」
玲蘭「でも、何とかしないとならないでしょう?鍋嶋さんの一存で決めて下さらない?」
鍋嶋「わ、私のですか?」
留理子「そうですよ!こんな事で時間をかけるのもなんですから、早く皆にアナウンスして頂けませんか?」
鍋嶋「承知しました」(鍋嶋さんがセンターマイクの前に立つ)
鍋嶋「え~、誠に僭越ではございますが、1組だけは女性同士でお願いしたいです」
留理子「そう、分かったわ」
玲蘭「何だ、彼女の言う通りじゃない…」
鍋嶋「恐れ入ります…」
鍋嶋さんの対応で落ち着きそうになった時、谷口さんがセンターマイクを奪い取りました。
谷口「ちょ、ちょっと待って下さいよ~、今のは無しでお願いします」
谷口「鍋嶋さん!マイクの音声が入らない所まで来てくれませんか?」
鍋嶋「ええ、分かりました」
2人は、センターマイクから4メートル位離れた所で、ゴニョゴニョと話していました。
どうやら、鍋嶋さんと谷口さんの思惑は、かなり違っている様でした。
鍋嶋さんは、脂汗をかきながら谷口さんの話を聞いていました。
段々と、鍋嶋さんの頷きが多くなると、谷口さんはにこっと笑いました。
そして、谷口さんはスッキリとした表情で再びマイクの前に来ました。
谷口「え~、皆さん、聞いて下さい」
谷口「本日は、女性が2名多いので、私の独断と偏見でどこぞのペアに1人ずつ押し込みま~す」
谷口「なので、該当する男性は1対2でお相手して下さいね~」(会場内がざわつく)
谷口「先に言っときますけど、私の仕込みに拒否権はないですからね~」(会場内の誰かが“仕込みって…”と呟く)
谷口「だけど、私も鬼じゃないです」
谷口「私基準でカッコいい男性の所に入れてあげますよ」
谷口「晴れて三つ巴になった男性の皆さ~ん!片方の女性にばかり精力を注ぎ込まないで下さいね~」
谷口「終わったら、間髪入れずもう1人の女性とやってくれないと嫌われちゃいますからね~」
「ザワザワザワ…」(会場内がざわつく音)
谷口「両手に花のゲームなんて羨ましいですね~」
谷口「凄いですね、素晴らしいですね~」
そこまで話すと、谷口さんは比較的近くにいた2組のペアに、留理子さんと玲蘭さんを1人ずつ割り込ませました。
留理子さんは、19番の男性と9番の女性の組に入り、玲蘭さんは14番の男性と1番の女性(彩季さん)の組に入れられました。
プロフィールシートを見ると、19番の男性は手塚忠晴さん、9番の女性は宮野千恵さん、14番の男性は渡瀬晃児さんと書かれていました。(以後、19番の男性を手塚さん、9番の女性を千恵さん、14番の男性を渡瀬さんと表記します)
谷口「はい、それではペアになった人と握手~」
谷口「それと、3人で組んでいるところは、トライアングルで握手して下さいね~」
谷口「皆さ~ん、終わりましたか~?」
谷口「それでは男性の方と女性の方は向き合って胸と胸の間に風船を挟んで下さーい」
谷口「お腹とお腹でもいいですよー」
谷口「ここまでで何か質問ありますか~?」
玲蘭「はーい!男女3人の所はどっちが先にやった方がいいんですか~?」
谷口「特に決まりはありませんよ」
彩季「でも、普通に考えたら、先に組んでいた人が優先ですよね?」
玲蘭「あ?決まりはないって言ってたよね」
彩季「私の後だと不満って事かしら?」
玲蘭「まあね、2番手だと貴方の匂いが彼に染み付いちゃうから、私からお願い出来ないかしら」
彩季「ふ~ん、後から来てそういう事を言うんだ」
留理子「ちょっと~、いちいち揉めないでよ~、こっちは3人でもうまくやってるんだから」
千恵「そうそう、私達は平和だよね」
留理子「順番なんてどうでもいいわよね」
手塚「そうですよ、ゲームなんだし仲良くやりましょうよ」
千恵「でも、手抜きはしませんけどね」
手塚「何か、プレッシャーがかかるな~」
留理子「こっちはうまい事やってんだから、そっちも何か考えなさいよ」
玲蘭「へ~、だったらどうすりゃいいのさ」
留理子「そんなのジャンケンにすればいいじゃん!」
玲蘭「ジャンケンか…」
渡瀬「それが一番いいんじゃないですか?」
彩季「そうだわ!私達は渡瀬さんの正面と背面にくっ付いて、おしくらまんじゅうするっていうのはどうでしょうか?」
玲蘭「いいね~!それだったら暇しなくて済むんじゃない、ねえ、渡瀬さん!」
渡瀬「ゲームの一体感は高まりそうだけどね」
彩季「じゃあ、それで決まりね!」
留理子「いやさ~、あんたらで勝手に趣旨を変えないでよ!」
彩季「3人なんだから、そっちも同じ事をやればいいじゃん!」
留理子「そもそも、あんたらが揉めたのが原因なんでしょうが~!」
千恵「なんでもいいから、早く始めましょうよ」
会場内の空気が悪くなりかけたところで、谷口さんがセンターマイクの所に戻って来ました。
谷口「は~い、皆さん!ここで追加のルールです!」
谷口「1人押し込まれた所は、3人で円陣を組んでゲームをして頂きま~す」
谷口「因みに3人だとかなり有利で~す!」
谷口「1つの風船を3人で割るんですからね~」(会場内がざわつく)
谷口「えっ、何?“そんなの汚ね~”ですって?」
谷口「それじゃあ、ハンデを付けてあげましょう!」
谷口「3人でゲームをするところは、風船を2個割って下さいね~」
谷口「それと、割れてから30秒間は3人で抱き合ったままホールドですよ~」
谷口「30秒のカウントダウンは、皆さんに聞こえる様に大きい声で叫ぶんですよ~」
谷口「分かりましたか~?」
「はーい」(一同)
谷口「最後に、1つだけ注意点があります!」
谷口「勢い余って、頭だけは打ち合わないで下さいね~」
谷口「それでは始めま~す、ゲーム~スタート~!」
その時、ぼくはこんな事を思っていました。
「どうせ、風船なんてすぐに割れるんだろう」
「それに、ゲームとはいえ正面から抱き合ったりしていいのかな?」
「そうだ!両手を下したままでも、風船さえ割れればそれでいいじゃないか!」
ぼくは、優さんにじりじりと迫って、風船がひしゃげたタイミングで確実に割ろうと考えていました。
胸と胸に挟んだ風船がそれなりに変形してきたので、“そろそろ割れるか?”と思ったその時です。
お互いに油断をしていたのか、風船は胸と胸を擦り抜け真横に飛んで行きました…。
すると、それを見た谷口さんが、
谷口「皆さーん、風船を割るには強く抱きしめ合わないと割れませんよー」
谷口「しっかりと抱き合ったら、男性が女性を強く引き寄せて下さいね~」
谷口「ですが、興奮してお相手の背中に爪を立てないで下さいね~」
と、得意気に話しました。
「マジか!でも、真面にやる奴なんているのか?」
と、思っていると、彼方此方から、
「パン、パン!パンパンパン!」
と、立て続けに風船が割れる音がしました。
ぼくは、慌てて風船を拾いに行き、優さんの胸に風船を押し付けました。
そして、胸と胸の間に風船を挟むと、ゲームを成功させる事だけに集中しました。
剛史「やっぱり、ちゃんとやらないとダメみたいですね」
優「そうね…、風船を割ったペアが羨ましいわよね」
ここで、ぼくは勇気を出して次の言葉を伝えました。
剛史「あの、ぼくの背中に腕を回してくれませんか?」
すると、優さんは黙って頷いてくれたのです。
優「これで目一杯だけど、こんな感じでいい?」
剛史「いいと思うよ、じゃあ、今度はぼくが腕を回すね」
優「ええ、遠慮はいらないわ」
剛史「なるべく服は伸ばさないようにするからね」
優「いいから、早く割りましょうよ」
それならばと、両腕に力を入れて女性の背中をグッと引き寄せましたが、意外と風船は割れないのです…。
そこで、お互いの腕の力を入れた時に、風船がどっち側にひしゃげるか試してみました。
すると、ぼくから見て右側に風船が逃げようとしている事が分かりました。
剛史「分かった!風船を割るには、最後の最後だけ右向きに体勢を変えないといけないんですよ」
優「よく分からないけど、その辺は貴方に任せるわ」
その後に、2人でガッチリと抱き合いました。
剛史「もう、目一杯いくよ!」
優「ええ、この1回で決めましょう!」
剛史「じゃあ、いくからね、そーれ!」
優さんを思いっきり抱き寄せた後、ぼくが透かさず右側に回り込むと、
「パン!」
と、音を立て見事に風船が割れました。
しかし、勢い余って、お互いの胸を強めに打ち付けてしまいました…。
ぼくの胸は、ズシンという衝撃を受けました。
その後、数秒間だけ“うっ…”という感じになりました。
周りを見ると、ゲームを成功させた者同士では、全く同じ事が起きていました。
しかし、こんな事はゲームじゃなければ出来ない事でした。
男女ペアの8割位は、力ずくで抱き合って風船を割りましたが、遠慮して強く抱きしめられなかったペアは風船を終始横に飛ばしていました。
剛史「あの、勢いよくぶつかっちゃったけど大丈夫ですか?」
ぼくが、優さんを気遣うと、
優「ええ、平気ですよ、ゲームですものね」
と、晴れやかな笑顔で答えてくれました。
風船割りゲームに成功したペアには、会場係の方がキャンディーを渡してくれました。
景品に関しては、悪魔でもおまけという扱いで、男女ペアのゲームで少しでもやる気になるように用意された物のようでした。
ゲームが終わり、やれやれと思っていると、谷口さんが、
谷口「はーい、皆さん!相手のお胸の感触はいかがだったでしょうか~」
谷口「こんな事でもない限り、初対面の男女が力一杯ハグする事なんてありませんからね~」
谷口「風船を割った時は気持ち良かったですか~」
谷口「ついでに、相手のお耳にフッと息を吹きかけましたか~」(会場内がざわつく)
谷口「あれ~、そこは笑うところですよ~」
と、小気味よく言ってきました。
パーティーが夜の回だからか、このセリフが言いたかったからなのか分かりませんが、司会が若い女性に交代したのはそういう事だったのか…。
実際に、このパーティーに初参加のぼくは、数々の際どい言葉を聞いて完全に引いていました…。
谷口「次のゲームの前に割れた風船を片付けますので少々お待ちください。」
谷口「次のゲームは割り箸通しゲームでーす」
実「えっ、何それ?」
それを聞いて、実君がボソッと呟きました。
剛史「あれ?さっき、実君は向こうの方に行ってなかったっけ?」
実「次のペアを探していたら、いつの間にか剛史の近くに来ていたんだよ」
剛史「そうなんだ、ところで風船は割れた?」
実「あんなもん速攻で割れたよ」
剛史「ぼくの方はけっこう時間を食ったよ」
実「ああ、あれは反動をつけてやればいいんだよ」
剛史「ぼくの方は、恐る恐るやってたから横に飛んじゃったけどね」
実「ただ、風船を挟んで抱き合っているとはいえ、なかなかゲームが始まらなかったのは気まずかったよ」
剛史「そうだね、お互いの息遣いまで感じていたよね」
あれこれと喋っていると、谷口さんがアナウンスをしました。
谷口「皆さ~ん、準備が整ったみたいですよ~」
谷口「それでは次のゲームに行きますからねー」
谷口「でも、その前にペアの交代をして下さーい」
谷口「それでは、お願いしま~す」
パーティーの参加者は、ざわつきながらも近くの人とペアを組みました。
最初の1回で要領をつかんだので、2回目のペアになるのは容易でした。
何故なら、フリータイムの時とは違い、ペアを拒否する女性が極端に少なかったからです。
今回は男女比もあってか、女性から声を掛けてくる事も珍しくありませんでした。
ぼくは、3メートル位先にいるフリーの女性が目に入ったので、つかつかと歩み寄りました。
それを、ぼくの左横から遮ってきた女性がしました。
「はあ、はあ、はあ…、あ、あの、次は私とペアになって下さらない?」
剛史(面食らいながらも)「ええ、ぼくで良ければ」
「ありがとね」
剛史「いえいえ」
次に、ぼくのペアになった女性は4番の方でした。
プロフィールシートを見ると、4番の女性は田代司さんと書かれていました。(以後、4番の女性は司さんと表記します)
剛史「よろしくお願いします」
司「こちらこそよろしくね」
剛史「因みに、割り箸通しゲームって何だか分かりますか?」
司「いえ、私もこのパーティーには初めて来たものですから」
剛史「何かよく分からないですね~」
果たして、次のゲームはどんな内容なのでしょうか。
気になるところではありましたが、とりあえず静観する事にしました。




