第2部、第3章~誠司君の怒りの矛先
誠司「おい!あの18番の女は展示会の業者だぞ!」
実「マジかよ…、早速お尋ね者の登場かよ!」
誠司「また、性懲りもなくパーティーに来やがって!このクソアマがぁー!」
誠司君は、吐き捨てるように言いました。
実「おいおい、今は抑えておけよ」
誠司「ああ、分かったよ…」
実「確か、奴の名前は斉木眞椰だったよな」(以後、18番の女性は眞椰さんと表記します)
誠司「そう、正解だよ!」
剛史「因みに、社会人クラブの業者はいないんだよね?」
誠司「俺と関わった奴らはいないみたいだな、でも、用心するに越したことはないよ」
実「ヤバそうな奴がいたら、すぐにこっちに教えろよな」
誠司「OK、それは任せとけよ!」
剛史「それで、どうすんのさ!今更帰らないよね…」
実「当たり前だろ!俺らはあの女だけをマークしとけばいい話だろ!」
剛史「他にも仲間がいたらヤバいかもよ…」
誠司「いいや、恐らく展示会の業者はあの女1人だけだよ」
実「じゃあ、此処で会ったが百年目ってとこか」
誠司「実際には、2ヶ月前の事なんだけどな」
剛史「成敗したい気持ちは分かるけど、この人混みじゃちょっとね…」
誠司「あの女~、絶対に天誅を下してやる!」
剛史「いやいや、分かっているなら放っておけばいいんじゃないの?」
誠司「いいや!それじゃ俺の気が収まらないよ」
実「まあ、気持ちは分かるけどさぁ…」
誠司「それに、このままだと、ここにいる男共の誰かが犠牲になるからな」
実「まあ、それはそうだけどさぁ」
剛史「でも、さすがに、今ここで大騒ぎするのはマズいよね」
誠司「俺だってそれくらいは分かるよ!」
剛史「ただ、事情が分からない参加者にとっては、単なる営業妨害だと思われるからね」
誠司「その辺は大丈夫だよ、ちゃんと女性側の自己紹介が全部終わってからにするからさ」
実「俺らのフォローが必要だったら、然り気無くケツのポケットに手を入れろよ」
誠司「分かったよ、けど、お前らに迷惑はかけないからさ」
3人で、あれこれと話し込んでしまったので、19番~21番の女性の自己紹介はほとんど聞いていませんでした。
そこで、実君が最後の自己紹介だけはちゃんと聞こうと言ってきました。
実「おい、こんな所で駄弁っていると目を付けられるぞ!最後の人だけでもちゃんと聞こうぜ!」(駄弁る→無駄話をする事)
僕らも、その意見に同意しました。
誠司「そうだな、話に集中しないとな」
剛史「これからはお喋り厳禁でね」
司会の男性は、疲れ気味な感もありましたが、最後の自己紹介とあって気力を振り絞っていました。
鍋嶋「皆様、これで最後の自己紹介になります」
鍋嶋「それでは、22番の女性の方よろしくお願いします」
「はい、22番の仲道里歌子と申します」(以後、22番の女性は里歌子さんと表記します)
里歌子「年齢は24歳で、職業はケーキ屋さんでアルバイトをしています」
里歌子「えっと、趣味は音楽鑑賞とイルミネーションの写真を撮る事です」
里歌子「どうぞよろしくお願いします」
鍋嶋「ありがとうございます」
鍋嶋「え~、それでは私から最後の質問をしたいと思います」
鍋嶋「仲道さんはチャーミングでモテそうに見えますが、ケーキ屋さんで出会いはないんですか?」(チャーミング→可愛らしい)
里歌子「はい、周りは女性ばかりなもので…」
鍋嶋「そうなんですか?私が前に行ったケーキ屋さんには、男性の従業員もいましたよ」
里歌子「いるにはいるんですけど~、うちの店の男性は全員既婚なんですよ」
鍋嶋「そうですか、それは失礼しました」
里歌子「いえいえ」
鍋嶋「私もあと15年若かったら、貴女のような方は放っておかないんですけどね」
里歌子「そうですか~、お世辞でも嬉しいです」
鍋嶋「今日は頑張って下さいね」
里歌子「ありがとうございます」
鍋嶋「どうぞ、席にお戻り下さいませ」
里歌子「はい、分かりました」
里歌子さんは、自己紹介が終わるとそそくさと席に戻りました。
そして、手鏡を見ながらご機嫌でメイク直しをしていました。
鍋嶋「え~、皆様にご連絡致します」
鍋嶋「この後に、再び配置換えがございますので、ご理解ご協力の程よろしくお願い致します」
鍋嶋「それでは、後程お会いしましょう」
それからは、会場係の方がお立ち台に上がり、参加者に向けてこのように案内しました。
「すいませーん、これから配置替えをしますので、男性陣は女性陣の右横に移動して貰えませんかー」
「男性側にあった椅子は撤去しますので、よろしくお願いしまーす」
男性陣は、女性陣の右横にぞろぞろと移動しました。
すると、会場係の方々は慌ただしく男性が座っていた椅子を撤去していきました。
他の係員は、マイクに接続していたコードを外し、クルクルっと纏めて地面に置きました。
そして、マイクをクリップから外し、コードと一緒に用具箱に収納しました。
その後、マイクスタンドを手際よく縮めました。
会場係の方々が、用具箱とお立ち台を運び込んでいる最中に、誠司君が眞椰さんにそーっと近付きました。
そして、誠司君は眞椰さんの肩をポンポンしました。
眞椰さんは、一瞬驚いたような顔をしました。
しかし、状況を察したのか、不機嫌そうな顔はしたものの、誠司君に1歩だけ近寄りました。
眞椰「何、私に用?」
誠司「シッ!デカい声は出すなよ」
眞椰「分かってるわよ…」
誠司「おいおい、あんたまたパーティーに来て勧誘かよ!悪さをするのも大概にしとけよな!」
眞椰「えっ、何の事?人違いじゃない?」
誠司「はぁ?惚けんなよ!俺は2週間前あんたに展示会に連れて行かれた者だよ!」
眞椰「ああ、そうね…、でも、あの時はうまく逃げられたからいいじゃないの」
誠司「バーカ、それで納得するかよ!また、似非カップルになって、展示会に引き込むカモを漁りに来たのかよ!」
そこで、眞椰さんは周りを見回しながらこう言いました。
眞椰「いいえ、今日は純粋にパートナーを見つけようと思ってパーティーに来たのよ」
眞椰さんは、神妙な顔をしてそう返答しました。
しかし、その言葉を聞くなり、誠司君はヒートアップしました。
誠司「ふざけんなよ!そんなの誰が信じるかよ!」
眞椰「ちょ、ちょっと~、声が大きいわよ…」
誠司「そんなの知るかよ!絶対ここの運営に通報してやるからな!」
眞椰「分かっているの?設営中とはいえ、今はパーティーの途中なのよ!」
誠司「だからこそだよ!ここで、お前の名前と業者名とこれからやろうとしている悪さの一切合切をぶちまけて、他のパーティーでも出禁にしてやるからな!覚えとけよ!」(出禁→出入り禁止)
誠司君が捲し立てると、眞椰さんは苦虫を噛み潰したような顔をして仰け反りました。
眞椰「今日は違うの!あの時の事は本当に悪かったから」
誠司「本当にそう思っているんなら、ここにいる皆さんに、自分が何者で今迄のパーティーで何をしてきたのかを洗いざらい打ち明けるんだな」
眞椰「そ、それは…」
誠司「その上で、“今日私は展示会の勧誘は絶対にしません”と誓えるんだな?」
眞椰「うっ、くっ…」
誠司君の猛攻に、眞椰さんはぐうの音も出ませんでした。
そして、さすがに分が悪いと思ったのか、慌てて近くにいた男性に声を掛けました。
話し掛けられたのは、番号札3番の男性でした。
眞椰さんは、3番の男性と話しつつ、徐々に立ち位置を変えて誠司君に背を向けました。
プロフィールシートを見ると、3番の男性は佐々木和隆と書かれていました。(以後、3番の男性は佐々木さんと表記します)
眞椰「ねえ、フリータイム開始まで時間が掛かりそうだから私と話さない?」
佐々木「えっ?僕でいいんですか?」
眞椰「ええ、貴方がいいの!」
佐々木「いやあ、参ったな~」
眞椰「貴方、意外とモテるでしょう?」
佐々木「いや、それが全然…」
眞椰(甘えた感じで)「本当の本当に~、彼女いないんですか~?」
佐々木「いたらいいんですけどね」
眞椰「で~も~、つい最近まで彼女がいたんじゃないですか~?」
佐々木「いえいえ、5年以上は誰とも付き合っていませんよ」
眞椰「へ~、そうなんだ~」
佐々木「今までは、仕事が恋人みたいなものだったので、このままではヤバいかなって思ってたんですよ」
眞椰「ふ~ん、じゃあ、このままお話を続けてもい~い?」
佐々木「はい、喜んで!」
眞椰「その代わり~、何かあったら貴方が私を守ってね!」
佐々木「ええ、お安いご用ですよ!」(眞椰さんが誠司君の方をチラッと見る)
誠司君は、仇同氏による是見よがしの態度に、唇を噛んで耐えていました。(仇同氏→個人的な敵)
眞椰「貴方、話が早くて助かるわ~」
佐々木「変な野郎に絡まれたらブッ飛ばしてやりますよ!」(佐々木さんが拳を握る)
眞椰「さっすが~、私が目を付けた男の人だけはあるわね~」
佐々木「エヘヘヘヘ~」
誠司君は、してやられたという顔をしていましたが、2人の会話の邪魔をする迄には至りませんでした。
何故なら、ここで下手げに2人の会話を邪魔してしまうと、3番の男性から何をやられるか分かったもんじゃないので、誠司は振り上げた拳を下ろさざるを得ませんでした。
眞椰さんは、咄嗟の機転によって誠司君の追及を逃れました。
佐々木さんと眞椰さんがイチャイチャしていると、他の参加者も勝手にイチャつき始めました。
しかし、会場係の方々が配置換えをしている間は、司会者が控え室に籠っていたので、騒がしくしていても注意をしてくる事はありませんでした。
剛史「誠司君、今から司会の方に業者が紛れている事を言いに行った方がいいんじゃない?」
誠司「いいや、控え室は関係者意外立ち入り禁止からダメだよ」
剛史「じゃあ、佐々木さんの事は見捨てるの?」
実「仕方がないだろ!元々赤の他人だろ!」
剛史「そうなんだけどさぁ…」
誠司「その辺はうまくやるよ!頃合いを見計らって佐々木君には俺から注意しておくからさ」
実「まあ、そうする義理も無いけどな」
誠司「いや、既に分かっている悪事は、潰しておかないと気持ち悪いだろ!」
剛史「ぼくもそれには賛成だよ」
誠司「ここは、司会者に直接話せるチャンス迄待つしかないよ!」
剛史「そうだね」
それから、5分位すると会場の配置が整いました。
設営の責任者と思われる方は、配置図を確認してからワイヤレスマイクを握りました。
「皆様、大変お待たせしました~」
「次の配置が出来上がりました~」
「これからは、司会の方とバトンタッチします」
「それでは、私どもは引けますので」
アナウンスが終わると、会場係の方は司会者を呼びに行きました。
程なくして、司会者がセンターマイクの前に来ました。
鍋嶋「あ、あっ、テスト、テスト」
鍋嶋「マイクの調子は大丈夫そうですね」
鍋嶋「はい、皆様大変お待たせしました」
鍋嶋「え~、今だけは男女一緒のままお待ち頂いても結構ですが、私の話だけはきちんとお聞きになって頂きたいと存じます」
鍋嶋「それでは、これから行うゲームの時間配分を説明致します」
その後、男女ペアで行うゲームが、短時間にも拘わらず打ち解け合うのに有効な手段である事を力説しました。
それと、男女の仲を良くする為には、お互いの肌に触れあう事が決め手だという事も言っていました。
その手始めとして、ゲームの前に両手でガッシリと握手をする事をお勧めしますと付け加えていました。
参加者の皆さんが、その説明を熱心に聞いていると、眞椰さん達が少しずつポジションを変えているのが見えました。
ぼくは、彼女の動きが気になりました。
しかし、ゲームの説明を聞かない訳にはいかないので、それ以降、眞椰さん達を目で追う事はしませんでした。
この時、それが裏目に出る事になるなんて、思いも寄りませんでした…。
実「あれ?さっきの女はどこにいったんだ?」
誠司「そこら辺にいるんだろ!」
実「それが、さっきから姿が見えないんだよ」
誠司「2、3分前には見かけたけどな…」(3人で会場を探し回る)
剛史「誠司君!もう、あの女いないみたいだよ」
誠司「マジかよ…、奴は忍者かよ」
剛史「ぼくは、逃げる気配を全く感じなかったよ…」
実「逃げたって事は、100%カモを漁りに来ていたって事だよな…」
剛史「そういえば、佐々木さんもいないんじゃない?」
誠司「クソっ!泳がせたばっかりに、うまく逃げられたか…」
実「どうやら、男をダシにして抜け出したみたいだな…」
誠司「これじゃあ、また被害者が出るぞ!」
うちら3人は、眞椰さん達の監視こそが重要な役割だったにも拘わらず、ゲームの説明に気を取られていた時に、隙を突いて逃げられてしまいました…。
剛史「仕方がないよ、とりあえず会場から業者を追い出せたんだから」
実「そうだよ、今はパーティーに集中しようぜ」
誠司「分かったよ、この後は男女ペアになってゲームをするから、少しは気分転換になるな」
誠司君は何度もゲームをしているのだろうけど、ぼくと実君は何をするのか分からずに固唾を呑んで見守っていました。
ここで、司会者が若い女性と交代になりました。
「はーい、皆さーん!これからゲームの司会進行を務めさせて頂きます、谷口愛羽と申しまーすっ!」(以後、女性司会者を谷口さんと表記します)
谷口「私の事は、“めぐちゃん”って呼んで下さいね~」
谷口「それではいきますよ~」
谷口「せ~の!」
「め~ぐちゃ~ん」(参加者一同)
谷口「そうそう、いいですね~、そのノリですよ~!」
谷口「当パーティーでは、男女ペアで行うゲームが、それはそれは評判なんですよ~」
谷口「ゲームは3回戦までありま~す!」
谷口「気になる人とは、ここで一気にお近付きになっちゃって下さ~い」
谷口「それでは、これから風船割りゲームをしまーす」
谷口「まずは、男女ペアになって、お互いの胸と胸の間に風船を挟んで下さーい」
谷口「あとは、密着してパンパンパンパンするだけですよ~」
谷口「あっ、失礼…、パンは1回だけでしたね~」(会場内が少しざわつく)
谷口「見事に風船を割ったペアには、キャンディーを差し上げまーす」
谷口「それではどうぞ~」
司会進行が若い女性になったので、ガラリと雰囲気が変わりました。
ここのパーティーでは、フリータイムをする前に、手始めにゲームで仲良くする方針でした。
ただ、ゲームでご一緒した方と、フリータイムでもう一度話せるかどうかは、ご自分の運次第といったところでしょう。
ぼくと実君は、誰とペアになろうか?と思い、ウロウロしていると誠司君が、
誠司「早く近くにいる女性に話し掛けろよ」
と、言ってきました。
剛史「断られたら立ちんぼになるの?」
誠司「そん時はそん時だろ!もう、俺は向こう側に行くからな!」(サッとお目当ての女性の元に行ってしまう)
実「そんなに深く考えるなよ!たかがゲームだろ!」
剛史「そうだね、早く誰かに声を掛けなくちゃね」
実「おい、あの辺を見ろよ!まだペアになっていない女が何人もいるぞ!」
剛史「本当だ!ぼくでも何とかなるもね」
実「じゃあ、俺は右側にいる人に声を掛けるから、お前もさっさと行けよ」(実君も早速ペアになる)
ぼくは、このまま立ちんぼになる事に抵抗があったので、腹を括る事にしました。
そんなこんなで、とりあえず大人しそうな女性に声を掛ける事にしました。




