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夢も現実も男3人彼女さがし  作者: きつねあるき
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第1部、第2章~彼女づくり始めました

 しかし、現実は甘くなかったのです。


 何故(なぜ)なら、3人は基本的に会話のスキルが低かったからです。


 3人は、あれこれと期待してお見合いパーティーに行ったものの、初回は(ひど)いものでした。


 何せ、ぼくは緊張(きんちょう)し過ぎてお見合い回転寿司以外では話せなかったからです。


 この時は、おどおどしたまま時間だけが無駄に過ぎ去っていきました。


実君の対応も、ぼくとそれほど変わりはありませんでした。


 その中でも、一番マシだったのは誠司君でした。


 彼は、お見合いパーティーに出る前に、お姉ちゃんから(きび)しく指導されていたからでした。


 しかし、彼は好みがうるさいので、フリーになった女性が目の前に居ても、タイプじゃないからと言って平気でスルーしていました。


 それには、実君が憤慨(ふんがい)しました。


実「俺らには出会いの切っ掛けすらないんだから、()り好みなんかするんじゃねえよ!」


誠司「分かったよ…、次からは手当たり次第に話すからさ」 


剛史「頼むよ~、今のところ誠司君しか真面(まとも)に話せてないんだからさ」


実「俺と剛史は、もっともっとレベルを上げないと居る意味がないだろ!」


剛史「確かにそうだよね…」


 お見合いパーティーは、参加しているだけじゃ意味がありませんでした。


 どうにかこうにかしてカップルにならないと、ストレスだけが()まっていきました。


 なので、“さすがにこのままではいけない”と痛切に感じました。


 しかし、苦手としているコミュニケーション能力がいきなり向上する訳ではありません。


 それで、ぼくは次回から誠司君のフォロー役に回ろうと思いました。


 誠司君がいい感じで話していたら、そこに便乗しようと考えました。


 ですが、その作戦もうまくいきませんでした。 


 誠司君は、単独で動いている時は順調な(すべ)り出しをするのですが、話している相手が女性2人組だったとしても、ぼくがフォローに入る事を嫌いました。


誠司「何だよ!こっちはこっちで頑張ってるんだから向こうに行けよ!」


剛史「そう言うなよ、これで2対2なんだからいいじゃんかよ」


女性2人組「あっ、()めてるんだったら私達あっちに行くね」(サッとその場からいなくなる)


誠司「クソ!逃げられたじゃねえかよ」


剛史「ゴメン…」


誠司「お前のせいだからな!」


(向こうから実君が近付いて来る)


実「お前ら止めろよ!ここでの私情は厳禁(げんきん)だからな!」


剛史「ゴメン、ぼくが割り込んじゃったから…」


実「それは問題ないよ!どんな状況でも利用出来るものは全て武器に変えるんだよ!」

 

誠司「分かったよ…」


 この場は、実君のお(かげ)で収まりました。


 何度かお見合いパーティー行っているうちに、進行の流れは分かるようになりました。


 しかし、気付いた時には5連敗を(きっ)していました…。


何故かというと、フリータイムで女性と2人きりになったとしても、肝心(かんじん)の会話が続かなかったからです。


 ぼくは、会話が途切れると居ても立っても居られなくなり、自ら去って行く事もしばしばありました。


 すると、女性の空き待ちをしていた男性が、スッとその場を(うば)っていく訳です。


 結局のところ、3人はお互いに人任せの面があったので“誰かがうまくいってないかな~”とか、“うまくいった奴がいるなら合コンを開催(かいさい)してくれないかな~”とか思いながらフリータイムを過ごしていました。


 女性からのアプローチを期待した事もありましたが、そんな事は全くありませんでした。


 かと言って、我武者羅(がむしゃら)に話し掛けたとしても“私のどこが気に入ったのですか?”なんて質問が()ぐ様返ってきます。


 ただ単に、“近くに居たから”というのが正答なんですが、バカ正直にそんな事を言う訳にはいきません。


 とりあえず、“お見合い回転寿司で感じが良かったから”と答えるのですが、それ以上に突っ込まれるとボロが出てしまいます。


 その為には、お見合い回転寿司の1分間で、その人のお気に入りポイントを(つか)んでおかないとなりません。


 そうでないと、“な~んだ、この人は私じゃなくても女なら誰でもいいんだ…”と、あっさりと見透かされてしまいます。


 なので、女性に話し掛ける前には、名前、住所、職業、趣味のどれか2つ以上は把握(はあく)しておかないとなりません。


 それだけではありません。 


 お見合いパーティーではこんなやり取りもあるのです。


剛史「ぼくはNO、17の鈴木と申します」


女性「はい、あなたの事は分かりますよ」


剛史「それはどうも」


剛史「あの、山本さん今お話してもよろしいでしょうか?」


 と、話し掛けた時にこんな事を言われました


女性「えっ?私の事を山本だと思っているんですか?」


 なんて、(とぼ)けてくるのです。


 その返答に多くの人は翻弄(ほんろう)されますが、これに引っ掛かったらこの先はありません。


剛史(冷や汗をかきながら)「あれ、間違ったかな?え~と、山野さんでしたっけ?」


女性「いいえ、山本で合っていますよ」


剛史「えっ?じゃあ、何であんな事…」


女性「私に話し掛けるんなら、ちゃんと名前と顔くらいは覚えておいた方かいいですよ」


剛史「す、すいません…」(すごすごと引き下がる)


 男女の出会いにおいては、男性が女性をリードするものと思われがちですが、心理戦では女性の方が一枚も二枚も上回っていたりします。 


 女性の特徴(とくちょう)としては、初対面の時にどんなに短時間だったとしても、ちゃんと自分を見てくれている人じゃないと不愉快(ふゆかい)に感じる、という面があります。


あとは、意外と独占欲が強かったりもします。


 フリータイムで、何人もの女性に積極的に話し掛けるのは必須なのですが、“今日一番相性が良い女性”と(めぐ)り会ったら、それから先は活動を休止しなければなりません。


 順番さえ巡ってくれば、もう一度その女性と話す事もベターだと思います。


 それが出来ないと、“何よあの男は!誰にでもいい顔をするんだったらもういいわ!”ってなってしまいます。


 要は、“押し”も大事なんですが“引き際”も考えないといけないのです。


 よくあるパターンとして、“よし、今日はあの女性に決めた!”ってなってからも、フリータイムで(ひま)を持て余した時、つい、待ち切れなくて、他の女性にちょっかいをかけてしまったという事があります。


 “パーティー会場の離れた所でなら大丈夫だろう”なんて思っていても、けっこう見られているので注意が必要です。


 男性の場合、“お見合いパーティーの席では時間いっぱいまで誰かと話していないとならない”という、使命感?みたいなものに(とら)われがちです。


 だから、“こんなに(のど)がカラカラになるまで話したのにダメだった”と思われる事が多々あると思います。


 それは、前述した“不要な時間(つぶ)し”が自分で自分の首を()めているのかも知れません。


 やはり、お見合いパーティーで人気になるのは容姿がいい事です。


 初回のパーティーに出てから、ダイエットや筋トレに精を出す方も珍しくありません。


 他には、饒舌(じょうぜつ)である事、立ち回りがうまい事、それと女心が分かっている人でした。(女心が分からないと苦戦必至です)


 運営会社にもよりますが、1人当たりのお見合いパーティーの料金がだいたい5千円だったので、この時点で2万5千円も散財していました。


 お見合いパーティーでは、カップルになれる保証は一切ないので、短時間でお相手に気に入ってもらえなければ行く意味がありません。


 このままのスキルだと、何回行ってもカップルにはなれないと思い、うちら3人は初対面の人と話す訓練(くんれん)をする事になりました。


 手頃な訓練方法として、今まで職場内で話した事がない女性に、年齢問わず積極的に話し掛けてみる事にしました。


初対面の方に話し掛けるのは勇気が入りましたが、回数を重ねるうちに辿々(たどたど)しいながらも話せるようになってきました。


 内向的な方には(あや)しまれる事もありましたが、基本仕事の話から入っていけば無視されない事に気が付きました。


 会話を重ねるうちに、返しの言葉にも興味を持つようになりました。


 その言葉を、これでもかってくらいにインプットしていきました。


そうすれば、返しのパターンが読めるようになっていくからです。


ただ、お見合いパーティーで話せるようになっても、デートのお誘いが出来ずにいました。


何故なら、誘ったところで手酷く断られるのが恐かったからだと思います。


話が盛り上がったとしても“次も会えたらいいね”とか“ご縁があれば会いたいですね”程度のところで会話がストップしていました。


 心の中では、“早く誘いたい”とか“とにかく誘いたい”と思っていても、会話が5分ともたないようなら所詮(しょせん)は無理な話でした。


 会話が10分続いたなら、デートに誘ってみようという設定をしたのですが、その前に逃げられる事もしょっちゅうでした。


 パーティー会場をあちこち変えたりもしましたが、山手線の主要駅に点在する会場によって、参加者の居住地が(かたよ)っている上男女比も違うのです。(参加者の対象年齢は(あらかじ)め設定されていますが…)

 

 例えば、池袋の会場だと西東京と東京23区と埼玉県の人が多く、新宿の会場だと東京23区、埼玉県、神奈川県、千葉県の人が平均的にいる事が多いです。


 渋谷の会場だと西東京と東京23区と神奈川県の人が多く、銀座の会場では東東京と神奈川県と千葉県の人が多いのです。


上野の会場だと、東東京と千葉県と茨城県の人が混在しているといった感じなのです。


 なので、うちら3人の居住地と照らし合わせていくと、有利な会場と不利な会場があるのは(いな)めませんでした。(不利な会場だと、自宅から近い人が極端に少ないです)


誠司君は東京都北区に住んでいるから、有利な会場は池袋、新宿、渋谷の順になります。


実君は神奈川県川崎市に住んでいるから、有利な会場は渋谷、新宿、銀座の順になります。


僕は東京都墨田区に住んでいるから、有利な会場は銀座、上野、新宿の順になります。


3人(そろ)った時の有利な会場は新宿になるのでしょうが、何故か新宿だけは他の地域よりカップル率が低いのです。


ぼくの中では、新宿は鬼門(きもん)でしたが、誠司君は新宿の会場を気に入っていました。


 女性は居住地が遠いと全く相手にしてくれないから、会場選びは持ち回りで決めていました。


男女比だと、大概(たいがい)男性の方が多いので、男女全員の1分間トーク(お見合い回転寿司)の時に男性が数人分待機(たいき)になります。


 その時に、見知らぬ男性同士でお話をする事があります。


 待機席での話が妙に盛り上がると、彼女を作りたいからお見合いパーティーに来ているのに、当初の目的を忘れて飲みに行く約束をする事もあります。(お互いにカップルになれなかった場合は、男性同士で誘い合って飲みに行く事もあります)


 男性が待機席でボーっとしていたら、勝ち組になるのは難しいでしょう。


 本来は、待機席に着く前にデータを整理し、1位~3位迄の自分好みの女性を常にリアルタイムで把握(はあく)しておかないとなりません。


 パーティー会場に入ると、異性のデータを書き込める便利なプロフィールシートを(もら)えるのでそこに詳細を記入していきます。


 名前、住所、職業、趣味、そして一番下の(らん)に評価を書きます。


 1分間トークをした後に、お相手に見せない様にして評価欄に○を付けます。


 評価は、S、A、B、Cで判定します。


 あれ?A、B、C、Dだったかな?


 形式は忘れましたが4段階で評価をします。(とりあえず、A、B、C、Dとします)


 ですが、たった1分間話しただけで、数々の女性を評価するのは至難(しなん)(わざ)です。


 因みに、評価を考える時間は20秒以内です…。


 その間、男性陣が1人ずつ左に移動(いどう)するので、歩きながら評価を書き込みます。(書きにくいのでぐちゃぐちゃな字になります)


 モタモタしていると、すぐに次の1分間トークが始まってしまいます。


 1分間だと、決定的に良い部分か悪い部分でもない限りBかCになります。(それだと、B寄りのCとC寄りのBは、途中からBかCか分からなくなります…)


 それを、30人分以上繰り返すと、も~完全に訳が分からなくなります…。


 しかし、重要なのはここで得た情報戦だけではありません。


 次に行うフリータイムの時にいかに早く動けるかです。


 何故なら、フリータイムをする前に、男性陣と女性陣が両サイドの壁際(かべぎわ)に離されるのですが、男女共に番号順に並んでいる訳ではないからです。


 例えば、NO、5の女性がいいと思っても自分から見て遠いポジションに居たら走って行ったところで間に合わないからです。


 結局は、自分の立ち位置から一番近い女性に声を掛ける事になります。


 更に言うと、ライバルが誰を狙っているか分からないので、フリータイムが始まって男性同士で交錯(こうさく)してしまうと、近いポジションに居た女性とも話せない事はよく見る光景です。


 結局のところ、フリータイムは出たとこ勝負になってしまうのです。(話したいと思った女性と全く話せないのは定番なのです)


 それに、多くの女性はピンクのハート型の番号札を、左胸(ひだりむね)の位置ではなく下方に付ける傾向(けいこう)があるので、番号だけでお相手を追っていくのは難しいのです。(男性は青のハート型の番号札をキッチリ左胸に付けています)


 お見合い回転寿司のデータを整理しつつ、フリータイムで最初に話す方に適当に話しかけた…、と思われない様に先手を打ってこう言うのです


「こんにちは!男性NO、14番の鈴木です」


 そこで、お相手の女性がチェックシートに目を落とした(すき)に女性の番号札とデータを確認するのです。(その数秒間が勝敗を分けます)


 それがうまくいくと、スムーズに会話に入れるからです。


 しかし、ある程度会話してから、お誘いをするタイミングが難しいのです。


 フリータイムの持ち時間が10分位として、あんまり早く誘っても警戒(けいかい)されて断られるし、遅いと誘うところまで到達(とうたつ)しないというジレンマがありました…。


 腕時計を見ながら会話をする訳ではないので、お誘いに至るまでの時間配分が難しいのです。


 それと、女性によって受け答えが様々なのです。


 こちらからの問い掛けに対して、すぐに返答してくれる人とそうでない人がいます。


 後者だと、フリータイム中に会話のキャッチボールが出来ない事が多く、お誘いがしたくても高確率でそこまで到達出来ません。


 文中にはありませんが、簡単な質問にもいちいち時間を掛ける女性がおられるんですよ。


 例えばこんな感じです。


(簡単な質問に対して)「う、う~ん、何だろうな~?」(何かを言うまで只管(ひたすら)待つ)


「そんな事考えた事ないから分からないです」(結局、待たされるだけ待たされて回答無し…)


「休日に何をしているかですって?」(しばし考える)「あ~、何もしてないですね」


「好きな芸能人?」(過去を(さかのぼ)って時間をかけて考える)「う~ん、特にいません」


 こうなった場合、お誘いするのは(あきら)めて、一方的にこちらから話すに限ります。


 お見合いパーティーでモテる女性は、何といっても美形な人です。


 あとは、ノリがいい人です。


 男性の話を身振り手振りを交えて聞いてくれて、時折笑ってくれる女性は非常に好感度が高いです。


 ぼくは、美形でノリがいいという2つの要素(ようそ)を持つ女性は、最強(さいきょう)なんじゃないかと思っています。

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