【初編】第4部~サクラにも表もあれば裏もある 第1章~前だけ見てると気付かない
ぼくは、前回のお見合いパーティーでサクラを見分ける霊感を手に入れました。
それは、実君の一言が発端となって発動したものなんですが、まさかこんな事が起きるなんて思ってもいませんでした。
ただ、今回もサクラを見分ける事が出来るのかは若干不安でした。
それでも、この能力が今後も発揮する事が出来るのであらば、次のお見合いパーティーでは初の彼女ゲットになるかも!
と、思えてきました。
来週のお見合いパーティーの前に、誠司君と実君にサクラ対策について電話をしました。
それと、ぼくのサクラを見分ける霊感の事も話しました。
電話で話し合った結果は、“まあ、霊感について期待はしてないけど出来るようならよろしく”といった程度でした。
あと、次の場所については紆余曲折した末に、池袋周辺にある会場に行ってみようという事になりました。
お見合いパーティーは、19時からスタートして21時でお開きの回を選びました。
次の週末に、池袋駅東口近くで待ち合わせをしてから、徒歩数分の所にあるパーティー会場に行くと、渋谷の時よりは年齢層が上の方が大勢集まっていました。
そこで、早速お得意のサクラ探しをしてみる事にしました。
ぼくは、目を瞑ったまま、頭の中でこう唱えました。
「願わくば我にサクラの存在をを示したまえ」
すると、以前の時と同じような感覚が呼び起こされ、何とも言い表し難いものが頭の中に“ズーン”と入ってきました。
目を開くと、何故かサクラ探しの精度が上がっていて、一瞬で対象の女性を見分ける事が出来たのです!
何と!サクラに当たる方々が薄ぼけてきて、徐々に視界から排除されたのです。
「あ~、なるほどね、あの2人組の女性がサクラなのか…」
その後、先程の霊感をリセットする為に数秒間だけ目を閉じて深呼吸をしました。
「はぁぁ~、ふぅぅぅぅ~」
その後、もう一度同じ方向を直視すると、サクラの人達がスーっと視界に入ってきました。
「うん、分かった!」
「今回のサクラは、6、7番の女性で間違いない!」
「誠司君と実君にも報告だ!」
2人にその事を話すと、最初は驚いたような顔をしていましたが、事前に電話で話していたのもあってすんなりと受け入れてくれました。
誠司「やっぱお前って凄いな!」
実「今回はお前の話に乗ってみるよ、サンキューな!」
剛史「いやいや、今日が偶々かも知れないから」
ぼくは、霊感を使わなければ到底知りえない情報を早々に得て、思わずニヤリとしました。
ぼくが目を付けた2人組の女性は、渋谷の時とは違って比較的地味な方でした。
2人共顔立ちは整っていましたが、化粧は薄めで黒髪を後ろで束ねていました。
一見すると、サクラの様には思えませんでしたが、どういう風に皆さんと溶け込むのかを考えた末の出で立ちなのでしょう。
ただ、サクラは嘘の情報で塗り固められているし、ちょっと揺さぶればすぐにでも正体を現すだろうと思っていました。
他の男性参加者には悪いけれど、なるべく6、7番の女性にアプローチしてくれないかな?とも思っていました。
「いかんいかん…、人の事よりも自分の戦略を立てなくては…」
そう思い、サクラ以外の女性を入念にチェックし始めました。
その時です。
ぼくは、何とも言えない違和感を覚えたのです…。
それは、自分の左右にある空間が歪んで見えるというか、寒くもないのにゾクゾクっとするような不思議な感覚でした。
何だか嫌な予感がしたので、今一度霊感を使って念入りに女性陣を観察しました。
しかし、先程の情報以上の事は何も感じ取れませんでした…。
「チッ、何だよ…、さっきはあんなにもビンビンきていたのにさ…」
「でも、まあ、霊感なんて所詮はこんなもんだろう…」
「それに、あんまりそればっかしに頼ってしまうと、変に祟られるかも知れないしな…」
「もしかして、さっきの違和感はその類いの警告なのかもしれないな…」
そう思い直して、これから始まるお見合いパーティーに集中する事にしました。
それから、十数分後にお見合いパーティーがスタートしました。
暗がりから現れた司会者は、40歳前後の華奢な男性でした。
「皆様、大変長らくお待たせしました」
「本日は当パーティーにようこそお越し下さいました」
「私は本日の司会進行を担当する坂井と申します」
「それでは、今日も張り切って参りましょう」
司会者の簡単な挨拶が終わると、早速お見合い回転寿司の配置に就くよう案内されました。
会場内の女性陣は、渋谷の時と比べて落ち着いた感じの30歳前後の方々が半分以上を占めていましたが、20代前半と思われる若い方も4割位はいました。
30歳前後の女性陣は、何だかとっても懐が深い感じがしてとても話やすかったと思います。
一方、若い女性とは渋谷の時と同じような会話をしたところ、意外にも盛り上がりました。
このパーティーでは、年齢層が高めの男女と若い男女で勢力が二分していました。
お見合い回転寿司が終わってフリータイムに入ると、実君はいち早くお目当ての女性のもとに直行しました。
その時、ぼくは誠司君にこう言いました。
剛史「誠司君は何番の人を気に入っているの?」
誠司「いや、今回はそれほど入れ込んではいないよ」
剛史「それならさ、ぼくと誠司君は合コンを目指して3人組を狙おうよ」
誠司「だったら、狙うのは若い方のグループだよな」
剛史「まあ、そうだね」
誠司「若い女性グループはチェックしてあるのかよ」
剛史「見たところ女性3人のグループが2つあるけどさ」(プロフィールシートを指差す)
誠司「成程な」
剛史「それで、どっちの方がいいと思う?」
誠司「それは俺に任せろよ!さらっと偵察に行ってくるからさ」
剛史「分かったよ、後で実君にもその作戦伝えておくから」
誠司「じゃあ、5分後にこの場所に集合な!」
剛史「了解」
その後は、しばらく別行動をとりました。
ぼくも、独自に3人組の女性をまじまじと見ていましたが、下を向いている事の方が多くて話し掛けにくい感じでした。
あれから、3分位すると誠司君が戻ってきました。
剛史「どっちのグループがいいか決まった?」
誠司「う~ん、どっちもどっちだな」
剛史「強いて選ぶとどっちが優勢?」
誠司「だったらさ、さっき1分間トークで話した時に俺と家が近かった、14、15、16番の3人組を合コンに誘ってみようぜ!」
剛史「ぼくはそれで構わないよ」
誠司「じゃあ、決まりだな」
プロフィールシートを見ると、14番が西館七奈さん、15番が小熊亜海さん、16番は飯野美羽さんと書いてありました。
(以後、14、15、16番の女性は、七奈、亜海、美羽と名前で表記します)
そうと決まれば、誠司君の行動は素早いものでした。
しかし、誠司君が話し掛けようとした矢先に、他の男性グループに先を越されてしまいました…。
誠司「クソッ、もう少し早く目を付けていればな…」
剛史「仕方がないから他を当たりますか…」
誠司「まあ、10分で次の人と交代だからチャンスはあるよな…」
剛史「それだと、3分前には並んでいた方がいいね」
誠司「逆算するとそうなるかな」
剛史「じゃあ、それまでにはここに戻って来るから」
それから、5分位は別々に行動しました。
その間に、実君がフリーになっていたので、話し掛けてみました。
剛史「実君、調子はどう?」
実「俺の方はからっきしだよ…」
剛史「だったら、次の区切りであの3人組に話し掛けるんだけど一緒にどう?」
実「そうだな、次は俺もそっちに行くよ」
剛史「ぼくと誠司君は3分前にあのグループの横にいるから」
実「了解、何としてでもチャンスを広げないとな」
剛史「じゃあ、今回は合コン狙いって事でいいよね」
実「OK!それまでは年上の人と話してくるから」
剛史「だったら、ぼくも誰かと話をしてくるよ」
実「やっぱ、1人で何人かの女性を相手にするのは厳しいよな…」
剛史「そうだね、だけど久し振りの連携もいいと思うよ」
そこからは、時間配分に気を付けながら隅の方にいた若い女性に話し掛けました。
しかし、終始つれない感じでした。
腕時計を見ると、待ち合わせの1分前でした。
慌てて待ち合わせ場所に向かうと、既に2人は3人組の女性の横に並んでいました。
剛史「悪い悪い、ギリギリになっちゃったよ」
誠司「いいって事よ、それより早く時間にならないかな?」
その直後に司会者が声を張り上げました。
「はーい、ここで1回目のフリータイムは終了です!」
「次の方と交代して下さいねー」
「それでは、2回目のフリータイムをスタートしまーす」
フリータイム中盤に合流した僕らは、作戦通り次の区切りでお目当ての3人組と話す機会得ました。
久し振りの連携で、口火を切ったのは誠司君でした。
誠司「こんにちは、10番の篠原です」
七奈「こんにちは」
誠司「今日は暑いですね~」
七奈「ちょっと動いただけでも汗ばみますね~」
実「こんにちは、11番の南雲です」
七奈「こんにちは」
実「皆さんは既に気に入っているお相手とかいますか?」
七奈「それがまだいないんですよ~」
剛史「初めまして、12番の鈴木です」
七奈「初めまして」
剛史「パーティーにはよく来られるんですか?」
七奈「私は何回か来たことがあるけど、連れの2人は初めてなんで緊張しているみたい」
うちら3人が話し掛けても、返事をしてくれるのは七奈さんだけでした…。
しかしながら、こういう事はよくありがちなので、なるべくお相手に警戒されないようゆっくりとした口調で話していきました。
すると、少しずつではあるものの、亜海さんと美羽さんも会話に入ってくるようになりました。
いろいろと話したところ、3人は高校時代の同級生だという事が分かりました。
うちら3人は、とにかく早く結果を出したかったので、何とかして合コンをする方向に話をもっていくのに必死でした。
とはいえ、早いうちから合コンに誘うと、断られる確率が高いのも事実でした。
とりあえずは、共通の趣味があるかどうかいろいろと聞き出す事にしました。
すると、亜海さんと美羽さんは、
「特に趣味は無いです」
と、言い張るのです。
それに、2人は真顔のままでこう続けました。
亜海「基本、家と会社の往復だけですよ」
美羽「長いこと彼氏もいないし、いる事に想像が出来ないですよ」
亜海「今日は七奈の再三のお誘いで断り切れなかったの」
美羽「それで、試しに参加したって訳なの」
ふ~ん、成程ね、2人が参加したのは本意ではなかったと言いたいのかな…。
ぼくは亜海さんと美羽さんに、
「休日は何をしていますか?」
と、聞いたところ、
「特に何にもしていません」
と、素っ気ない返事でした。
映画やスポーツも殆ど見ないようでした。
食べ歩きもしない、旅行もしない、ギャンブルもしない、オタク系の趣味もない…。
長々と聞いたところ、亜海さんはよく1人で買い物に行く事が分かりました。
美羽さんは、休日はだいたい昼迄寝ているとの事でした。
亜海「あっ、あと~、偶に髪の毛を切りに行きますよ」
剛史「行くのは3か月に1回位ですか?」
亜海「え~と、特に決まってないし考えた事もないわ」
剛史「そうですか…」
う~ん、全く会話が盛り上がらないな…。
この2人は、普段から出会いを求める行動をしていないから、日常で男性と出会うとしたらナンパされる位しかないのでしょう。
しかし、会社が終わってから家まで直行する日々だと、ナンパ師は会社から最寄り駅までの短い距離でしかチャンスはないので、それもなかなか難しいでしょう。
3人の中で、真面に会話が成り立っているのは、七奈さんと話している時だけでした。
それでも、最後にぼくが玉砕覚悟で、
剛史「今度、3対3で合コンをしませんか?」
と、切り出すと、
亜海「私達は今日3人で会うのも半年ぶりなの」
美羽「だから、次はいつ集まれるかも分からないの」
と、遠回しに嫌だと言ってきました。
剛史「そうなんだ…、じゃあ、この後に1時間だけでもお茶しない?」
と、めげずに誘いましたが、
美羽「今日は、これから約束があるからダメなんです」
と、今度は拒絶感が強めでした。
剛史「久々に会った3人でお買い物ですか?」
と、何とか話を繋ぐと、
美羽「いえ、この後に1年ぶりに会う女友達と上野で合流してお食事会をするんです」
と、次の予定を言われました。
まあ、今日に関しては無理か…、と思いつつも、
剛史「因みに、それって何時からやるんですか?」
と、聞いたところ、七奈さんは腕時計を見ながら、
七奈「ちょ、ちょっと待ってね」
と、焦りながら言いました。
七奈「さっきから確認しようとは思っていたのよね」
実「それだったらいいタイミングだね」
七奈「今から~、お食事会まで~、あっ、1時間もないか!」
想像以上に時間がない事に気付いたのか、七奈さんは急にソワソワし始めました。
そのうち、七奈さんの表情がみるみる青褪めました。
そして、唇を噛みながらこう言いました。
七奈「せっかく、2人にもお相手を見付けてもらおうと思ったのに…」
七奈「多恵ちゃんがお店を予約したから気にしていなかったけど、あと1時間後でもよかったのに…」(多恵ちゃん→食事会でこれから会うメンバー)
亜海「今更何を言ってんのよ!」
美羽「こうしちゃいられない、直ぐにでも向かわなくちゃ!」
そう言うと、3人で泡を食って帰ろうとしました。
剛史「それは忙しいね」
と、ぼくが苦笑いをしながら言うと、七奈さんは申し訳なさそうにお礼を述べました。
七奈「時間に気付かせてくれてありがとうございました」
剛史「まあ、残念だけどここまでかな…」
実「じゃあ、これからアドレス交換だけでもしませんか?」
と、実君が最後の望みを掛けて言いました。
そこで、七奈さんが何かを言いかけましたが、
誠司「今日はお疲れ様でした~、お食事会楽しんで来て下さいね」
今迄黙っていた誠司君がそれを遮りました。
そこで、七奈さんはホッとしたような表情を浮かべました。
その後に、七奈さんは誠司君に向かって申し訳ないというゼスチャーをしました。
うちら3人は、事情を察して力なくバイバイをしました。
実「何だよ、あれは完全にハズレじゃないかよ…」
剛史「まあ、仕方がないよ」
実「いくら一般参加の女性でも、あんなのを素でやられちゃったらな…」
剛史「う~ん、見た目は良かったんだけどね…」
誠司「あれさ、こんな所で話していてもしょうがないから、もっと端っこに行こうぜ」
実「分かったよ」
僕ら3人が、会場の隅まで行ったところで、誠司君は諭すように言いました。
誠司「あの3人組は次の予定をギチギチに入れていたから、ただの時間潰しに違いないな…」
実「そうだな、あからさまにやる気がなかったもんな…」
剛史「それに、途中で時計を見なかったら次の予定もすっ飛んでいたからね」
実「どのみち、ヤベー奴らだったんじゃねぇの?」
剛史「でも、僕らはけっこう頑張ったよね」
実「そうだな、普通だったら勝てたんじゃないか?」
誠司「そもそもだけど、合コンをやんわり断られた時点で察しろよ」
実「まあ、確かにそうだけどな…」
剛史「もしかしたら、お食事会の時に話すネタを仕入れる為だけに参加したのかもしれないね」
誠司「いやいや、それは邪推しすぎだろうけど、これ以上話していてもダメでしょう」
剛史「七奈さんとは話しが続くけど、亜海さんと美羽さんは無趣味過ぎて会話が止まった時は泣きそうになったよ…」
実「せっかくの連携だったのにな…」
誠司「俺は最初の段階で失敗だと思ったよ」
実「七奈さんだけでもお知り合いになりたかったな」
剛史「そこが難しいところだね」
実「あ~あ、こんな事になるならさっき迄話していた31歳の女性とアドレス交換しとけば良かった~」
剛史「でも、ぼくの爺ちゃんが30歳を過ぎた女は何かあるから気を付けろって言ってたよ」
実「それって、美人なのにって事だよな」
剛史「う~ん、詳しい意味は分からないけどね」
誠司「まあ、言いたい事は分かるけどな」
実「お前の爺さんの時代ではそうだったんだろ」
剛史「確かにね」
誠司「まあ、疑う余地はあるよな」
実「それでも、姉さん女房がいいって言う男もいるから人それぞれだよな」
誠司「そうだな、若い女は遊びで来ている奴も多いしな」
剛史「とりあえず、こんな所で3人で話していても仕方ないから残り時間を有効に使おうよ」
誠司「そうだな、フリータイムが終わったらまたここに集合な」
実「分かったよ、それじゃあまたな」
剛史「了解、また後でね」
お見合いパーティーでは、純粋にお相手を欲して来ている人と、誘われたのでとりあえず来ましたよ~的な人がいるので、後者の場合は努力ではどうにもならない事も多々ありました。
フリータイムの残りの時間、3人バラバラで頑張ってみたものの、時すでに遅しでした。
年上の女性にアタックしたものの、年下の男性は弟のようにしか見られないと突き放され、彼氏としては考えていないと言われてしまいました。
他に話せる女性がいないのもあって、慌てて話題を変えてみたものの、全く盛り上がらなかったので、しおしおと項垂れたまま引き下がるしかありませんでした。
残された時間も僅かだったので、うちら3人は早々に待ち合わせ場所に戻りました。
僕ら3人は自棄になり、フリータイムの最後にはフリードリンクを飲めるだけ飲んでカップリングの発表を待ちました。




