第3部、第4章~サクラを見抜いたとしても
お見合いパーティーの後に、反省会と称した飲み会をするのはやぶさかではありませんでした。
それは、気落ちした者同士で手っ取り早く現実逃避出来るからです。
しかし、彼女をつくりたいという目的がある以上、失敗を重ねたとしても簡単にはへこたれていられませんでした。
うちら3人は、お見合いパーティーで人気になる訳でもないし、女性参加者から冷たくされたり無視される事も多々ありました。
冷めきった眼差しやぶっきらぼうな返答…。
それに、引き攣った顔で徐々に距離を取られた事もありました。
頑張って話し掛けても、お相手から質問されたり話を振ってくる事もなく、総じてつまらなそうな顔をされていました。
他には、ちょっと話し掛けただけで嫌悪感丸出しで逃げられる…、という事もしょっちゅうでした。
それでも、僕達は心で泣いていても決して投げ出したりはしませんでした。
それは、ただ単に参加料を支払ったからではなく、いつかはカップリングして司会者に番号を呼ばれたいと思っていたからです。
なので、どんなに打ちのめされたとしても、口を真一文字に結んだまま笑顔を作って、次々と話し掛け捲るしかありませんでした。
「こんにちは!」
「ど、どうも」
「今、ちょっとお話してもいいですか?」
「いいえ、他に話したい方がいるのでごめんなさい」
断られる時は、だいたいこんな感じでした。
即答で断られた時は、冷や汗をかきながら、
「そうですか、じゃあ頑張って下さいね…」
そう言って、すごすごと引き返して行くしかありませんでした。
それでも、場数を踏むうちに段々とその扱いにも慣れてきました。
女性から突き放された時には、自虐的な事を言って笑いに変える事も覚えました。
「あ~、やっぱり自分じゃダメでしたか~」
「バッサリ切られるとは思っていたけど、あと2秒だけ粘りたかった~」
「余は無念なり~」
「プッ!ちょっと止めてよ~」
そんな感じで戯けてみせたりもしました。
そうする事で、次の方と話す前に蟠りが残らないようにしていました。
フリータイムでは、元気よく話し掛けたり、ふんわりとした口調で喋ったりと、お相手によって使い分けも出来るようになりました。
しかしながら、全くもってカップリングには至りませんでした。
パーティーの後に赴く反省会では、出来立てホヤホヤの愚痴が噴出していました。
連戦連敗の後に、愚痴り合ってストレスを発散するのは、うちら3人にとってお決まりのパターンでした。
ただ、うちら全員の希望としては、皆でカップルになってその流れで飲み会になるのが理想でした。
もし、そうなったとしたら、男性の方からご馳走するのが定番なので、いつもより多めに現金を忍ばせておくのですが、カップルにならないが為にいつもそのお金が浮いていました。
このお話をお読み下さっている皆様が、適齢期でお相手探しをしていたとしましょう。
更に、お友達と一緒にお見合いパーティーに参加したとします。
しかし、健闘虚しく全員か撃沈してしまったら、アフターではどうするでしょうか?
そのお金(合コン用におろしたお金)をケチって自宅に直帰するでしょうか?
それとも、反省会やらで使ってしまうでしょうか?
因みに、うちら3人が反省会に流れた場合は、カップルになれなかった他の男性達とジョイントする事もありました。
向こうから誘われる事が多かったのですが、こちらからも誘う事もありました。
即席でジョイントした飲み会では、モテない男同士で意思疎通する場面が多く見受けられ、笑わずにはいられない事もありました。
「クソっ!こんなにも話せないとは思わなかったよ…」
「一般参加の女性だとは思うけど、お口が臭くて遠慮しちゃったよ」
「列に並んでやっとお目当ての女性と話せた瞬間に、他の男が横槍を入れてきた…」
「そうそう、それある!係員が少ないからやりたい放題なんだよな」
「俺はサクラだと思った女性に“お前サクラだろ!”って言っちゃったよ」
「マジかよ!」
「それ、気持ちは分かるけどさ、同じ事を相手から言われたらどうするのさ?」
「サクラではありません…、だろうね」
「まあ、そうなるわな…」
「でも、明らかにそれっぽい奴っているよね?」
「分かる~」
「無視すればいいんだけど、気になって気になってしょうがないんだよね」
「だけど、サクラがサクラですって認める奴はいないし、それが一般参加の女性だった時は血相を変えて怒られたよ…」
「じゃあ、今後それを言うのは死語って事で!」
「あ~、それ激しく同意~」
「俺なんて、途中で帰ろうとした女性に“帰るなら俺と2人で抜け出そうぜ”って誘ったら、マジで嫌がられて猛ダッシュされたよ…」
「それはあれだな、来るもの拒まず去る者追わずってやつじゃないか?」
「う~ん、何だか微妙…」
「ぶっはははは~!」
「あ~あ、男も女も同じ料金だったらな~」
「それだったら、俺だって帰りたいって思った事が何回もあったよ」
「ですよね~」
この時の会話では、“モテない女性同士でもパーティーの帰り道に飲み会をしているのだろうか?”という疑問がありました。
その辺りの事情はよく分かりませんでしたが、何かしらの発散はしているんじゃないか?というのが妥当な線ではないでしょうか。
男女共に、モテない者同士がくっ付けば面白いんでしょうけど、そういう流れにはならないようです。
結局、カップルになれなかった者達は、下を向いてすごすごと帰って行く…、というのが世の習いのようでした。
当初の予定とはお金の使い道は変わってしまいますが、うちら3人にとって鬱憤を晴らす為の反省会は必須でした。
乾杯をした後に、最初の一杯を一気に飲み干すと、ここでやっと救われたような気持ちになります。
しかし、今回のサクラの件は個人的には相当ショックでした。
せっかく、実君が疑惑のサクラ情報を教えてくれたのに…。
出来れば、サクラについて事前に検証をしたかったのですが、その存在を初回から真面に目撃してしまうとは…。
その時は、怒りというよりはドキドキが止まりませんでした。
お見合いパーティーでは、男女同数なのが理想なのでしょう。
しかし、申し込みの時点で男女比が合っていても、実際に何人来るかは開催してみないと分かりません。
キャンセルをする身としては、気が変わったというのもありますが、当日の仕事がいつもと同じ時刻で終わったならば行けるかも…、というような感じで申し込んでいる方も普通にいました。
それが、残業ならまだしも、突発的な飲み会に流れてしまうという方もいたようでした。
各運営会社は、直前のキャンセルを防ぐ為に必死でした。
当日だと100%のキャンセル料が発生しますが、女性にとっては痛くも痒くもありませんでした。
それは、元々女性の参加料が格段に安い為、何の戒めにもならなかったのです。
女性の参加料が無料ならキャンセル料もかからないし、1000円だったとしても後日振り込んで終了でしょう。
お見合いパーティーに参加する女性の人数が増えていたにもかかわらず、料金の設定を据え置きにしたのが問題だったのでしょう。
その所為で、いつまで経っても一定数の女性がドタキャンしていました。
運営側としても、その辺が悩みの種だったと思います。
定員より多目に女性を入れようともしましたが、キャンセルする方のバラつきが酷くて、到底男女同数にはなりませんでした。
そこで、手っ取り早くサクラを雇って凌いでいたのでしょう。
本来、サクラとはどんな動きを求められているのだろうか?
ただの人数合わせで呼ばれただけなのか?
それとも、ある程度は話し相手としての役割を果たさなければならないのだろうか?
一時期は、お見合い回転寿司の人数合わせの為だけに来ているサクラもいたのですが、それだけで業務終了ならばおいしいアルバイトだったと思います。
しかし、一般参加の女性が徐々に増えてくると、同性の間でも下手気な事はやれなくなりました。
従って、お見合い回転寿司が終わった瞬間にサクラの女性がドッと帰って行くのは、運営側がサクラを入れたのと同等に思われるようになり、暗黙の了解により出来なくなったのです。
何故なら、お見合い回転寿司が終わったと同時に参加者の誰もが出入口付近を監視し始めたからです。
そこで、下手気に帰ろうとすると、参加者の誰かがその人の行く手を遮りサクラ扱いして責め立ててくるのです。
何事もやりすぎはよくありませんが、それを放置してしまうとお見合いパーティーどころではありません。
最悪の場合は、暴行事件まで発展する可能性もあるので、途中退室は急病人だけというルールになりました。
ただ、喫煙所は会場の外にあるので、集計作業中にタバコを理由に抜け出す事は出来たようです。
どのみち、サクラはカップルにならない(なれない)のが前提なので、男性の参加者を選ぶ事はありません。
それで、フリータイムの時は自分が選ばれないような努力をするようです。
しかし、人気になってしまったら、それなりに対応せざるを得ないのでしょう。
結局、サクラに近付いた男性は、遅かれ早かれ難癖をつけられ拒絶されます。
男性の参加者からすると、高い確率でサクラがいる事は周知の事実なので、いっその事お見合い回転寿司の後に帰ってもらった方が戦略が立てやすいと思います。
それが、フリータイムまで居残られると調子が狂ってしまいます…。
「あれっ?あの人絶対サクラだと思ったのに帰らないや…」
「う~ん、もしかしたらサクラじゃないのかも?」
そう思ってしまい、フリータイムでもサクラにちょっかいを出してしまう事が屡々あります。
更には、お見合いパーティーに何人かのサクラの投入する事により、参加者の行動が一段と読めなくなりました。
それは、誰もがサクラを避けようとするからです。
パーティーの直前に、何人もの女性がどっと会場に押し寄せるようなケースなら分かりやすいでしょうが、仕込みのサクラの判別は非常に難しいと言わざるを得ません。
何故なら、仕込みのサクラは美人であってもそれほど派手さがないからです。
それに、基本受け答えは他の参加者と合わせているので目立ちにくいのです。
「えっ!この方がサクラだったの?」
と、思う事もあるでしょう。
サクラを選ぶという事は、トランプでジョーカーを引いたようなものでしょう。
誰だって出会いを求めている以上は、サクラが邪魔な存在である事に変わりありません。
それは、男性だけだと勘違いされがちですが、女性にとっても目の上のたんこぶなのには違いありません。
何故なら、サクラがいる事によって、第一印象カードの得票が大きく左右されるからです。(第一印象カード→お見合い回転寿司の後に配られるカード)
第一印象カードは、男女共に上位3番人気にはなっていないと得票には至りません。(一般論として)
仮に、サクラだけで上位3番人気を独占してしまったらどうなると思いますか?
言わずもがなですが、一般参加の女性達には1票も入らない事が考えられます。(その結果を真に受けてしまい、隙を突いて帰ってしまう女性もいます)
逆に言うと、サクラさえいなければ一般参加の女性だけに得票がある訳です。
圧倒的な1番人気の女性がいなければ、得票が割れる傾向にあるので、5番人気までの女性にもチャンスはあると思います。
やはり、第一印象カードを1枚でも貰えると、1歩抜け出た感じがして嬉しいものです。
男性からしたら、態と人気薄の女性に第一印象カードを送り、それがお相手に1枚だけ渡っているのが理想なのかもしれません。
そうなれば、フリータイムで有利になる場合もありますから。
ただ、その判断が難しいのでしょうけどね。
男性陣の中には、同じような事を考えている人がいるので、ライバルが増えるのは必至です。
サクラがいるのが当たり前になってくると、まずは見極めが不可欠になってきます。
けれど、今回は高確率でサクラを見抜いていたのも事実でした。
サクラを投入するのは、男女比を揃えるという目的以外ではこんな事があったようです。
一般の女性参加者が、男性陣の色欲を唆らせるまでに至らなかった場合、その魅力をふんだんに振り撒く事を求められているようでした。
その理由は、男性が初対面の女性を選ぶ場合、見た目が8割以上というデータがあるからです。
初めてお見合いパーティーに赴いた一般参加の女性は、化粧はしているもののリクルートスーツを纏ってお堅いイメージを醸し出してきます。
本来ならば、日本人にとって馴染みのないお見合いパーティーに行く事は、日頃から出会いさえあれば無縁法界なのでしょう。(無縁法界→縁もゆかりもないこと)
しかし、女性の場合は出産年齢が限られているので、25歳以上になると30歳迄には結婚したいと1度は考えるようです。
よって、若気の至りでお見合いパーティーに参加する女性がいます。
ただ、それほどがっついた感じはありません。
職場にいい人がいないからという場合が多いので、そんじょそこらの男性では満足しないというのもあります。
なので、サクラでない女性であっても、彼女のハートを擽るのは容易ではないと言えるでしょう。
それに対して、美人系のサクラの方々は化粧は濃い目ではありますが、胸元や背中が露わになったファッションをしています。
ただ、きつめな香水だと普段パブ等に行かない男性が嫌厭するので、シャンプーや石鹸の匂いを彷彿とさせる清潔感のある香水をつけています。
あとは、一般参加の女性が年齢を気にしているのに対して、サクラの方々はほとんど気にしていません。
それは、悪魔でも営業の一環としてやっているからだと思います。
水商売出身の方もいるので、基本会話には長けています。
話し相手の好みを探るのがうまくて、いつの間にか気を許してしまいそうになります。
やはり、結婚相手や恋人としてではなく、お客さんとして喜ばす事が得意なのでしょう。
もし、あなたが20代後半~30代前半の健全な男性だったとしましょう。
そして、何かの切っ掛けでお見合いパーティーに行ったとしましょう。
そこで、一般参加の女性の中に目を惹くような美人、若しくはノリのいい方が全くいなかった場合、魅惑的なサクラの誘惑に負けない自信はおありでしょうか?
「そんなの自分だけは冷静に判断出来る!」
そう言い切れるでしょうか?
残念ながら、それは否でしょう。
大概の男性はサクラに絆されて、うまいこと逃げられるでしょう。
出会いのチャンスが短時間であればあるほど、男性は顔とスタイルで判断するしかなく、かつ、話上手で聞き上手のサクラだったらもうメロメロになります。
普段、褒められた事がないような男性が、美人からちょっと持ち上げられたら、
「この女性かわいい~」
「もしかして俺に脈あり?」
「絶対投票しよう!」
って、なるでしょう。
そう思ったら最後、他に話せる女性がいても上の空だったりします。
会場係の方が、会話待ちの女性を案内しても拒否したりと、けっこう不器用な男性が多いのです。
お見合いパーティーに参加している女性は、お気に入りの方が見付からない限り、何人もの男性とお話したいと思うのに対し、男性は無謀であってもこの人と付き合いたい!と思う女性に何回もアプローチする傾向があります。
3分制限のトークをした後も、再び同じ列の最後尾に並ぶ男性はかなり多いです。
大人気の女性参加者がいなかった場合、男性参加者は女性全員に携帯番号を渡します。
それに対して、女性参加者は気に入った男性以外は連絡先を教えてはくれません。
あと、女性参加者の中でやたらと忙しいアピールをしてくる方がいます。
そういう方は、恋愛対象から外した方が無難でしょう。
それは、その女性がいくら魅力的でも、次の予定がギッチリなので近日中に会う事が出来ないからです。
その方曰く、“出会いには興味があります”、それと、“周りからもいろいろと言われています”、しかし、“とにかく仕事が忙しい”、との事らしい…。
お見合いパーティーに来たのも、“何ヵ月も前から休みを調整してやっと行けた”との事でした。
ですが、仮にカップルになったとしても、“次の日程については忙し過ぎて白紙になります”、との返答でした。
まあ、事情は察しますが、これでは何の為にここに来たのか分かりませんね。
その方は、お見合いパーティーの後も忙しいのか、閉会するなり急いで帰って行きました…。
やはり、出会いを求める以上は、ある程度は時間が取れないとうまくいきませんね。
女性参加者で、幼稚園や保育園の先生が来ている事があります。
彼女らは、職業柄子供が大好きなので、男性は一人一人同じ質問をされます。
「あの、子供は好きですか?」
ってね。
遊び目的で女性と交際したい男性は、
「まだ子供は考えていません」
「今は子供の事より俺の事を好きでいてくれよな」
ってなるんでしょう。
その反面、すぐに結婚したいと思っている子供好きの男性はこんな感じだと思います。
「子供は大好きですよ!」
「僕が子供の頃は、妹と弟のお世話をしていたんですよ」
「やっぱり、赤ちゃんってかわいいですよね~」
そういった話を目を細めてすると、子供好きな女性はグイグイきます。
人様の子供でも興味があるのに、ましてやご自分の子供となると堪らないのでしょうね。
その手の女性は、お相手の男性の年収や顔立ちがソコソコで真面目な性格だと感じると、早い段階で次のステップに進もうとしてきます。
「私はあなたに興味があるので、近いうちにゆっくりと時間をとって会いたいです」
「でしたら、今月中にデートでもしませんか?」
「はい、それでは今から候補日を言いますね」
「17日か18日のどちらかは空いていますか?」
「18日なら空いていますよ」
「では、その日でお願いします」
それからは、話し相手の男性に対して今まで散々遊んできたのかどうかを聞いてきます。
その意図は、散々遊び倒した人ならば、直ぐにでも所帯を持つ事に躊躇しないと思われているからです。(まあ、一概には言えませんが…)
デートの約束をしてからは、早い段階で子作りの打診をしてきます。
それは、子供を何人かもちたいと思うならば、20代のうちに1人は作っておかないと年齢的に厳しいからだと思います。
幼稚園や保育園の先生でなくても、交際してから早い段階で結婚する事が出来る男性は、それなりにモテると思います。(個人差はありますが…)
結婚をするには、ある程度の貯金がないと踏踏み切れないのと、それに大枚を叩けるかというのも焦点になってくるでしょう。
その際、親と同居しないのが条件になると思いますが、新婚生活が楽しいのは子供がいない間だけなんて事もあるので、男女共に楽しめる時に集中して楽しむのがいいのかもしれません。
それにしても、この日はしばらく寝付きが悪かったです。
「あ―、早く寝ないと明日の仕事がキツくなるな…」
ぼくは、頭を抱えて何度も寝返りをうちました。




