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異世界に行くまでに!

作者: 夢見羊

 六月の上旬。

 太陽が沈むのに時間が徐々に延びていく春の終わり頃である。

 そんな時期にこの御園克学校は体育大会が行われていた。

 それはそれは盛り上がり、熱き思いと行動がぶつかり合って最後の競技を終えて表彰台を登った三年のクラス代表者が一位の旗を持って優勝を成した。それを以て、今年の体育大会の幕を無事に閉じた。

 自分はこんな熱い戦いではしゃいでいた者の一人であり、体育大会の実行委員を務める一人でもあった。その為に時刻は六時五十二分である。完全下校の時間を二十二分程過ぎている。


「ハァー…………マジか、もうこんな時間かよ」


 左手首に着けている腕時計を見て、ため息が思わず出てしまう。何せ、今日は動きっぱなしで、ヘトヘトのデロデロ。

 一人で疲れた態度を出しても、友達が居ないために、ただ、どんよりと成るだけだった。

 廊下の窓から外の景色を見れば、太陽が半分以上が沈み暗くなり始めて、余計に気持ちが家に帰りたくさせる。

 止めていた歩みを進める。そんな歩きも早足となって少し早くなっていたのは帰りたい気持ちが見える形で現れである。

 クラス教室の前側の引戸を引いて、誰も居ない教室内の蛍光灯のスイッチを押して灯りを付けるとパッと光がついて眩しさに少し目がやられる。それに油断をしたと思いつつ数秒とただずに戻ってきた視力で教室内を見ると人がいた。

 その者は一人で自分の席に座り本を読んでいる女子生徒。長い髪は結ばれずストレートヘアで綺麗な黒髪に整った顔つきと骨格は美人系である。その者は既に体操服姿ではなく、ちゃんと夏服の制服を着ている。此方を向くことなく、ただ本を読み続ける彼女は平常運転。

 この生徒とは、クラスのマドンナ的存在で二人の内のもう一人の体育大会の実行委員である。

 大方、自分を待っていたのだろう。先に帰れば良いものを、律義のことである。礼は特にしないし、彼方も此方も少ないふれあいだがこう言うのあまり好みではないだろう。

 自分は気にせず自分の席に向かい、帰りの支度を早めに済ませるとカバンを背負ってから未だ本を読んでいる女子生徒に呼び掛ける。


「冬暖さん。教室に鍵を閉めるから帰りの準備をして」


 その声で此方を見てから教室内にある時計に視線を向けて、本に視線を戻して栞を挟むと本を閉じ机の上に置いた。机の横に掛けていたカバンに手を掛けて立ち上がり、カバンを机に置いて中に本を入れる。椅子を机に仕舞い教室を出る。

 自分はそれを確認してから電気を消して教室の扉に鍵を掛けて、後は先生に鍵を返すだけである。

 後ろには何故かまだいる冬暖に不思議に思いながら、何となく居るから前から少し気になっていたことを聞いてみる。こんな事を聞けるのも、役員が同じときだけだからね。


「冬暖さんは何時も本を読んでいるけど。何を読んでいるの」


 何気なく聞いたら普通に答えくれた。


「先まで読んでいたのは『神が呼んだ凡人男子高校生~凡人は異世界の闇と一緒に世界を救います~』と言うものよ」


 長い本のタイトルをすらすらと言う。

 何か物凄く某サイトから出てそうな匂いがするライトノベルだ。

 普通にどんな内容か気になる。自分もライトノベルは読む方なので、異世界転移系だとは分かる。と言うことなのであらすじを聞いてみる。


「それってどんな話なの。王道のテンプレ系? それともコメディ系だと良いのだけど」


 それに、冬暖さんは悩むような仕草を取る。

 コメディ系が好きなんだよね。読むと面白いし、でも悲しい系とかも普通に読むのだけど感情移入をしやすいから普通に泣いちゃんだよね。


「コメディ系のテンプレ、こう言う小説興味有るの」


「まあ、休日に読むぐらいにはあるけど」


「そう、なら……」


 うん、と思いながら続きの言葉を待つ。冬暖さんとは初めてこんなに話をするかも、入学してから体育大会の実行委員になるまで話したことは一度もなかったし、この二ヶ月で妙なファン出来あがあり話すのにもガードがあった。

 冬暖さんが放課後誰かと話している姿は見たことがない、何時も一人である。別に虐められているわけでもないし、ただ自ら話に掛けることはないために友達を作ることをしなかった。引っ込み思案とも言えなくここ最近分かったが伝えることはちゃんと伝えるので違うだろう。ただ休憩時間は何時も本を読んでいる。

 何故こんなに詳しいかと言うとクラスの男が良く言ってくからである。何か、夏休みの前にラブレターを書くとか言っていたけど本当にやるのか望み薄いだと思うのだが。

 そんなことを考えながら冬暖の続きを聞く。


「貴方は異世界に興味がある?」


 その言葉に脳の思考が停止するが、その珍妙な質問に興味を湧いて思考が加速する。

 異世界とは、この世界とは違った世界のこと。平行世界とは違う。簡単に言うと神が本当に存在するとして、とある一神教の天地創造か日本の多神教の天地創造では世界が全く違うわけだ。個別の世界は関わることなく独立に存在している。その二つの世界のどちらか側からもう一つ世界のことを異なる世界と読んで異世界である。

 さて、質問の意味は異世界に興味があるか。表面的に捉えれて答えれば、異世界には興味がある。それは当たり前だろう、未知でいっぱいの世界でロマンに溢れているのだから。

 裏面的には、異世界に行きたいかとなるのかな。答えは、嫌だ。それはライトノベル的な生き方は嫌だし、真っ当に死んでも嫌だし記憶がないなら良いが。まあ裏面的なは憶測だし。

 ただ返答を今も待つ冬暖さんの質問はどういう意図なのかは分からんが正直に答えよう。


「異世界には興味はあるかな。だって自分が読んだことがある異世界物のライトノベルのように素敵な世界であるなら興味はとても出てくるし、異世界が在るってだけでわくわくをさせられる。まあ、だからといって行くとなると話は変わる」


「そう……なら異世界には行きたくないと言うこと」


 その質問には肯定する。それは行くのと読むのとは違う。体験するのと見ることは違う。行ってしまったなら仕方ないが自らの選択では選ばないだろう。これは今の自分であって、未来の自分は知らんけど。

 結論的に言うなら、行きたい理由がない。


「まあ、そうかな。今の全てを擲って、行きたいところではない」


 真面目に答えてた。

 冷たく見る瞳の奥には感情の揺らぎが見えた気がした。

 腕時計をチラッと見ると7時にちょうどなった。

 此方を見つめて冬暖さんは右手を胸に置き心の思いを少し漏らし始める。


「私は――異世界に行きたい。今の全てを擲ってでも。……貴方は私を馬鹿にする? 貴方は下らないと言い捨てる? 貴方は可哀想な者と悲観の目で見る?」


 無機質さがあった声とは違って抑揚が感じられ、自分に問いた。

 それらの言葉にどんな意味が思いが込められているのかは分からない。この二週間弱の関係では到底分かるようなことではない。でも、この世界が面白くないから行きたいと言うなら、自分は言わなければならない。


「それに自分は否定もしない、馬鹿にもしない、可哀想だとも思わない。でも冬暖さんがこの世界がつまらなくて異世界に行きたいという理由なら――君は無知で未熟な子供だよ」


 自分が放った言葉に凄く驚いたような顔をして此方を見つめる。少し刺が有ったかも知れないが別に気にすることではない。

 驚いた顔から何時もの顔に戻って、自分の言葉により考え込んだ。

 夕方の終わりは静寂に包まれて廊下の蛍光灯は二人の為に光続け、返答の時をただ待つ。


「そうかも知れない。私だって、笑うことはある。でも、何処か冷めてしまう。だから、今の環境よりも異世界に求めて憧れて……この先に何れだけ楽しいことがあるとしても、もう、心は待てない。今を楽しむことを求めていてしまい、全てを擲ってでも行くことが出来るならと毎日、そんなことを考えしまう」


 やはり、自分はカッコいい大人ではないから受け入れない。先程、あんなことを言ったのに自分で矛盾な事を言ってしまいそうだ。だって――

 ――可哀想だと思ってしまったから。

 ダメな人間だ。ならやるしかなく、やる以外はないとそれが自分の思いなのだから。教えてやらないといけない、世界を。


「冬暖さんに、これだけは言いたい。……――この世界程ファンタジーな環境はないと、この世界程イカれた奴らは居ないのだと、この世界程物語に溢れた話はないのだと。異世界に希望を抱くことは別にいい。でもこの世界の素晴らしさも知ってほしい、だから君に教えようこの世界の面白さを」


「えっ」


 笑顔を浮かべて差しのべるように手を出す。

 未だ何を言っているか分からないといった様子の彼女を見つめて合間なく続けて言う。


「君が異世界に行くまでに、自分が知る限りの楽しいことを教えよう。異世界でも本当に楽しく生きることが出来るように。……で、とりあえず、明日って空いている?」


 と言うも内容が入っていないようであったが、漸く話を理解した冬暖は真顔で此方を見つめた。それは、何言ってんのと顔をしているが、此方は真面目も真面目な話である。

 彼女も興味が出たのか差し出した手を握り、自分に向かって言った。


「つまらない思ったら直ぐに帰るから」


 その言葉を聞いて、自分は笑らいながら言う。


「――じゃあ、決まりだな、絶対に楽しませるから。それと待ち合わせ時間は一二時で新久駅前で良いか」


「わかったわ。さようなら」


「ああ、じゃあな」


 そう言って、帰るために廊下を自分とは別の方向に行く。タンッタンッと足音を響かせて離れていく程音は小さくなって音が消える。

 そう言えば、なぜ残っていたのだろうか?

 自分は職員室に用事があるので、冬暖さんとは反対方向に歩いて行く。

 


~~次の日~~



 今日の天気予報はお天気お姉さんが言うには『――曇りなし快晴です。一日このまま、ポカポカとした洗濯日和で~す。』

 これなら、彼処にも行けそうだな。と家のリビングの窓からギラギラと輝く太陽を細目でチラッと見て思案をする。

 自分は朝食の食べ終わった食器を洗い、身支度を済ませて、家を後にした。





 家を出てから数十分くらいで駅前に着く。人はまちまちと感じで、流石、田舎と都会が中途半端な町である。

 着いて周りを見て思ったが、そう言えば、細かい指定はしていないけど入り口近くで待つか。そんな広い駅ではないし。

 入り口の前にある誰かも分からない像を隣にして待つことにした。目立つし来る人も分かりやすいだろう。

 今の時刻は一一時五六分。

 左手につけている腕時計を目にして、待ち合わせ時刻まで後四分、ぼんやりと待てば直ぐである。

 と思って前を向くと目の前に冬暖さんが居た。

 何時もと違った感じに見える気がする。何て言うか服装が違うからか幼く見えるような……中学一、二年ぐらいか。でも三、四カ月まではバリバリの中学生だった。……なら関係ないか、いや、服の趣味が今も変わらず着ている感じかこれは。

 それはさて置き、話し掛ける。


「こんにちは? 冬暖さん」


「ええ、こんにちは。…………それで何をするの?」


「何をとは、簡単なことだ。今日はただ遊ぶだけさ、もちろん色々と教えるよ。…………あれ、待って、何故黙って後ろを向き歩き出した。いや、本当に待って」


 必死で呼び止めて漸く止まってくれた。


「何? 昨日言った通りつまらないと帰って」


「まだ何も行っても遊んでもないからね。決めつけは良くない、だからまずは行こう」


「まあ良いわ。……そう言えば貴方の名前は何でした」


 名前って役員をやる時に言ったのだが、それは別に良いが先より人目が痛い。


「酒刻南之矢、一応名前を訊こうか」


「酒刻……聞いたことがあるような……………――はぁー、私は冬暖黎華。これで良い」


 最初の方はゴニョゴニョと小さくて聞こえなかったが、名前の方は聞こえたのでまあ良いだろう。不思議なことにフルネームは初めて聞いたかも知れない、ことは無いか。最初の授業で自己紹介的なことをやったから、忘れていただけか。

 自分は冬暖さんに目的地に歩きながらプランを話そうと言って、人目が痛いから此処から離れる。それに、誰かに見られているような何て言うか。

 気のせいだろか。

 周りをよく見てみも此方を見ている者は、パッと見居ないから、自分はいつの間にか自意識過剰になっていたとは。

 その行動は不思議に見えたか、此方を向いて言う。


「どうしたの、早く行きましょう。酒刻くん。……何その顔は、誰かに見られていると思って探していたの? なら安心しなさい。それは自意識過剰なだけよ。人にそんな感覚は無いから、大自然に生きていたならあり得たかも知れませんが、貴方のような平凡に生きていては無いでしょ」


 あれ、そんなキツイ言葉使っていたっけ。

 もしや、これは、心を開いてくれたのか。

 いや、ただ遠慮が失くなっただけか。


「辛口ありがとう。でも分からないよ? 第六感は有るかも知れないし、君が知らないだけで修羅場をくぐって来たかもよ」


 軽口を叩きながら、今日の予定を軽く伝えて駅前から離れて行く。

 目的な場所に歩きながら予定を伝えていたが、話がそんな続くことはないので、趣味とか休日のことや勉強などのことを繋ぎとして当たり障りない話を緩く訊いたり話たり。冬暖さんも話には乗ってくれるので、何故友達が居ないのか分からない。

 美人で無口でクールとの印象。最初の頃は話し掛ける人だっているのだから、出来そうなものだがそう言う人は見たこと無いな。

 何か理由が有るにしろ無いにしろ。冬暖さんはご飯を食べてきただろうか。一応訊いとくか。


「冬暖さんはご飯を食べてきた? 食べていないなら喫茶店に行く」


「何時ものように食べずに来てしまったから……やし、お金はちゃんと持ってきているわね……行くわ」


 と言うことで予定をずらして、早めなお昼ご飯とする。

 目的の場所とも近いし、自分もちょうど良いので知り合いの喫茶店に行く。

 休日故か、人通りが多く。

 そして人の目線がよく感じる。注目を浴びているのは勿論、自分ではなく冬暖さんの方。

 アイツもよく言っていたが、あまりいい気分にはならないものだ。見られるとは。自分も男達から嫌な目で見られているので、顔を顰めてたくなるが気にしない事が結果一番なのは自明だろう。

 自分は完全に心頭滅却すれば火もまた涼しい状態に入っていたが、冬暖さんは何ともないと自分の友達見たいな態度で言う。


「あら、ごめんなさい。酒刻くんには少し、視線は慣れないものでしょう? 顔とスタイルも良いので、目線を集めまくってしまってね。一緒にいるザッ平凡さんに嫉妬の目線が行ってしまうかもしれまんが、美女と一緒にいるのだから儲けものですから気にすることはありませんよね?」


「はぁー……それを自分で言うか、普通? それに冬暖さんは少し自意識過剰なのでは、此方に向いている目線がいつから自分に向いていたと錯覚しているですか。此方を見ている男は大半は同性愛をする人かも知れない可能性がある。つまりはこっちに向いている可能があるわけだ。とうだぁ……おっと、間違えました。では自称美女さん、喫茶店に着きましたし入りましょぉおがぁあ! ーーなんだよ足を踏むな」


 此方をジト目で見つめて、無言で店内にはいった。

 いくら手加減をしているだろうが踏むのはだめだぞ。それに、此方とら気遣いなど不要よ。此方は冬暖さんレベルのイケメンが友達だからなぁ。アイツの最初の頃も気遣っていた時と同じレベルの下手だ。

 自分が自負を背負う必要なんてない。だからいつも逆に煽り返してやるのが当たり前。そんなで潰れる心など中一の時に消えたわ。

 痛みが残っているがいつまでも扉の前では迷惑なので、自分も入る。

 入ると室内はシックな感じで、コーヒーの匂いがほんのりと香り、店員の人が此方に気づいた。


「ああ、酒刻さん。お久し振りです。……今日はお一人ですか? その、あの、旗薪さんは」


 最後の本心に苦笑い浮かべながら、言う。


「居ないよ。今日は別の人と来た」


「そうですか」


 露骨にがっかりした顔をするが、普段は元気で明るく良い人ではある。でも旗薪のこととなるとこんな風になってしまうのは仕方ないのか?。


「すみません。では席をーー」


「知り合いの者が先ほど入ったと思うですけど」


「ああ、あの可愛い女性の方ですか。……ああ、酒刻さん。中々のやりますね」


 直ぐに笑顔に切り替えて、恋愛話が好きそうなニヤニヤとした顔をしているが、はっきりと断る。


「そう言うのではないですよ。決してですよ。それで何処に居ますか」


「そうなんですか。では彼方の席ですね」


 信用して無さそうだ。しつこく言っても仕方ないのでついていく。

 すると優雅に揺ったりと席に座って、日差しがあたりながら自分のことを忘れたように本を読んでいた。その席に定員が紅茶とサンドウィッチを持ってきていた。

 何か色々と早くないか注文するのも運ぶのも、そんなに時間経っていたけ。

 そんなこと思うも冬暖と同じ席について、自分も軽く食べれるのを注文する。

 呼び出しボタンを押すと店員が来る。まあ、先の店員なのだが。


「ご注文は」


 メモ用紙とペンを持って来たが、何か、顔がニヤニヤしているような気がする。それに気にせず、頼むとメモ用紙に書き込んで。


「ご注文は、フライドポテト一点、ドリンクは緑茶一点でよろしいでしょうか」


「はい」


「では、もうしばらくお待ちくださいませ」


 何も言ってくることもなかったがニヤニヤ顔まだしていた気がする。何がしたいのかわからん。

 それは置いといて、ぼんやりと日向にぼっこをして待っていたら、冬暖さんの方から話し出す。


「それで、この後は何処に行くの」


「ああ、それなら普通に遊ぼうかなと。それで此処に来たわけだし」


「此処? 此処には娯楽施設は無いわよ。それとも頭の方が……」


「段々と遠慮が無くなってきたなぁ。それと頭は可笑しくなって無いからな」


 遠慮がないのは良いことなか、それと悪いことなのか、分からんぬ。

 此処に行かなくても良かったが、挨拶をしていこうかなと思って来ただけだから、来なくても良かったが、絶対に後から何か言ってくるから面倒臭いのだ。


「ただ挨拶に来ただけだよ。これから行くカラオケ店の経営者で此処もその人が経営している一つだからな。それに大抵は此処にいるから今日も居る筈だよ」


 それを、ふ~んと聞きながら右手で本を持って読み、左手ではティカップを持ち紅茶を飲んでいる。あんま興味が無さそうだな。

 自分はソファーの背もたれに背を任せながら注文した物が来るのを待つ。その間は目の前で気にせず本を読む冬暖は絵になるなって思いながら見ているも、此方に興味がないのか、それとも気づいて居ないのか反応をすることはない。

 そう言えば、冬暖さんはカラオケに行ったことは有るかな。


「冬暖さんはカラオケは行ったことはある?」


 そんな質問をしてみるも反応をしない。いや、本のページをペラリとめくった。

 これは完全無視かな。そして先から厨房の方からうるさい。と思っていたら、冬暖さんが口を開く。


「何回は行ったことあるは」


 何の溜めなのか分からんが答えてくれた。

 いや、良かった無視はされないようで、それに行ったことがあるなら歌えそうだね。

 そんなことを思うとふと疑問が沸き起こる。

 冬暖さんの学校生活と性格を鑑見れば、中学生活も一人ぽっい気がする。と言っても中学の三年の最後に転校してきたとか、頭の可笑しい中学校でなければ、友達ぐらいは一人二人はいるもんだろうけど。

 それで何となく気になったので訊いてみる。


「一人でカラオケに行っていたの」


 それに次のページにしようとして伸びていた手が止まり、本に向いていた自然が此方に向く。

 空気は切り詰めたように圧迫される。

 地雷を踏んだかと思ったがそうではなかった。


「嘗めてる? 友達だった者達と一緒に行っていたわよ。ちゃんと聞くだけではなく歌ってもいたわ」


「友達だった? もう違うのか」


「ええ、男関係で揉めたのよ。最後は私がその男をぶん殴って、そのまま卒業をして」


 ワォー、これが三角関係て言うやつか。

 自分が知っているのと違うな、あれは旗薪の時だし、三角関係でもないか。旗薪の方は全く関係していないからなぁあれは。

 起きたのはある男子生徒が好きな女子生徒Aに告白をしたら、

「ごめんなさい。私、好きな人がいるの」と言われて男子生徒が訊いて「それって誰」それに答える女子生徒Aは「旗薪君が好きなの」と言って断られて立ち去る時に、それをこっそりと見ていた者達の一人の女子生徒Bが慌てて来て、女子生徒Aに向かって言う「貴方、旗薪君のことが好きじゃないって言っていたじゃない。あれは嘘なの」それに笑うように言う「そんなのは嘘に決まってるじゃない。好きじゃないフリをして、貴方達の目を騙して一人で勝ち逃げをしようとしていたの。まあ、旗薪君以外は興味がないし、ある人達にはバレバレだったみたいだったから、言って良いかとなったけど。今後一切の告白されないようにしようとしたら聞かれてるとは思わなかった。ああ、つまらない男に付き合うじゃなかったは」それを聞いていた男子生徒は膝から崩れ落ちて中学最後の恋が終わった。そしてそれを隠れて見ていた者には女子生徒Bにラブレターを書いていた下駄箱に出した者がいて絶望の宣告をされた者がいた。

 それを屋上からたまたま自分と旗薪と一緒に見ていたと言う良く分からない状況にはなったことはある。

 いやあれは本当に凄かったし、旗薪君が女子生徒達の戦略と泥々とした関係に心が荒んでいたね。ああ、治すの大変だったな。あの後は友達と一緒に励ましたけ。でも笑えるよなあれは。


「それは大変だね。三角関係的なことで仲が悪くなった女子生徒達を知ってる」


「っえ。……三角関係と言われればそうかも知れないわね。……まあ、貴方が想像するようなことでは無いわね」

 何か驚いたような顔をして、次は考えるように眉のシワを寄せて勝手に納得し、貴方の考えてることではないと訂正をしてきた。何もこっちは分からんが。


「ふ~ん。そうなんだ」


 まあ、良いか。興味もないし、過去のことは過去だし。

 自分が返した返事が気になったのか。訊いてくる。


「興味が無さそうね。自分から訊いてきたなのに」


「あはは、そんなこと無いよ。興味津々さ」


 冗談を言った時に自分が注文したポテトとお茶を持ってきた定員がにこやかな笑顔をして、机に置かれて、戻ろうとする前に話しかける。


「ちょっと待って、そう待ってね。今、オーナーっているかな」


「オーナーですか? 居ますよ」


「じゃあ、呼んできて貰えますか」 


 それに何を勘違いをしたか、青い顔をして慎重に訊いてくる。


「えっ……私何か失礼なことしましたか」


「ああ、そう言うじゃ無いよ。私的なことだし、他の人に聞けば分かる人は分かるからことだから、気にする必要もないからね」


 戸惑いながらもトレーを持って戻っていく。自分はポテトを食べながらオーナーを待っているとやって来る。

 整えられた黒髪に制服の上に付けているエプロンには店のロゴが描かれている。そんなおっさんがオーナーである。


「やあ、こんにちわ。酒刻くんと……彼女さんかな。自分は木江阿多義、ここのオーナーです。今後とも当店をご利用お願いします」


 それに冬暖さんは本を閉じて、名を名乗る。


「ご丁寧に、私は冬暖黎華と酒刻さんとは知り合いです」


「君が冬暖さんの娘さんか。たまに話を聞く君のお父さんからね。……だからか……まあ、それは良いとして、何の用かな。彼女さんを紹介してくれるのかと思ったのけど」


 何だそれは、定員から聞いたのか。違うと言ったがやっぱり、信じていなかったな。


「違うよ。カラオケに行くから伝えとこうと思っただけさ。前にあんたが五月蝿かったからな」


 それで納得した顔をした。


「じゃあ、後で連絡をしておくか。用はそれだけかな、これでも忙しい身なので、お暑い二人の邪魔はしないようにしますか」


「あんたもか。そんなにからかいたいなら、自分の娘にしろや」


「そうするよ。きっと面白い反応するだろうな。ワクワク」


 何がワクワクだ。それと娘さんには心なかで謝っておく。きっと帰ったら面倒臭いことになるが許して。

 用事も終わり、食事も終わったので、支払いを済ませてカラオケに向かうことにする。

 一応、冬暖さんはまだついて来てくれるようだ。まあ、まだ何もやってないしね。




 カラオケ店に着いて、二時間料金で部屋に入った。

 部屋は別に変わったことはない普通の部屋である。

 さて、何を歌おうか。冬暖さんに訊く。


「何を歌う?」


「先に決めて歌って、その間に決めとおくから」


 とのことなので、好きな歌を選曲して、二つ入れて歌うことにする。

 自分はマイクを持ち、曲が流れると歌う。

 その歌声はあまねく人に心響かせる美声となった? それが部屋を響かせた。

 二連続だったので、結構疲れた。


「どうよ。上手いだろう」


「普通じゃない? 次は私が歌うから、後、適当に色々と有名な曲を入れといたから、それに飲み物は緑茶で良かった」


 手際の良さと親切心に思わず絶句してしまった。危ない危ないバレたら、何を言われるか分からない。

 自分はタブレットの選曲を見ながら、歌声に耳を意識して聴く。

 落ち着いた声には切なさを感じさせる。声に思いが良く込められて、気持ちが乗せられている。

 好きな曲なのかな、初めて聴くけど良い曲で、楽しい想い出は、悲しい想い出となって、新たな楽しい想い出を作る。そんな誰でも一度は体験したことが有るのではないか、そんな一瞬の日々を感じさせる歌であった。

 思わず聞き入ってしまった。


「上手いでしょ? 良く競っていたから上手くなってね。貴方とはレベチでしょ」


 普通に言い返せない。そんな会話をしているとまたも曲が流れると深呼吸をしてから歌い出す。

 それを聴きながら、自分も適当に有名どころな入れていると扉がコンコンと叩かれから、「失礼します」と言って入ってくる。

 すると見覚えがない、唐揚げやポテトにサラダに頼んだドリンクが机に置かれる。

 なんとなく、分かったが一応訊いてみる。


「オーナーからです」


 そう言うと部屋を出て戻っていった。

 そんな事も有りながら、休憩を入れつつも二時間料金で歌を合計一八曲も歌った。

 カラオケ店から出て入り口で、冬暖さんに言われる。


「久し振り歌ったから、喉が痛いは。で次はどこに行くの?」


 此方から見るとあんまり変わってないけど。自分は声がらガラガラに成りかけたなのに強い喉。


「ああ、商店街通りの方面かな」


 ああ、喉が痛い。歌いすぎた。

 そんなこんなで三時半と言った時刻になって、カラオケ店からそこそこ歩いて商店街通りに行く。

 お腹はそんなに空いてはいなく、商店街通りにある店に行くことになった。

 たまに自分友達と一緒に学校帰りに行くゲーセンである。

 中はコインゲーム、クーレンゲームに、アーケードと結構豊富にあり、そこそこ大きい店。


「何かやりたい物はある?」


「特にはない」


 訊いてみたが、素っ気なく返された。はて、何かやらかしましたかな。と思ったが、冬暖さんは此方を見てはなく、視線の先にはクーレンゲームがあった。

 その上にはデカデカと大きな文字で、『神が呼んだ凡人男子高校生~凡人は異世界の闇と一緒に世界を救います~』と何処かで見たことある名前があった。

 あれは確か、昨日、冬暖さんが読んでいたライトノベルだったけ。

 となると訊いてみるか。


「あれやりたいの?」


 冬暖さんが見ていたクーレンゲームを指差しながら聴くと。


「貴方もやりたいのね。仕方ないは、一緒にやってあげましょう」


 と腕を引っ張られて行くことになる。

 何かこう言う展開ってもうちょっと会話有ることない? と思いながら着いていく。

 財布から五百円を取り出して、早速やり始めた。

 それを見守っていると、全然上手く行かなくて、めっちゃ盛り上がっている。

 なんか見ているだけでは折角きた意味はないので、自分も隣でやることにした。

 アームを動かして、獣人の人形を狙って降ろすとしっかりと掴み、持ち上げる。それで元あった高さに戻る時にガタンと揺れて落ちる。これは本当に何なんだろうか、あの衝撃がなければ絶対にいけただろう。アームもアームで弱いし。

 そんな事を思いながら、百円を投入していく。

 七回目辺りで、「あっ」と声が聞こえた。それが聞こえた方に向くと間違えて降ろしてしまった。


「マジか」


 そして冬暖さんの方を向くと財布の中の小銭に入れを見て、固まっている。小銭が無くなったのかな。

 そしてぶつぶつと何か言っている。


「これは一万円を両替をするべきなのか。そうすれば、百回は出来る。そうすれば、レイアちゃんが手にいれる。でも百回全部を失敗すれば、無となって消える? それなら本を買うべきなのではないか。そうよそうよ、ああ、ばからしぃ…………限定版のレイアちゃん!? 限定版つまりは今しかない? これはやるべきなのでは、やるしかないのでは……そうよね。行こう」


 何か取り憑かれたように早く口でぶつぶつと言っていたが、結局何か覚悟を決めた様子である。

 ガタンとクーレンゲームから音がした。

 見てみると先まであった人形がなかった。つまりは手にいれた。


「ラッキー」


 落ちた獣人の人形を取ると、信じられないと言った顔で此方を見てくる。それも数秒で変わり羨ましいそうな顔である。

 自分はついつい、言った言葉が冬暖さんに火を付けてしまった。


「これいる? 別に欲しかったわけでもないし」


「要らないは、私は私の力でレイアちゃんを手に入れるは。見てなさい、私は実力で手に入れるはラッキーなんて不正だわ」


 不正ではないと思うものだが。

 絶対に手に入れると決意をして、一万円を持って両替機の方に向かった。

 そして、一万円を五百円に替えてやってきた。

 そのまま、三千円が機械に呑み込まれた時に、神の手を持つ店員が手助けをして、無事に手にいれた。


「実力で手に入れるじゃないの? それともあれが実力」


「五月蝿いわ。手にいれれば此方の勝ちよ」


 何に勝ったか、是非とも聞きたいたが、止めとくことにする。

 レイアちゃんという獣人の女の子を抱きしめながら嬉しそうに歩く。

 そんな姿に微笑ましく見る人や、可愛いと見る人や、オタク集団らしき者達は何処か悟りを開いていそうな顔をしている。まあ、嫌な視線も有るわけだが無視で良いだろう。何故なら、自分も同じレイアと言う人形を持っているからである。嫉妬の目が感じるぜ?

 そのまま、冬暖さんの要望の本屋に行くことになった。

 本屋に着くと腕を引っ張られて、ライトノベルのコーナーに連れてれて『神が呼んだ勇者は凡人男子高校生だった~凡人が異世界の闇と共存して勇者となる~』を全巻買えと命令口調で言われた。


「昼のことは忘れて上げるは」


 昼のとはあれだろうか。喫茶店前であったことだろう。

 自分は大人しく買うことにした。面白そうだとは思ったし。

 そうして自分は全十二巻を買った。お財布の中が二千円となった。多めに持ってきて良かった。

 そうして、重たい本を持って、夕暮れ時になった空を目に自分は今日のラストを締める場所に向かう。


「何処に行くの?」


「遊亥神社だよ。夜景を最後に見ようかなと」


 長い長い階段を登り、空は暗く暗くなって、自分の体は悲鳴をあげ始めた。

 小山の上にある神社は綺麗に手入れがされている。


「ここはねぇ。この街を作る時に建てた神社らしく、何の為に建てたかは分からないけど。この神社には新規への成功と子供達の幸せに関するご利益が有るらしい。この神社には土地の神様が奉納されて、その神様は古くからこの土地で伝えられている土地神だとか言われているけど神って凄いだね。」


「ええ、そうね。神様って凄いでしょうね」


「後、この街を作った人達はあるテーマの元に作ったらしい、それは自然と都会が同一に存在する街だって」


 そんなことを話ながら、隠れスポットの所に行く。

 神社の敷地内にある場所で、ちゃんと入って良い場所だ。でも知っている人は滅多に話さない。

 何とも言えない自然と都会が生み出す光。それが綺麗で仕方ない。

 自分は冬暖さんに目を瞑ってもらい、誘導をして絶好場所に移動する。


「冬暖さん、目を開いて良いよ。これが今日の目的だよ」


 そして、見せた景色は。


「綺麗」


 その言葉を自然と呟かせた。

 自分もその景色を楽しむ。

 夜へと染まった空には数えきれないほどの星星の輝きに夜空は照らされて、下を見れば大地には人類の発展により手にいれた光は無機質に建てられた建物や街灯により発せられ暗闇を払おうと照らし続けていく。

 大地を埋め尽くす文明の光と原初から輝き続ける星の光が暗闇を消し去ろう輝いている。それらは同じ光で別の煌きめ、自然と人工の宝石みたいのようで、世界がまるで宝石箱に思えた。

 そんな夜。と言うには少し早い時間、今日の月はより一段と輝いていていた。


「綺麗だろう。世界にはこんな絶景がある」


「そうね。始めてこんな綺麗な景色は見たわ」


 都会であるが東京都程ではなく、自然があると言え田舎程でもない。そんな中途半端と思えた街が見え方を変える瞬間である。

 自分も始めて見た時の夜はあの光景で埋め尽くされていく。それ程に心引かれた。


「冬暖さん。今日は楽しかったかい」


 景色にあった視線を冬暖さんに向けて、軽い感じに訊く。本当の気持ちと裏腹に。

 自分はただ一言が欲しい。その一言が聞ければ、今日と言う一日が大切の日々となる。


「久し振りにこんなに遊んだ」


 そう言いながら、縫いぐるみを見ながら強く抱きしめて、微笑んだ。


「今日の最後に見た景色は絶景と言って過言じゃない。……正直に言うと……楽しかったわ。久し振り気持ちを込めて歌った歌。始めてクーレンゲームで手にいれた縫いぐるみはとても可愛いく。この街に一五年と住んでいて知らなかった景色」


 一日の出来事を話して、縫いぐるみに向いていた顔は此方を向く。


「貴方との会話は楽しかったは。どれだけ、嫌みなことをしても、出会いから変わらずに真っ向から言葉で返されること何てなかった。それが少しだけ楽しく感じ初めた。……でも、何処か、心の奥底で落ち着いているところが、ほんの僅かに楽しみを感じていた心を冷めさせてしまい。つまらなく感じてしまうようになってしまった」


「……」


 本音。冬暖さんは心の底で思っていたことを吐き出した。

 ただ自分は見つめ返すことしか出来ずに、沈黙が続いてしまう。答えないといけないと分かっているのに、心が言葉が思考がぐちゃぐちゃとして纏まらない。

 ただ、冬暖さんが本音で答えたように自分も吐き出すことにする。

 ――思いを吐き出しようとした時に、自分が好きな景色が目先に映った。

 星星の輝きと科学の輝きは宝石のように煌めく。それに昔の自分は綺麗だと思って、その感情を慌てながらもお母さんとお父さんに伝えようとして目を向けると二人は自分を見て笑いあっていた。その時は、何故、笑顔を浮かべているかは分からなかったが、ただ好きだと感じた。

 その光が生み出す煌めきに、自分は好きなことに似た光を感じさせた。

 だから、行動するのだ。何時だって、その為に努力だって何だってする。

 自分の中から曖昧とした思いや思考は快晴のように綺麗さっぱりと消えて確りと見る。

 迷い無く自分の思いに答えるように思考が働き言葉が出る。


「自分はこの景色と同じぐらい、好きなことがあるんだ。それは笑うことで、それを見ること。だから、冬暖さんが今は笑えなくても、後から笑えるように過去を今を未来を楽しもう。この世界は昨日言った通り、ファンタジーに溢れたこの世界にはイカれた人類による物語が繰り広げられている。こんな世界がつまらなく存在するわけがないんだ。なら、ファンタジーに染まって、世界にイカれて、物語を描き読もう。冬暖さんが異世界に行くと言うならば、行くまでにこの世界を楽しもう。君が知ることはこの世界のほんの僅かなことなんだから、今なら特別に自分が教えちゃうよ。だから笑おうぜ」


「……」


 最高な笑みを浮かべながら、伝えられる思いの全てを言葉として出して冬暖さんの思いに自分なり答える。

 何を言っているか分からないと言った顔をして、自分を見つめてくる。


「そんなのは無理なのよ。この世界は何処までも現実で、魔法や他種族に神様とか魔物と言った非現実は排他されるだけの世界。こんな辛く苦しく悲しさに満ち溢れる世界に、どんな幸せが在るって言うの? どうやって笑えって言うの!」


 深く深くに彼女ですら気づいていなかっただろう感情を発露させる。


「笑えるか、親友には裏切られ、周りからは除け者とされて、そうなった原因は笑い、幸せそうに生きるこんな世界に、どうやって笑っていうの!!! 笑うことなんて、出来ない。あれらと一緒になるなんて嫌だ。そんなになるなら死んだほうが良い」


 ああ、そんなに辛く、苦しく、悲しいことがあればそうなってしまうのだろう。

 だから、なのだ。

 伝える為に自分は口を開く。


「だからだよ。だから――笑おう。狂ったように、イカれたよに、辛く、苦しく、悲しい出来事があろうと、何時しかはそんな事を忘れて、嬉しいことに、幸せに、喜びに、明日に笑うのだから。だから、辛く苦しく悲しいこと何って忘れよう。こんな言葉は無責任なのかも知れない、例えそうであったとしても、忘れて、家族との会話とかで、友達との遊びで、最愛の人との時間で笑うように。他に、ちょっとしたラッキーが起きた時、朝の星座占いが一位の時、宿願の成就した時、嬉しくなるような時でも」


「そんなのは強い人間でしか出来な――」


「――笑うんだよ。今日の為に、明日の為に、過去の為に。辛く苦しく悲しいことなんて何時しかはどうでも良くなにり忘れるのだから。だから、笑うんだ。……そうして人は成長して、熟していくだよ。今日を生きることが出来たなら明日も生きれるさ。そして何時かは毎日生きて笑っていられるようにね」


 こんなのは下らない戯れ言なのかも知れない、何処まで理想なのかも知れない。人の生とは一難去ってまた一難とやって来るのだから、綺麗に回らなくても今日を明日を過去をと楽しく生きようとすれば回って行くのだろう。


「見てよ。この景色は綺麗だろう?」


「ええ、そうね……綺麗だわ」


 自分はきらびやかに景色に見せる。


「こう言うので良いんだよ。綺麗な事や美味しい食べ物や本気で取り掛かった事やで良いのさ、心の赴くままに行動すれば自然と笑っているさ」


「こんなので?」


 無理する必要はない、笑いとは心の余裕から生まれるんだから。


「良いのさ。何となくで行こうぜ」


 冬暖さんは何処かぼんやりとした思いで、確かに思った事を言う。


「じゃあ、これから色々と楽しいことを教えてよね」


 自分はただその言葉を待っていた。一切の抵抗など無く。


「それは、モチのロン。これからは友達だな」


 そう言うと右手を差し出して握手を求める。


「此方こそよろしく」


 そう言うと差し出した右手を握られて友好の握手をする。

 数秒と経つと離して、冬暖さんが疑問に思ったように言う。


「モチのロンって古くない? 貴方って、年を偽ってそうね。本当は何歳なの?」


「嫌々、していないよそんなことは、ちゃんとピチピチの男子高校生ですよ」


 そう返したから「やっぱり、何処か古いような?」と頭を捻らせている。でも何処か笑顔を浮かべた。

 星星の原始の光と人類が生み出した人工の光が二人を照らして、二つの光が輝きだした。

 二つの光こそ、求めた光なのだと胸の奥底で思った。

 こうして自分は冬暖さんと友達となって、一緒に遊んで楽しいことを教え行くことになった。

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