表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/24

お父さん

 話を少し戻そう。

み空さんと出会ってから、1ヶ月が経った頃だろうか。僕とみ空さん、ヒロちゃんは仲良く楽しく過ごしていた。

 精神病院で楽しくと言うのも変な話をではあるが、閉鎖病棟による外界からのしがらみから解放された僕は、人生を楽しむ道を進んでいた。

 ビッグブックの読み合わせや、病棟プログラムでのスポーツや塗り絵にカラオケ、休養度外出を利用した散歩など。


 また、この頃に一つの変化が訪れる。

同室に入院されているYさん。歳は自分の父親くらいだろうか、優しい笑顔が印象的な人と仲良く話したり、一緒に喫煙したりしていた。

 み空さんとYさんと3人で話し込む事も多かったのだが、この時少し戸惑う事態が起こってしまった。


 新しく入院して来た人が居るのだが、その人もYさんと同じ苗字だったのだ。更に、女性にも同じYさんが居る。

 デイルームで名前を呼べば、3人が振り返る。非常に煩わしい。


 僕とみ空さんは、この状況を打破しようと、名前で呼んでみたり渾名を付けてみたりとしてみたが、どうにもしっくり来ない。

 そこで、女性は苗字で、新しく入った方は渾名で、笑顔のYさんを『お父さん』と呼ぶ事にした。


 父親を亡くしていたみ空さんと、父親が恋しかった僕は、お父さんと呼べる事に喜んだ。

急性期病棟では3ヶ月の入院で満期となり、退院させられるのだが、僕とお父さんは入院日が近かった事もあり、より一層仲が良くなって行った。

 今思えば、父親の愛に飢えていたのだろう。

赤の他人をお父さんと呼び、慕っていたのだから…


 入院から2ヶ月ほどたったある日、僕とみ空さんは2人で外出届を出し、病院の近所のカラオケボックスへと来ていた。

 2人でカラオケを楽しんだ帰り、み空さんから不意に告白をされた。

 自分も鈍感では無い。流石に良い雰囲気になっていた事は自覚していたが、なんと言っても精神病院の入院患者だ。 更に、僕はバツ2になったばかりである。

 み空さんの告白は素直に嬉しかったが、その場では返事をする事は出来なかった。

が、結局は付き合う事となり、2人での回復を目指していった。


 それからは一層、回復の為に努力した。

AAのミーティングに通ったり、ビッグブックの読み合わせをしたり、息抜きに遊んだり仲のいい仲間たちと外食したり。


 この頃、僕は日記を付ける事を日課にしていた。日々の気付きや自身のトラウマ、悩み等を書き出す為だ。

 これが功を奏したのか、自分の悩みを打ち明け、共に話し合い、解決策を練っていく事で僕の気持ちは晴れていったのだ。


と、この時は思っていた…

誤字脱字や表現の指摘が御座いましたらコメントお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ