番外編:100点満点。ある男の物語
安らかな最期だった。
「また妻に会える。お前たち、ありがとうな。」
娘と息子、3人の孫達に見守られながら旅立った。そこに妻の姿は無い。
思い返せば、ごくごく平凡な毎日だった。だが、傍には妻が居たし、娘も息子も立派に育った。3人の孫も可愛い。
妻に先立たれた事はショックではあったが、それも今日までだ。
私はそっと瞼を閉じる。
軽く息を吸い込み、ふぅーと全ての息を出す。幸福感に包まれて、俺は空へと昇って行った…
そこは、白い部屋だった。広いようで狭いような。
フワフワしたような硬いような。
不思議な不思議な場所だった。
辺りを見渡すと、懐かしい人物が二人顔を並べていた。
一人は直ぐに分かった。妻だ。
だが、もう一人は思い出せない。年老いているように見えるが幼くも見える。男性の様だが女性の様でもある。よく知っている人だし、何度もお世話になった人。色々なお願いをした人であり、俺達二人を見守ってくれた人。だが、誰かは思い出せない。
妻の手を取り、二人は微笑み合う。
「また会えたね。」妻は言った。
隣の人が口を開く。
「お帰り。100点満点だったよ。」
その人は、安らかな笑顔で言った。
あぁ、思い出した。私はこの人にお願いしたのだった。今度は平凡な人生が送りたい。と。
「平凡な人生でした。ですが、妻と過ごした日々は充実していて、楽しい人生でもありました。ありがとう御座いました、神様。」
安らかな顔で、神は微笑む。
「楽しんでもらえたようだね。次はどんなのが良いかな?また二人で決めなさい。」
私と妻は、二人で相談し合った。
「神様、二人で話し合いました。今度は、ジェットコースターのような、少し激しい感じが良いです。」
少し驚いたような顔で、神は笑った。
「そうか。今度は激しい感じだね?二人で楽しんでおいで。」
俺と妻はお互いに見つめ合い、微笑んだ。
「ワクワクするね!」
神に連れられ、雲の上から街を見下ろす。
「さて、どの人が良いかね?」
小さな僕は辺りを見回す。
ある家族が目に入った。
「神様、僕は、あのお母さんを喜ばせたいよ!」
神は微笑む。
「そうか。あの人だね?今度はちょっとだけスリルがあるから、楽しんでおいで。彼女は先に行ってるから、ちゃんと見つけるんだよ?楽しんだらまた戻っておいで。」
1979年5月10日。僕は生まれた。
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