最後のプライド
僕は再び閉鎖病棟へとやって来た。
三度目の入院は、軽装保護室へと入れられた。この部屋はトイレの付いた個室部屋なのだが、外から鍵がかけられる。
つまり、軟禁されてしまうのだ。
個室で一人、考える。これからの事、今までの事。どうすれば良いか。どうすれば良かったか。
僕は最後のプライドを捨てる事に決めた。
軽装保護は解除され、僕は少し自由になった。
更に具合が良くなった頃、休養度外出が認められた僕は、法テラスへと向かった。
債務整理中の借金は、自己破産する事にした。
弁護士と話し合い、手続きする。
そして、もう一つ。最後のプライドを捨てる為、社長に電話する。数日後、社長は会いに来てくれ話しをした。
「このままでは会社に迷惑を掛け続けるし、自分の回復の為にもなりません。今までお世話になりました。」
病気が治ったら、またうちに来い。いつでも応援しているからな!と言い残し、僕と社長は固い握手をした。
17歳でこの仕事を始めて17年。人生の半分を注ぎ込んだ仕事を辞め、僕は無職になった。
数日後、僕は市役所の保護課を訪れる。
担当ケースワーカーに全てを伝え、僕は生活保護を受ける事になった。
晴れやかな気分だ。全てのプライドを捨て、僕は一人になった。多くの人を傷つけ、多くの人に迷惑を掛けた。
これからはひっそり暮らそう。もう一度人生をやり直そうと決意し、僕は回復に専念した。
大きく揺れる振り子のように、良くなったり悪くなったり。順調な時は勿論あった。具合が悪い時も多々あった。
僕はまた、閉鎖病棟へと自ら入院して行った。
四度目の入院。今度こそは治してやるぞと決意し、日々を送った。
沈んだまま上がらない気持ち。強い希死念慮。
死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死んでしまいたい。死ねば楽になる。死ねば楽になれる。
休養度外出に出た僕は、自宅へと歩いた。
薬箱から安定剤と睡眠導入剤を取り出し、ありったけを掌に出す。片手に錠剤の山が出来上がった。
水で流し込み、再び病院へと向かった。
病院を少し通り過ぎ、大きな酒屋へと入る。目当ては度数96%のウォッカだ。が、この店には置いて無かった。
フラフラとした足取りで、もう一つの酒屋に向かう。そこに売っていた目当ての物を買い、フラフラと公園を目指す。高台にある公園に着くと、見晴らしの良い展望台へと上がる。
ウォッカの蓋を開け、口元へと運ぶ…
この時、躊躇した。AAに通い、多くのアルコール依存症の人達と出会い、自らの意思で断酒して一年半。最後の最後でコレを飲む事に後悔した。
ゴクゴクとウォッカを流し込む。懐かしい香りが鼻に抜けた瞬間、喉に強烈な痛みが走る。
焼けるような痛みが襲う。吐きそうになるが、鼻を摘み、更に流し込んで行った。
「ああ〜!!」大きく叫んだ。辺りを見回すと、散歩中だったのか、一人の男性と目が合った。
「なんだ貴様!文句あるのか?ブン殴るぞ!!」と、理不尽に暴れる僕。大声で叫んだからか、ウォッカのせいなのか、酷く喉が痛み、強烈な喉の渇きに襲われた。
「お茶でも買いに行くか」呂律の回らない口で独り言を言いながら、フラフラとコンビニに向かった。と思う。この頃にはオーバードーズした薬とラッパ飲みしたウォッカによる酔いで、意識は朦朧としていた。
コンビニ前の道路を渡ろうと、左右を確認する。ここから少しだけ、記憶は無い…
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