もう一度
「お待たせ。お互い大変だったね。」
み空さんがやって来た。
すぐさま入院に至った経緯や、今の状況を語るみ空さん。薬の影響か少し呂律が回っていない。更にはテンションが高く、酷く興奮している模様だ。
「それよりも、顔どうしたの??」僕は尋ねる。
み空さんの顔には大きな痣があり、痛々しい。
聞く所によると、昨日の夕食後、仲の良いメンバーで小部屋になっている所で話し合おうと集まった所、一人の男性が座っていたらしい。
そこで、その男性に皆んなで話をしたいから席を譲って頂けないかと聞いた所、いきなり掴み掛かられて馬乗りにされ、殴られたらしい。
すぐさまスタッフや他の入院患者によって引き剥がされ、その男性は保護室送りに。み空さんは救急病院へと向かい、治療を受けたそうだ。
とんでもない話である。自他を傷付ける可能性のある患者は、保護室や軽装保護室が用意されているはずであり、その様な患者を放置する事は病院側の怠慢ではないかと声を荒げる僕に対し、み空さんは言った。
「確かに暴力を受けはしたけど、自分達にも落ち度はあった訳だし、感情をコントロール出来なかったその人も可愛そうな人なのよ。」と。
その人にどういった処置が下されたかは分からない。本人や家族からの謝罪や賠償は無く、うやむやのまま終わった。
午後からの休養度外出で一緒に荷物を取りに行く事を約束し、病棟に帰って行った。
適切な処置を怠っていた病院側に対して頭に来ていた僕は、すぐさま病棟の看護師長を呼び出し抗議したのだが、病棟同士の連絡は無く、知らされていない様子だった。
午後の休養度外出。14時から16時半までと決められているのだが、この時間にみ空さんの荷物を取りに行く為、二人でバスを乗り継いでみ空さんの自宅に向かった。
二人で暮らしていた部屋には別れる直前にみ空さんと買いに行ったベッドとソファが置かれていて、模様替えがされていた。
荷物を纏めてタクシーを呼び、病院へと戻った。
数日後、僕よりも早く、み空さんの退院が決まった。
あの事件が引き金となり、トラウマを抱えてしまったみ空さんは病棟が怖くなってしまったようだった。退院すると決めはしたが、一人で居るのは心細いからついて来てくれと頼まれ、僕はみ空さんの退院に付き添って送る事にした。
スタッフに外泊届を出し、み空さんと合流する。
タクシーは勿体ないからと、バスで帰る事にし、お腹の空いた僕達はパスタ屋で夕食を摂る事にした。
食べ終わって外に出た時には、辺りは暗くなっていた。バス停に行ってみるも次のバスまで時間がかなりある。
ゆっくり話ながら歩いて帰ろうと決まり、荷物を抱えた僕達は歩き出した。途中で疲れたらタクシーを呼ぼうと言っていたのだが、結局2時間程歩き、み空さんの家へと到着した。
道中の会話では、お互いの悪かった所を反省し、お互いの良かった所を褒め合い、これからどうしたいか、どうするのが楽に生きて行けるのかを語り合った。
その日、再び二人で回復しようと決意した。
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