嘘
引き篭もってしまったみ空さん。その環境を作ってしまっている僕。
このままでは、み空さんも僕も、共倒れしてしまうのは火を見るよりも明らかだ。
家に帰るのも嫌になっていった僕は、再びギャンブルへと走って行ってしまう。
その始まりは、繁盛期に入って残業が続いていたある日、前工程の遅れから仕事が無くなり、早上がりになった時の事だった。
そのまま帰るのも嫌だったし、だからと言って行く宛ても無い僕は、低レートのパチンコでも久々に打ってみようと思い、通勤路の途中のパチンコ屋に入って行った。
古く寂れた店内は、設置台数も少なく人も少ない。店内を見回すも古い機種しか無いのだが、ある機種に目が止まった。
そして数時間後。何故か20円スロットに座っている僕は、煙草を吹かしながらビッグボーナスを消化していた。
当たりは軽く、メダルはドンドンと増え続け、気付けば二箱近く出ている。凡そ3万円相当だろうか。
チラリと時計を見ると、時刻は午後7時。いつもなら残業が終わり、帰路に着く時間だ。
早く帰らないと。そうは思うが当たりは軽い。打てば当たる、当たれば増える、増えれば回る、回れば時間は過ぎて行く。
200ゲーム回れば辞めて帰ろう。当たる。
100ゲーム回して辞めよう。当たらない。
150ゲームになれば辞めよう。当たらない。
200ゲームになれば辞めよう。途中で当たる。
辞めようと思えば当たるのではなく、当たるまで回すを繰り返していた。
時刻は8時を回り、帰宅時間を過ぎていた。どうしようどうしようと悩んでいた時、携帯電話に着信が来る。み空さんからだった。一気に冷や汗が流れる。ヤバイ。どうしよう。ヤバイ。
着信が切れて直ぐ、今度はメールが届いた。帰宅しない事を心配する内容だった。
どうしようと悩んだが、僕は返信を打つ。
「突発な残業で、もうちょっと遅くなる!10時までには帰るから待ってて!」
嘘を付いてしまった。バレたらヤバイ。怒られる。呆れられる。どうしようどうしよう。
胃が痛くなりながらも辞められないスロット。
僕は泣きそうな顔で回し続けていた。
10時を回った頃、ようやく辞めてバイクを走らせ、人気の少ない路肩に停め、み空さんに電話する。
「今終わったよ〜!疲れた!遅くなってごめんね!またコンビニで弁当買って、直ぐ帰るよ!」
罪悪感を抱えながら、いつもの道を帰って行く。
僕の財布には、現金が二万円増えていた。
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