第15話騎士として
俺がレイスを斬ると同時に、ルードさんと戦っていた男が声を上げてもがいていた。
「ルードさん!どうしたんですか?」
「わからない。突然苦しみ始めた。」
「ガァァァァ、グウウウウ。」
男は床を転がりながら苦しみ続けている。
さらに男の体からは変な黒い煙が出ていて、見た目てきにも不気味だな。
「レインさん、レイスは完全に倒れたみたいです。」
ジェイドが声をかけてきた。
やば!
すっかり男の行動に意識を持っていかれてたな。
レイスは元の白骨死体に戻って崩れていた。
この人が何者かわかりそうな物は何かあるだろうか。
俺は、ひとまずもがいている男はルードさんに任せて、白骨死体に近づいて身元のわかりそうなものを探した。
死体には、探した結果指輪ぐらいしか、身元の探すのに役立ちそうなものはなかった。
仕方ない、これを持ち帰って王様にでも聞いてみるしかないか。
俺は死体の調査を終わらせ、再び男を見るとまだもがいていた。
「ルードさん、何が起きているんですか?」
「わからない。用心するしかないな。」
それからしばらくして、男はうつ伏せの状態のまま動かなくなった。
「ルードさん。」
「待て。」
「ルードさん、レインさん、どうですか?」
「死んだか?」
「レド、そんな簡単な訳ないわよ。」
「不気味です。」
全員の意見は一致していて、この男に何があったにしても、まだ生きているはずだ。
「グゥ。」
やはり、男は生きていてゆっくりと立ち上がった。
俺達はすぐに臨戦態勢をとる。
「待ってくれ、敵対意思は今はない。」
!!
あの無口だった奴が喋った。
「信用できないな。」
「それはそうだな。これなら少しは信じてもらえるか?」
男は持っていた剣を無造作に地面に投げ捨てた。
そして両手を上に上げて、抵抗しない姿勢を見せた。
「今更何のつもりだ?」
「それはごもっともなんだが、あまり時間がなさそうだから現状を説明させてもらうよ。」
男はそれから説明を始めた。
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another side イワン
私はあの時から意識がありながら、体を操られていた。
邪神はどうやら悪趣味らしく、私が苦しんでいるのを知って楽しんでいるようだ。
私は、邪神の封印を解くために、ヘイブル王城の襲撃を行なわされた。
結果は地下への道筋をつくるだけで、すぐに撤退をしていった。
その後すぐに、邪神の指示なのかボロンが魔獣を操り、ルーガイ、リメアが魔獣の混乱に乗じて王城の後宮へと向かった。
これは、私の感なんだがあの2人も私と同じ立場のような気がするな。
二度目の襲撃はあっという間に成功をしてしまい、城内も外もほとんど制圧できた。
ボロンは、飽きたのか魔獣を残していつの間にかいなくなっていた。
あの2人も姿を消していた。
私の体は後始末か本来の目的なのか、後宮を歩き回っていた。
そして2人の女を担いで移動を開始した。
1人は途中でおろし、もう1人を担いで地下へと降りていった。
地下には不思議な文様の扉があり、その扉を女性の手で開ける。
中には不思議な玉が保管されていた。
それを女の手を使い破壊する。
「アアアアアアアアア!」
女は叫んであっという間に白骨化してしまった。
その後は、彼らが訪れここに来るまで待っているだけだった。
私は、剣の腕がいい男と斬り合っていた時だった。
体にいきなり強烈な斬撃を感じた。
その結果情けなくも、叫びながらのたうちまわる事となった。
しかし、そのおかげで今は私の意思で行動ができていた。
今は私の意思で行動できているだけで、後どれくらい大丈夫なのかわからないので急いで情報を渡すことにした。
まずは、邪神の完全復活のために封印を解いていること。
その封印は後2つあり、アストラ王城の地下と元神殿総本山。
次に邪神が狙っているのは、元神殿総本山でボロンと呼ばれている奴が担当する予定だ。
ボロンは、魔獣を操ったり自分の体をバラバラにして動かせるから注意が必要だ。
最後に邪神は狭間の世界にいて、生き方はすまないが不明だ。
そこには残りの眷属で、ライケル、ルーガイ、リメアの三名がいる。
ライケルは、転移ができるので注意が必要だ。
残りの2人は、私は詳しく知らないため何も教えられない。
これが、私が話せる全てだ。
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「お前が本当のことを言っているか、わからないな。」
「それは、信じてもらうしかないな。それと最後に君に全力で斬り合って欲しいんだ。」
「何故だ?」
「私は元騎士だったんだ。大切な方の為の命をこうも辱められては屈辱なんだよ。せめて最後は騎士として死にたいんだ。」
「随分自分勝手だな。」
「なんせ私は本来とっくに死んでいるはずだからね。」
「ルードさん、俺にやらせてください。」
ルードさんと男の会話にレドが入っていった。
「君は?」
「お前が虐殺した村の生き残りだ。」
「・・・・・・そうか。辛い思いをさせたね。」
「謝るな!貴様に謝られても死んだ家族は戻ってこないんだよ!」
「そうだな。私は元王国騎士イワンだ。貴殿の名はなんだ。」
男、イワンはどうやら最後の相手にレドを選んだらしく、名乗りを上げ一騎打ちを始めようとした。
「俺は、レドだ!貴様を殺して家族の無念を晴らす。」
言い終わると同時にレドはイワンに斬りかかる。
イワンはそれを拾った剣で牽制をして、戦いは互角だった。
「レド君、気持ちが前に出すぎているよ。」
「うるさい!」
「手が雑だよ。そんなんじゃ私に一撃を入れられないよ。」
「黙れ!」
「隙だらけだよ。」
イワンは、レドの盾をかわして器用にレドを攻撃していた。
レドは怒りのためか攻撃が単調になっている。
イワンは、そんなレドにため息をつくと、蹴りで牽制をして姿が一瞬で消えた。
「レド君、守りたいなら過去より今を取りなさい。」
声をした方をみると、イワンはライナの首に剣を当てていた。
「くぅ!」
「その悔しさを忘れないようにな。」
ライナの首から剣を離して、レドに近づき、
「君の怒りはわかるよ。でも過去に囚われていたら、きっと私みたいになってしまうから、気をつけなさい。さてもう時期危ないだろうから次が最後だね。」
イワンはレドに対して剣を構えて、
「レド君、君が私の一撃を防がなければ、私はこの場の全員を殺すからね。」
そう言ってレドへと斬りかかる。
「くっ!」
レドは、どうやら少しは冷静になれたらしく、しっかりと相手を見て、接近してきたところを逆に盾で剣を防ぎ胴体に剣を突き刺した。
「ぐは!お見事。いい一撃だよ。」
イワンはレドにそう言って倒れた。
「・・・・・・」
レドは何も言わずに上を見ている。
「あり・が・とう。レ・ド君、さ・・いごに・・き・しと・・し・・・てし・・・ね・・る」
イワンはそのまま息を引き取った。