第6話王城突入
ヘイブル王城へ急いで向かっているが、やはり嫌な予想は当たっていたようだ。
王城に近づくに連れて魔獣の足跡も増えていっていた。
「ルードさん!やっぱり魔獣は王城を目指していますよ!」
「わかってる。なんだってこんな時にこんな異常が起きてる。」
本来、魔獣は獣だけあり知性的な行動はとれない。
まして、他の魔獣と行動を共にする事すらないはずなのに、今は全ての魔獣が王城へと向かったらしき足跡があった。
「こんな数の魔獣が、襲いかかってきたら王城が危ないですね。」
「本来なら休息をとって、万全の状態で行きたがったが贅沢を言ってられないな。」
それから俺とルードさんは、話し合って本来は途中で宿を取るはずだったが、それをやめて王城へ向かう事に決めた。
一度馬車を止めて、荷台にいる全員の意見を聞いておくとにした。
「みんな、予定変更したいから話を聞いてくれ。」
俺はそういうと、今までルードさんと話していた事を説明していった。
それからみんなの意見を聞いていくと、反対意見はなく全員が賛成してくれた。
疲れを最小限にするために、御者の担当は全員が交代でしていく事になった。
それからは、少しでも早くヘイブル王城に着くように、スピードを上げて馬車を走らせた。
ヘイブル王城に近づいていくと、遠くからでも煙が見えている。
「レイン兄さん!あれまずいですよね。」
「ああ、王城が魔獣に襲われているんだろう。急がないと手遅れになるな。」
俺は荷台にいるルードさんに、声をかけてこの事を伝えた。
「レイン、グレン、御者を代われ。俺がやろう。お前達はすぐに動けるよう休んでおけ。」
そういってルードさんは、俺とグレンに代わって御者をし始めた。
荷台に入ると、
「レインどんな状態なの。」
「王城から煙が上がっているみたいだ。今はルードさんが速度を上げて向かってくれてるよ。俺たちはすぐに動けるよう休んでおくようにだと。」
「そう、わかったわ。」
リリーが外の様子が気になるようで、俺とそんな会話をした。
それからは、各自がすぐに戦闘にはいっても、大丈夫なように準備を整えた。
太陽が西に傾いてきた時、ようやくヘイブル王城が近くに見えてきた。
ヘイブル王城に近づけば近づくほどに、やはり魔獣の死骸が増えていっていた。
「全員衝撃に備えておけ。このまま城門を突破する。」
俺たちがヘイブル王城の様子を気にしていると、ルードさんがいきなりそういってきた。
全員、しゃがんで衝撃の準備をすると、
ガツン!
ルードさんが言った通り、上下に強い衝撃がきた。
なんとか飛ばずにすんで、周りを確認してみると、全員なんとか衝撃に耐えられたようだった。
今度はいきなり馬車が停止をした。
「ルードさん!どうしたんですか?」
「馬車はここまでしか無理だ!全員戦闘準備しろ。」
ルードさんがそれだけ伝えて、御者の場所から飛び降りていった。
「リリー、武器はあるの?」
「大丈夫よ。弓を持っているわ。」
「あと全員は、大丈夫だな。急いで降りてルードさんを援護しよう。」
「はい!」
全員が返事をして、荷台から順番に降りていった。
外の光景は、かなり地獄であった。
俺たちの現在位置は、王城の城下町だがあちらこちらで魔獣が暴れている。
場所によっては、兵士が魔獣と互角に戦っているところもあるが、中には魔獣に蹂躙されてしまっている場所もあった。
「レイン!半分に分かれて行動するぞ!」
「了解です!メンバーはどう分かれますか?」
「俺の方には、ジェイド、ギギ、レン、ルナ、バルドが付いてきてくれ!」
「わかりました!」
ルードさんがそういうと、呼ばれたメンバーはすぐに集まった。
「俺たちはこのまま城下町の魔獣を掃討する。レイン達は王城に行ってくれ。」
「了解です!リリー、ミリー、ユフィー、グレン、レド、ライナ一緒にきてくれ!」
「はい!」
ルードさんの指示により、俺たちは急いで王城へと向かう事になった。
途中で魔獣が何体か襲ってきたが、ルードさんとの訓練と比べれば、全然弱く簡単に倒すことができた。
それにしても、この魔獣達はいったい何なんだろうか?
こうも目的を持って行動することができるのだろうか?
そんな事を考えていると、
「レイン兄さん!危ないです!」
グレンに横から飛びつかれ、そのまま倒れると俺の立っていた場所に斬撃が通って行った。
「何だ?今のはどこから?」
「レイン、大丈夫?」
「ああ、グレンのおかげで助かったよ。」
「いえ、レイン兄さん。」
グレンのおかげで、怪我せずすんだが、今のは一体どこから仕掛けてきたんだ?
「レインさん!王城の二階をみてください!」
ユフィーに言われてその場所をみると、そこには1人の男とその男に抱き上げられた少女だろうか?がいた。
「あいつは誰だ?それに担いでいるのは?」
そう聞こうと振り向くと、
「マリア!」
ユフィーがそう叫んで1人で飛び出してしまった。
「!!まて、ユフィー!」
捕まえようとしたが、ユフィーの方が早く掴み損ねてしまった。
「くそ!みんなユフィーを追いかけるよ。」
「わかったわ。」
「了解です。」
「了解。」
「わかったよ!」
「了解したわ。」
全員が返事をして、後をついてきてくれた。
それからは何とかユフィーを見失わずに、後をついて行くのがやっとだったが、王城付近には魔獣がいなくて助かった。
「はあ、はあ、ユフィーってこんな速かったのか。」
「ふう、兎獣人だからかしら?」
「いや、レイン兄さんにリリー姉さん違いますよ。多分これがユフィーの固有の“恩恵”なんだと思います。」
「俺も、そう思う。」
「お兄ちゃん、私も!」
「そうね、兎獣人より狼獣人の方が本来は速いはずよね。」
俺の質問にみんなが答えてくれた。
なるほどこれが、ユフィーの固有スキルか!
しかし、今は深く考えている暇はなかった。
何とか王城に入れたけど、ユフィーは先に行ってしまっているのだから、急いで追わないとだ。