終話和解
「これが儂とユーリが知っているガイルの大筋の過去じゃ、言い訳はしない、間接的とはいえレイン君の両親を死ぬ運命に合わせたのは儂じゃ。」
サイアスさんは俺に頭を下げてきた。
しかし、俺にはまだ納得できていない事がいくつかあるので質問する事にした。
「頭を上げてください。父さん達が死んだのは、サイアスさんのせいじゃないです。それに預言とは違って俺は邪神の器にはならなかった。それがすべてです。」
「本当にすまない。」
「今はそれより聞いておきたい事があるんですけど?」
「構わない聞いてくれ。」
「まずは、ユーリさんが村にいた本当の理由って。」
「うん?私かい?想像通りガイルさんに協力すると同時にサイアスさんに連絡をとっていたんだよ。」
やっぱりか、それなら定期的に村を出て行っていた訳がわかった。
「次にルードさんは?」
「俺のことか。俺はガイルに弟子入りしてから俺がレインにした訓練をされて鍛えられ、あの一件で弟子を卒業、その後は呼び名を師匠から呼び捨てになったんだ。村を作り始めてからは各地の情報集めに旅をしていて時期をみては村に戻ってたんだ。」
「そうだったんですね。じゃあ、俺に剣を教えてくれたのも。」
「理由の一つにガイルが後遺症でダメだったのも確かにあるが、純粋に弟子が欲しかった方が強いな。」
ルードさんはそういってきた。
となると最後はどうしても気になるのは、
「サイアスさん、何故今まで父さんと会おうとしなかったんですか。」
「・・・・・・簡単なことじゃ。もしものときは、儂はガイルを助けるためにレイン君、君を殺そうと思っていたからじゃ。なまじ直接会えば情がわいてできなくなるかなら。」
「レインお兄ちゃん、お爺ちゃん嘘ついてるよ。」
俺に抱きついたまま、今まで静かにしていたミリーが話しかけてきた。
「ミリー、わかるのか?」
「なんとなくだけど。」
俺はミリーの頭をなでながら違う質問をした。
「サイアスさんは、部屋に入ってきてから種族を問わずに好かれるところも似ているって言ってたけどどういう事?」
「ガイルは、魔族と人族両方に仲のいいものがいたからな。」
「けど俺父さんが魔族と一緒にいるとこ見た事ないけど?」
「それは、今は詳しくいえないんじゃ。」
「じゃあ最後に何故俺に会いにきてくれたんですか?」
「確かめるためじゃ。」
「俺の事をですか?」
「・・・・・・そうじゃ。もし預言通りであるならば儂がとめるためにじゃ。」
「もう!お爺ちゃんはまた嘘ついてるの!」
またミリーがそう言って怒り出した。
「お爺ちゃんは、心の中ではレインお兄ちゃんをすごく心配していたの!」
「お嬢ちゃん儂は。」
「また嘘言おうとしてるの!だってお爺ちゃん、レインお兄ちゃんが無事だと知って全て投げ出して急いできたほどなの!」
「お嬢ちゃん、みえているのか?」
「なんとなくわかるの!感じるの!」
ミリーの固有スキルなのだろうか?
しかし教会では“恩恵”の固有は無かったって言ってたよな。
「ふぅー。困ったもんじゃ。」
「サイアスさん?」
「あまり言い訳しても、お嬢ちゃんに怒られてしまうからの。」
「嘘つきは怒るの!」
「レイン君、ガイルに会わなかったのは立派だったからじゃ。」
「父さんが?」
「そうじゃ。儂は預言に恐怖して原因を消そうとした。しかし、ガイルはそれに立ち向かい見事に変えた。それが眩しすぎた。」
たぶん父さんは、俺が知らないだけで相当悩んだんだろうな。
けれど俺にはそんな所を一つも見せずにいつもふざけてたからな。
そう考えるとやっぱり父さんはすごかったんだ。
「正直儂はレイン君に会うべきかどうか悩んでいる間に、今回の事が起きてしまったんじゃ。だから今度は迷わずきたんじゃ。」
まだ疑問が少し残っているが、納得はできた。
それに父さんとサイアスさんは性格が似ていた。
だって村にいたとき、俺がおじいちゃんやおばあちゃんの話をすると、決まってごまかしていたからな。
今考えると、会いたいけど会いにいけなかったんだな。
「サイアスさん、俺は会えてよかったと思います。父さんの過去を知れてどれだけ大事にされてたかよくわかりました。これからは、爺ちゃんて呼んでいいですか?」
「レイン君、ありがとう。レイン君の好きなように呼んでくれ。」
こうして俺は、父さんと母さんを失ったが、爺ちゃんはできた。
父さん、母さん、生きている間に伝える事が出来なかったけど、俺を産んでくれて、育ててくれて、守ってくれて本当にありがとう。
2人の子供として恥ずかしくない生き方をこれからもするよ。
次回はこの章の番外編でレインが寝ている間の事にする予定です。