第2話祖父
「ようやく目が覚めたのねレイン。」
目が覚めると目の前にはリリーがいた。
「リリー?なんでここにいるんだ?」
俺はまだ夢でも見ているのだろうか?
リリーは確かアストラ地方に里帰りしてたはずだから、ここにいるはずないのだが。
「それはね、ここの教会の神父様から連絡がきてたからよ。」
「へ?教会から?」
「そうよ、私のお爺様と教会で仲がいいのよ。」
なんだかリリーの爺さんは、不思議な人みたいだな。
それにしても、連絡を受けてからここに来るまでかなり早くないか?
そうか俺は一週間ぐらい寝てたのか!
俺がそう考えていると、急にリリーが抱きついてきた。
「リリー?」
「心配したのよ!村が襲われた時も無事だったのか本当にわからなかったし、今もついさっきまで寝たままで目も開けなくて、このまま死んじゃうんじゃないかとおもったのよ!」
「ごめん。心配かけて。」
俺とリリーはしばらく互いを抱きしめあった。
「あー、お前らいいか?」
ルードさんが気まずそうに話しかけてきた。
俺とリリーは慌てて互いに離れてルードさんのほうを見た。
するとそこには、ジェイド達とユーリさん、それに誰か知らない人が立っていた。
「やあ!久しぶりだねレイン君。」
ユーリさんはそう挨拶をしてきた。
「ユーリさんどうしてここに?」
「私は付き添いだよ。用があるのはこちらの方だよ。」
そういって隣にいた男の人を前にしてきた。
「えーと、あなたは?」
「本当にあいつに似ているな。」
俺に誰かの面影を重ねているのか、とても懐かしそうに見つめてきた。
「っと!すまないな、初めましてだな。儂はサイアス、サイアス・アストレアだ。教会の大司教をしておる。そしてレイン君、君の父ガイルの親でもある。まあ君にとっては祖父にあたるものだよ。」
へっ?
俺の祖父にあたる人が、教会の大司教をしているなんてまったく知らなかた。
父さんは過去の事を全く話してくれなかったし、前にリリーが里帰りする時に一度俺が祖父や祖母の話をした時も、結局は母さんにはぐらかされてしまったからな。
それに家名があるって事は貴族なのだろうか?
「すみません。俺両親から何も聞いてなくて。」
「それは、いいんだ。儂が悪かったからな。しかしレイン君には辛い思いをさせてしまった。」
そういってサイアスさんが頭をさげてきた。
多分村の襲撃のことを指しているのだろうけど、あれはどうしようもないことだったから謝る必要はないのに。
「いえ、村の事は仕方ないですから気にしないでください。」
「その事じゃないんだ!」
「それ以外に何かあるんですか?」
「あいつは、ガイルはレイン君に何もはなしていないのか?」
父さんが俺に何か真面目な話をする事はほとんどなかったし、何も思い当たる事がない。
するとユーリさんが、
「ガイルさんは、そういう人だったから多分いってないですよ。」
一体父さんは何を秘密にしていたのだろうか?
「きっとこれは、儂が話すべき事なんだろうな。」
サイアスさんは、なんか1人で納得をしている。
「レイン君、君には伝えなきゃいけないな。すまないが部外者は外に出ていてもらっていいかな?」
「私はレインの婚約者だから、部外者じゃないです。」
「俺たちはレインさんの奴隷という事になっているので、部屋の外にいます。」
リリーとジェイドはそれぞれ答えジェイド達は部屋から出て行こうとしたが、
「私はレインお兄ちゃんと一緒にいます!」
ミリーだけは俺のところに来てしまった。
「ミリー!ダメだ、迷惑になるだろ。」
「いや!絶対一緒にいるの!」
ジェイドがなんとか連れ出そうとしたが、ミリーは頑なにそれを拒否して俺の近くを離れようとしなかった。
「ジェイド君だっけ?」
「はい、そうですが?」
「ミリーちゃんは、私が見ておくから大丈夫よ。」
「しかし。」
「今はミリーちゃんの好きにさせてあげて。」
ミリーとジェイドのやりとりを見て、リリーがそういってその場を収めてくれた。
俺が寝ている間に何かあったのだろうか?
「すみません、リリーさん。ミリーをお願いします。」
ジェイドはリリーにお辞儀をして部屋を後にした。
「種族を問わずに好かれるところも、息子ににているのだな。」
サイアスさんが何か小さな声で言っていたが俺には聞き取れなかった。
「さて、レイン君。これから君の両親の過去について話していこう。全て聴き終わった後、レイン君が儂をどうしようと全て受け入れるつもりだ。」
サイアスさんはそう言って俺の両親の話を始めてくれた。