第8話本性
俺とルードさんは、レジーナに二人掛かりで挑んでいた。
「もう!ちょこまかとうざいなの!」
状況は五分五分だった。
俺とルードさんで、左右からレジーナに接近して斬りかかろうとすると、レジーナは鞭でそれを牽制してくる。
さらには飛び道具などを使ったり、目くらましを使っても、全て鞭ではたき落としたり、全方位にでたらめに鞭を振るわれて無駄に終わっていた。
「くそ!レイン何か考えがあるか?」
「無茶言わないでくださいよ。接近できないのに思いつくわけないじゃないですか。」
「だよな。それに奴の固有スキルがわからないから、うまく接近できても危険だしな。」
そう、俺たちはまだレジーナの固有スキルを一度も見ていない。
そのために接近しようとはしているが、本当に接近しない様にも注意していた。
「まったく面倒なの!」
レジーナはそう言うと、俺に突撃をしながら鞭を振るってきた。
俺はそれを、クリムゾンとダークネスでそれぞれを受け流していった。
そして俺にレジーナが攻撃を集中しているところで、ルードさんが背後から近づき斬りかかるが、レジーナはその場から横に動き、片方の鞭をルードさんに振り回避をする。
「ちっ!これも防ぐのかよ。」
「そんなのバレバレなの。」
今度はルードさんに攻撃を集中していった。
レジーナは、鞭で首と足を狙って振り、ルードさんはそれを剣と足の裏で防ぐ。
次は右手の鞭のみを連続で振り、ときどき隙をついて左手の鞭で追撃をしていた。
俺はレジーナの背後へ投げナイフを投げつける。
レジーナはすぐさま左手の鞭でナイフを叩き落とした。
俺はそのままレジーナに突撃を仕掛けると、レジーナはルードさんへの攻撃をやめて、両方の鞭で俺の突撃を防いだ。
俺はすぐに引き、ルードさんへと近づいた。
「ルードさんこのままじゃラチが明かないですよ。」
「わかってるよ。なんとかどっちか片方の鞭を使えなくできれば、少しは勝機が見えてくるんだが。」
「せめて固有スキルが分かればいいんですけど。」
「試しに同時に近づいてみるか。」
俺とルードさんは、今まで交互に仕掛けていたのを、一度同時に仕掛けることにした。
「うおおお!」
「はあああ!」
振るわれる鞭を受け流しながら接近していき、あと少しで届くところまで二人で近づくと、
「残念だったなの!」
受け流したはずの鞭が背後から、俺とルードさんに襲いかかってきた。
その攻撃をかわせずに、受けてしまい二人してレジーナに接近できず戻されてしまった。
「くそ!完全に鞭をかわしたはずなのに。」
「あれが奴の固有スキルか。」
ルードさんがそういってきた。
さっき接近した時に鞭が、ありえない動きをしていたがそれがそうなのだろうか。
だとしても、どういう仕組みなのかわからない以上、安心できるものではない。
「レイン!もう一度仕掛けるぞ!」
「ルードさん!けどさっきみたいになりますよ?」
「いや、俺の想像通りならやれるかもしれない。」
どうやらルードさんは、さっきの攻撃で気づいた事があるらしい。
ならば言われた通りやってみるしかない。
「行くぞレイン!」
「はい!」
再び同時に仕掛けると、さっきと同じ様にあと少しのところで、鞭の動きが突然変化して、ありえない方向からの攻撃をしてきた。
「うぐぅ。」
「ちっ!」
俺は直撃を受け、ルードさんはかろうじて攻撃をかわして、後ろに下がった。
「何度やっても同じなの!諦めて私に殺されろなの!」
「いや、それはどうかな?」
「?どういう事なの?」
するとレジーナの頬に切り傷ができていて、そこから血が垂れていた。
レジーナは手で触れて驚いた顔をしていた。
「ルードさんどういう事なんですか?」
俺が聞くとルードさんは説明してくれた。
どうやらレジーナの固有スキルは、自動で自分に危険があると、武器でそれを回避しようとするものらしく、剣などでは動きに制限があるから、柔軟な鞭を使っているのかもしれないらしい。
あとはそれさえ分かれば、同時にまでは耐えられても、3つ目には対応ができなくなり傷をつける事が可能のはずだから、さっきは同時に仕掛ける時に鞭がありえない動きをしたタイミングで、ナイフを投げて切り傷を負わせられたという事だった。
これで奴に対して勝機が見えてきたと思っていると、
「ありえないなの!虫ケラどもが私を傷つけたなの!ムカつくなの!許さないなの!」
レジーナは何か小さな声で呟き続けていた。
俺とルードさんは、何事かと思い武器を構えて防御の構えをした。
しばらく俯いて呟き続けていたレジーナは、突然ガバッと顔をあげると、
「てめぇら、よくも傷つけやがったな、肉片1つ残さずぶっ殺してやる!」
そう叫びながら恐ろしい速度で鞭を振るいながら突撃をしてきた。