第7話救出
あの手紙を受け取った後、俺は1人先に街はずれの時計台のところまできていた。
中の様子を見ておきたいが、空いているドアからは、下へと続く階段が見えるだけだった。
一応いつでも敵が攻撃してきても、大丈夫なように武器錬成で双剣を手元にだしておいた。
それにしても、この古い時計台は何のためにここにあるのだろうか。
街の中央ならばわかるのだけれど、こんな街はずれだとあまりに微妙だ。
何か他に役割でもあるのだろうか?
ひとまずは時計台の中に1人で入っていくのは危険そうだから、全員が合流するまで待機をしておくことにした。
それから10分もしないうちに全員が時計台に集まってきた。
「レイン状況はどんな感じだ?」
「それがあの時計台、ドアの先が階段で下に続いているのしかわからないです。」
「手紙の内容があれだったから、様子がわからない以上危険だから1人で入らず正解だな。」
ルードさんも俺と考えが同じようだった。
あの手紙を読んで、グレンの救出を急いでしまえば相手の思うつぼだから、戦力をそろえてから行動をするのが安全だ。
「全員聞け。これから中に入るメンバーと、ここで待機するメンバーにわけるぞ。」
「ルードさん、何故全員で中に入るのはダメなんですか?」
ルードさんの言葉にジェイドは、グレンを早く助けたいらしく何故そんな事をするのか質問をした。
「それは一度に全員が入って、罠にかかったら救出できなくなるだろ?」
「そういう事ですか。すみません。」
まあ獣人は一度仲間だと思うと、決して見捨てる事がないから、今の状況だと助けようと必死になってしまうのだろう。
「それじゃ中に入るメンバーは、俺とレイン、レド、ユフィー、バルドの5人だ。後はここで待機していてくれ。」
それからルードさんは待機のメンバーにも指示を出していき、その集団のリーダーとしてジェイドにかなり細かい
指示をしていた。
どうやら待機メンバーもその指示を聞いて納得したようで、特に嫌がる事なく指示通りにすることに同意していた。
「それじゃ、行動開始といこうか。」
そうして俺たちは、時計台の中に入っていった。
やはりドアの先はすぐに下に降りる螺旋階段で、ルードさんを先頭にゆっくりと降りていった。
階段はかなりの長さがあり、下に降りきるまでだいぶ時間がかかった。
そして完全に下に降りきると、そこからは降りた正面にまっすぐ続く道があった。
俺たちは、階段の時と同様に慎重に進んでいった。
しばらくすると、正面に広い空間が広がっていた。
そしてその場所の中心にグレンがいた。
「グレン!」
「まて!バルド。」
グレンの姿を見たバルドは、急いでグレンに近づこうとして走り出そうとしたのを、急いでルードさんが止めた。
「何故とめるんですか?グレンがいるんですよ!」
「落ち着け!ここにはグレンだけじゃなく、ここに誘い出したやつもいるだろ。」
ルードさんはバルドを抑えながら、状況の説明をしていた。
それを聞いてようやくバルドが冷静さを取り戻したらしく、
「すみません。ルードさん。」
「気にするな。気持ちはわかるからな。」
そんなやりとりをしていると、
「ようやく来たなの?もう少し遅かったらこれを壊すところだったなの。」
いつこの場に来たのかゴスロリな服を着た女が、グレンの頭を踏みつけながら俺たちに話しかけてきた。
「お前やっぱりあの時のやつだな?」
「器久しぶりなの。まだ生きてたなの。」
今目の前にいる女は間違いなく俺の村を襲ってきた連中の1人だ。
「あの方が別の器を手に入れた以上、あなたの存在は非常に邪魔なの。」
「お前の目的は俺なら、今すぐグレンをこっちに渡せよ。」
「器あなたは交渉が下手くそなの。まあいいなの。これはあなたがいると知ったから使った餌なの。いらないから返すなの。」
女はそう言うとグレンをこっちに投げてきた。
それを受け止め、グレンの様子を確認すると、何かで叩かれたのか、全身に打撲の跡ができていた。
「返してやったからあなたはここで私と戦うなの。」
女はさらにそう付け足してきた。
俺としてはいっこうに構わない。
なんせこいつは俺の両親や村人たちの仇なのだから、ここで絶対に殺してやる。
俺は感情が高ぶり少し冷静さを失いかけていると、
「落ち着けレイン。」
ルードさんに止められた。
「まずはグレンをここから逃がすのが先だろ。感情的になりすぎたら勝てるものも勝てなくなるぞ。」
そうだった。
この女と戦う前に、傷だらけなグレンをここから逃がすのが先だった。
それから急いでレド、ユフィー、バルドの三人にグレンを連れて地上に出るように指示をだし、俺とルードさんがこの場に残ることになった。
直ぐに行動に移すと意外なことに女は、地上に向かうレドたちは無視をして俺たちに話しかけてきた。
「聞きたいことが少しあるなの。見逃した代わりに答えるなの。ここと同じ様な場所を知らないかなの。」
この女は何をいっているんだ?
仮に知っていたって教えるわけないだろうに。
俺はそう考えていた。
「なんだあなた達は何も知らないなの。全くもって無駄だったなの。器だから知っていると思ったのに役立たずなの!」
そう言いながら勝手に怒りだした。
「もういいなの!今直ぐ死ねなの!」
女は両手に鞭を持ってこちらへと近づきながら、
「私はレジーナなの。器におまけ、あなた達が最後に知る名前なの。」
そして女、レジーナが俺とルードさんに向かってきた。