第9話決断
訓練が開始してからは、毎日朝はルードさんが後ろから追いかけてくるのを、必死に全員で逃げたり、何人かで足止めをしてみたりしながら過ごし、昼からはルードさん対全員で模擬戦をしたり、互いに一対一でやったりして過ごした。
夜は一回ルードさんが村に行き、調味料などを手に入れてきてくれたので、ライナとユフィーを中心に料理を作っていった。
そんな生活も気がつけば最終日の昼になっていた。
「うりゃー」
バルドが拳を武器にルードさんに襲いかかる。
ルードさんはそれを剣を使わずにかわしていく。
「バルドさがれ!俺がいく。」
レドが片手剣と盾を構えて、ルードさんとバルドの間に入りバルドを下がらせる。
「いい判断だな!」
レドが構えた盾にルードさんの長剣がぶつかった。
あそこでバルドがさがってなかったら、この一撃をくらっているところだった。
「守ってるだけじ勝てないぞレド!」
ルードさんの連撃によってレドは防御に集中するしかなかった。
「レドお兄ちゃん、援護するの!」
「ルナもいくよ!」
ルードさんに向けてミリーとルナが、弓による遠距離攻撃を仕掛けていく。
ルードさんは飛んでくる矢を、長剣で全部叩き落としていく。
その隙にレドがさがり、かわりにジェイドとレンがルードさんに攻撃を仕掛ける。
ジェイドは槍による中距離からの攻撃で、レンは大鎌による接近戦をしていく。
「いい連携になってきたじゃないか。」
ルードさんはそれらを楽しそうに笑いながら、槍は攻撃をしてきた時にかわして、穂先のやや下の部分を掴み引き寄せ蹴りを放つとジェイドはかわせずに後方に飛んだ。
大鎌は振り下ろされるのに合わせ、大鎌とレンの間に入り、そのまま前方に投げ飛ばした。
そこにルードさんは追撃をしようと近づいたところに、
「させないわ。」
ユフィーが投げナイフで牽制をかけていく。
ルードさんはそれらを長剣で弾いて進んでくる。
「これはどう?」
今度はよこからライナが鞭を振る。
「横からか!」
ルードさんはそれを立ち止まることでかわし、追撃のタイミングを逃したため、ライナに向かう。
そして一歩進んだところで、
「ズドン!!」
ルードさんが立っていたところに、丸太が正面から飛び出してぶつかった。
「ほう?グレンの仕業か。」
完全にぶつかったと思ったが、ルードさんは蹴りで丸太を止めていた。
「ギギ、今しかない。」
「了解です!レインの兄貴。」
俺とギギでルードさんに攻撃を仕掛けていく。
まず俺が双剣の接近戦で、ルードさんを動けないよう連撃で足止めをして、隙をみてギギがルードさんの死角から大剣で斬りかかる。
ルードさんは俺の攻撃を長剣でさばきながら、ギギの死角からの攻撃は蹴りで対応していた。
「なかなかだが、まだまだだな!」
ルードさんはそう告げると、俺との間合いを一気に詰めてきた。
俺は思わず後ろに下がってしまい、その瞬間腕を掴まれギギのいる所に投げ飛ばされた。
「よし!今日はここまでにしよう。」
ルードさんによって模擬戦は終了になった。
遠距離組は怪我はなかったが、そのかわり中距離と近距離組はバルドとレドが軽傷で残りはレンも含めてボコボコにされた。
それからはテントで男女別に体の汗を拭いてからあらためて集合になった。
「約束の一週間が過ぎたがお前達の覚悟はどうだ?」
獣人達は全員で少し話し合いをした後に、代表としてジェイドがいった。
「私たちは、全員ついて行きたいと考えています。」
「俺とレインについてくれば最悪死ぬこともあるぞ?」
「それでもです!この一週間ルードさんとレインさんは、私達を奴隷としてではなく、家族として扱ってくれた。私達獣人は家族の絆を何より大切にしています。そういう扱いをして頂いた以上、私達もあなた達を家族と思っています。だからこそどんな未来が待っていようと共に歩もうとみんなで決めました。」
ジェイドはしっかりとそう答え、他も全員がその言葉に頷いていた。
「そうか。ならばこれからもよろしくな!」
「はい!」
全員が返事を返した。
「これからの事を話すんだが、その前にレインお前に確認したいことがある。」
「ルードさん、何ですか?」
「村を襲った連中の女の特徴覚えてるか?」
「えーと、確かきてた服にやたらフリフリしたのがついていて、腰に鞭が二本あったはずです。」
「やはりか。」
ルードさんは、俺の話を聞くと一人頷いていた。
「ルードさんどうしたんですか?」
「いやな、村に買い物に行った時に聞いたんだがな、別の村が襲われたらしくてな、その襲った者の特徴が変な服装と鞭を二本持っていたらしいんだ。」
まさか!
奴らは未だにそんな事をしているのか。
「ただ変な事に重傷者はいても、死人はいなくただ暴れて去ったらしい。」
「それって何が目的だったんでしょうか?」
「わからないから、まずはその場所に行って調べてみないかと思ってな。」
確かにこれは、俺とルードさんの目的に近づけるチャンスだ。
そこで俺たちは話し合いをして必要な物を揃えてからその村に向かう事に決まった。