第4話購入
奴隷商人のいる場所へ俺とルードさんは向かった。
俺のいた村には、奴隷という存在がなかったため言葉程度しか奴隷については知らなかった。
ルードさんに説明されても、あまり理解できていないのが本当のところだ。
ただわかっている事は、言葉は通じるってくらいだった。
「レイン、これから奴隷商人と交渉するから、見て覚えておけよ。」
「え?今回だけじゃないんですか?」
「場合によるからな。」
「そうですか。」
あれか!ルードさんと俺とで別々になった後でのためなのかな。
そうこうしているうちに、奴隷商人が俺たちの前に現れた。
「どうも初めまして。私は奴隷商をしていますジルバといいます。本日はどのような奴隷をお求めでしょうか?」
「ここはどんな奴隷をあつかっている?」
「有力な固有を持つものから、成人前まで全て揃っておりますよ。」
「ならば成人前で時期になる者をみせてくれ。」
「かしこまりました。しばしお待ちください。」
あれ?
固有スキルがわかっている成人を見なくていいのだろうか?
俺は疑問に思いたずねてみると、
「料理の固有スキル持ちをわざわざ買うと、かなり高い値段になってしまうし、料理の一般スキルは誰でも覚えられる。ならば安くなっている成人前を見た方がいい。」
なるほどそういう事情があるから成人前なのか!
俺がルードさんの説明に納得していると奴隷商人のジルバさんが戻ってきた。
「お待たせしました。人数が多いので少々場所が変わります。申し訳ありませんがついてきていただいてもよろしいでしょうか?」
「ああ、かまわない。」
俺とルードさんはジルバさんの後についていった。
しばらくしてかなり広い部屋に案内され、そこには20人くらいの男女が一列に並んでいた。
驚く事に全員頭に獣の耳が付いているので種族は獣人のようだった。
どうやらルードさんも驚いているらしく、ジルバさんに質問をした。
「これは変だな、何故こんなに成人前の者達が獣人ばかりになっているんだ?」
「それに関しましては、後ほど説明させていただきます。」
どうやら何か訳ありのようだ。
ルードさんは気を取り直したようで、
「少しこいつらを見せてもらうぞ。レインお前も一緒に見るぞ。」
「俺もですか?」
「そうだ!人を見る目を鍛えられる。」
そう言いルードさんは俺を連れて、獣人を一人一人見て行く事になった。
「順番に見ていくか。まずは一番右から、質問するからそれに答えて欲しい。いいか?」
獣人達は全員頷いた。
ルードさんの質問は、どれもこれも正直意味のわからないものが多かった。
例えば、将来何を成したいのか?とか、自分の種族をどうおもうのか?だったり、自分が一番尊敬している人物は誰か?などだった。
俺としては、簡単に料理できるか聞けばいいだけだと思うんだけどな。
ただその質問に対する答えで半分の10人が気になることを言っていた。
どう気になったのかと言うと一部例をあげると、自分の種族は非力で無力だという答えだったり、尊敬するのは身を呈して守ってくれた両親と答えたあたりだ。
まるで俺の村と同じ事が起きたのか、錯覚するような感じだった。
そうこうしているうちに、ルードさんによる質問は全て終わった。
「よし、もういいな。すまないが前の部屋でこいつと相談して決めていいか?」
「もちろんでございます。ではどうぞ。」
ジルバさんの案内で最初の部屋に戻った。
そこでジルバさんは、さっき後で話すと言っていた、何故獣人ばかりなのかを説明してくれた。
「実は数日前に獣人達の村が襲われる事件があったんです。犯人は一人だったらしいのですが、それが異常な程強くほとんどのものが一撃のもとに倒されてしまったらしいのです。その時に村で唯一の人族の成人したばかりの男の子が、連れ去られてしまったらしいのですが。まあそんな事があったせいでどうしようも無くなった獣人達が身売りをしたため今の状態になってしまったのです。正直私の方も養うのが辛い状態なので、一人でも多く優しく誠実な人に、託してあげたい所なんです。」
そんな事情があったのか。
まてよ!
成人したばかりの男の子が連れ去られたって、ひょっとして俺と同じなのか?
まあ、今の段階だとわからないから頭の片隅にでも覚えておこう。
隣のルードさんを見ると何やら考え事をしているらしい。
「ルードさん?」
「!ああ、すまないちょっとな。事情は了解した。ちなみに一人いくらになる?」
ルードさんが金額を聞いた。
この世界ではお金は、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、黒金貨となっていてこの順に高くなっていく。
銅貨10枚が銀貨1枚、銀貨10枚が金貨1枚、金貨1000枚が白金貨1枚、白金貨1000枚が黒金貨1枚、という風になっている。
「男女共通で一人金貨40枚です。」
「そうか、レイン気になったやつはいたか?」
「ルードさん、それが半分くらいいるんですが?」
「ほう?どいつだ?」
俺はルードさんに質問に対して、気になる事を返した獣人を教えて言った。
ルードさんは、俺の話を聞くと少し目を閉じ考えた後で、
「どうやらちゃんと理解はしていないが、俺の目的は達成したみたいだ。レイン俺のした質問は、仲間意識がどれぐらい強いのかと、向上心があるかを見極めるためのものだったんだ。お前は俺と同じ奴らをちゃんと選べた。よくやったな!」
そう言いながらルードさんは俺の頭を乱暴に撫でまわしてきた。
「ジルバ、すまないがこいつが言った10人を売ってくれないか?」
「!!よろしいので?」
「ああ、かまわない金貨400枚だったな?」
ルードさんが金貨を出そうとすると、
「いえ、それだけ購入頂けるのであれば350枚でよろしいです。その代わりどうかよろしくお願いします。」
ジルバさんはそう言って、頭を下げてきた。
ルードさんはそれを了承して、さらに奴隷契約の内容を変えて主人を絶対に裏切らない事だけにした。
それには、ジルバさんは涙を流しながら感謝をしていた。
結局当初の目的の人数よりかなり多くなってしまったが無事に購入できた。
主人はやはり全員俺にされた。
その後全員分の装備などを買い揃えてから止まってた宿に戻り大部屋に変更して貰ってから、部屋でそれぞれの自己紹介をする事になった。




