第20話 不死の運命
「うわ!何だこれ?」
「これはすごいですわね。」
俺とレステアはロウが進んだ跡を辿っていっていた。
そして、しばらくすると目の前には槍で全身を串刺しにされたまま動けない男と、短槍を構えているロウがいた。
「ロウ!いったい何でこうなったんだ?」
「あれ?レインさんにレステアさん。そっちの相手はどうしたんですか?」
「ああ、こっちはレステアのおかげで片付いたよ。」
「そうですか。俺の方は見ての通り動きを封じましたよ。」
まあ、それは見ればわかるさ。
それにしても死ねないっていうのはこういう時には最悪だな。
普通なら出血多量で死ねるはずなのに、それができずに痛みの中この状態は拷問だな。
「ロウ、これはどうなっているんだ?」
「ああ、これは俺の恩恵ですよ。簡単に言えば俺のは1つのものからそれを真似た複製を大量に作り出せるんで、相手が無限に回復するならいっそ突き刺して固定してしまえばいいと思いついてこんな状態にしました。」
うん、ロウはなんていうか容赦ないな!
「ううう、殺してくれ。もう嫌だ。痛い、苦しい、助けてくれ。」
やっぱり、男はどうやら限界を超えてしまっているらしく、これは完全に壊れてしまっているな。
「レインさん、お願い彼を。」
レステアもさすがにこの状態には同情しているらしく、前の男と同様にするように頼んできた。
「ああ、わかった。」
俺はその意見に賛成なので、すぐにレステアの血のついた剣で男を突き刺した。
やはりこの男もゆっくりと身体が崩れていく。
「ああ、ああ、これでようやく。」
なぜだろう。
この男は嬉しそうな顔をうかべて砂へと変わってしまった。
「なあロウ。」
「何ですか?」
「どんな事をやったんだよ。」
「うーん、ただ回復するからダメージをずっとするように全身串刺しにしただけですよ?」
「それだけであそこまで壊れるものかな。」
「レインさん、それは当たり前ですわ。だって他の人が、この場合はロウさんが刺さっている槍を全部抜いてくれない限りずっとそのままになるのよ。それがどれだけ怖いと思います?」
ずっとそのままって言われても俺にはイマイチピンとこないんだよな。
そもそも普通の俺だとあれだけ槍が刺さった時点で死んでしまっているからな。
「まあ、普通はレインさんの反応が正しいわ。けど私にはその苦しみはよくわかるわ。何をしても死ねない事はそれだけ残酷なのよ。」
レステアの過去にきっとこれと同じことがあったのかもしれない。
その気持ちはレステアや、不死の者しか恐怖がわからないのだろうな。
「ごめんなさい、ちょっとそれたわね。それよりも残りの人達の援護に行かないとよね!」
「そうですね。確か近くにユーリさんがいたはずですよ?」
レステアとロウがそう言ってきた時、
「うん?私を呼んだなかな?」
いきなりユーリさんが上から降ってきた。
「うわ!ユーリさんどっから現れてるんですか!」
「ひどいなレイン君。私は夏に大量発生する黒い生物兵器じゃないんだから。」
「いえ、そんな事一言も言ってないですよ!それよりも相手はどうしたんですか?」
「ああ、それならあっちに転がっているよ?」
ユーリさんが指差した方を見ると、
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、生まれてきてごめんなさい。」
うわー、ロウよりももっとひどい状態だった。
これにはレステアは顔を青くしていて、ロウは唖然とした顔で見ていた。
「いったいどんな事をしたらあんな状態になるんですか?」
「いやー、相手の挑発にカチンてきて計画的にやってみたんだよ。結果はあんな感じだけど。」
「全然説明になってないですよ。」
「えー、説明面倒じゃん。」
ユーリさんは嫌そうにそう言ったが、ちゃんと説明をしていってくれた。