第14話 思い
another side ロウ
俺は今、1人で戦闘音がした方へと向かいながら、昔の事を思い出していた。
この話は今まで誰にもしたことがない俺だけの大切な思い出だ。
その日、俺は家族と一緒にいつも通りの生活をしていた。
ただ、いつもと違ったのは突然ひどい頭痛に襲われて倒れたことぐらいだった。
俺はその時にとても不思議な夢を見た。
夢の中の俺は何故だか地上に存在する生き物すべてに絶望をして、何もかもを破壊してしまおうとしていた。
実際夢の中では自分で言うのもなんだが、正直反吐が出そうな最悪のことを平然とやっていてそのことを悪いとすら感じていなかった。
その中でもっとも迷惑をかけてしまったのが、レインという人物にだった。
俺は彼を自らの駒として利用する為に、彼の住んでいた村を、家族を全て奪ってしまっていた。
しかも追い討ちをするように、殺害した彼の両親を奴隷のように支配をしてあろうことか、彼と戦わせるなんて残酷な事をしてしまった。
夢の中の俺の感覚からでは特になんとも思わなかったが、後で考えてみるとなんて残酷な事を彼にさせてしまったのだろうか。
夢の最後では俺の暴走は、彼が言葉の通り存在をかけて止めてくれて本当の最悪は避けられたが、彼がどうなったのかはわからない終わりで夢の場面は変わった。
場面の変わった先には、こちらを見て微笑む女性となにやら気難しいそうな男性がいて、2人ともこちらを見ながら何も喋らなかったが何かを応援してくれているようだった。
そんな夢をそれからほとんど毎日のようにみるようになっていった。
やがて、邪神との戦いの噂が俺の住んでいる村にまで流れてきた。
そして、その噂から信じられないことがわかった。
それは、俺の見ていた夢は途中から今現在の事へとなっていることがわかったのだ。
これは俺の予想なんだが、ひょっとして俺はこの先倒されるであろう邪神に何か関係があるのだろうな。
その予想は邪神が倒されたとわかった時に真実だった事がわかった。
その日の夢であった。
「こうして自分を前にすると不思議な気持ちだな。」
俺の目の前には、噂の邪神らしき人物がいた。
「あんたは?」
「詳しく知らなくていいさ。ただ願いを伝えたくてな。」
「願い?」
「ああ、私の代わりに彼に恩を返して欲しい。」
「あの夢の事か?」
「あれは、君になる前の私の記憶だよ。あんな事を私は本当にやってしまったんだ。アイリスの奴はこんな俺に君という可能性をくれた。」
「・・・」
「無理にとは言わない。もしあの記憶を、あの私を思うならレインの力になってくれ。」
やり取りはこれだけだった。
それ以降は、2度と彼が、彼の記憶が俺の夢に出てくることはなかった。
そのあとは、ジルバさんに出会い家族を説得してレインさんが復興させた村へと行く事になった。
レインさんと初めて会った時は、かなり衝撃的だった。
あの夢で会った人そのままで、これまでの事が本当だった事がよくわかった。
俺は彼の願いとは別に、どんな風に頑張ればレインさんみたいに強くなれるのか興味を持ち、彼に協力する事をすぐにその場で決めた。
それからは本当に大変だった。
来る日も来る日も、武術の稽古やら警戒の仕方、魔獣の安全な倒し方など初めて習うことばかりだった。
一度だけレインさんの兄弟のジェイドさんに、なぜこの村に来たのか、なんて聞かれた事があった。
もちろんレインさんに恩があったからなんて答えたら、レイン兄さんはそんな事気にしていないから自分のしたい事をしたほうがいいよなんて言われたっけな?
確か俺がその後、絶対に力になりたいみたいな事を言ったら次の日から訓練が地獄に変わったな。
きっとジェイドさんは、俺の事をレインさんの専属護衛にしようとしてくれたんだろうな。
だからこそ今回の件で護衛にしてくれたんだろうな。
これはしっかりと役目をこなして期待に応えないとだな。
そんな事を考えていると、戦闘音はすぐ近くまで迫っていた。
やはり音は正教騎士団と謎の集団との戦闘音だった。
俺はひたすら鍛えた短槍をかまえ加勢する為に飛び出した。