第13話 禁忌
俺たちは現在、正教騎士団がいるであろう方角へと急いで移動している。
「あのユーリさん、彼らは大丈夫なんですか?」
そんな俺たちの後ろでは、けたたましい爆発音と悲鳴が響いていた。
「大丈夫じゃないかな。ほら、悪人ってしぶといじゃん。」
そういう問題なんだろうか?
そのまましばらく走り続けると、前方から戦闘音が聞こえてきた。
「やっぱり襲われているみたいだね。」
「ユーリさん、レインさん。俺が先行して加勢してきていいですか?」
「ロウ君、どうしてだい?」
「最悪、これも敵の罠かもしれないので。引っかかっても一番支障のない俺がいこうと考えています。」
「ロウ、それはダメだ!」
「レインさん、俺はこういう時のために一緒にいるんですよ。それにこれぐらいで遅れはとりませんよ。信じてください。」
ロウはそうは言うけど、村での訓練であれば問題ないし、魔獣との戦闘でも問題なかったが、対人戦はこれが初めてになってしまう。
本人が言うように、遅れはとらないと信じているがその後の事が心配なんだよな。
確認のためにユーリさんを見ると、俺が考えているのがわかったのか、苦笑いをした後ロウの言っている通りにするように合図をしてきた。
「わかった。ただし危なくなったらすぐに逃げてこいよ。」
「それはもちろんですよ!では!」
ロウはすぐに1人で音のする方へと向かっていった。
そういえばなんでロウは俺たちのためにあんなに頑張ってくれるのか不思議なんだよな。
前にそれとなく聞いた事があったが、なんでも俺自身に返しきれないほどの恩があり、それを絶対に返しきる事が自分の生きる理由ですなんて答えられたっけな。
正直俺の記憶では、ロウと出会ったのは村を復興してから最初にジルバさんと一緒に来た時で、それ以前にはあったことはないはずなんだよな。
ロウに聞いても、絶対に秘密です!と言われて教えてくれなかった。
まあ、いつかきっと話してくれるだろうから、その時までのんびり待つとするかな。
「あのー、いいかしら?」
「レステアさん、なんですか?」
「彼が戻ってくるまで私達は行動しないでしょ?少しいいかしら?」
「俺に何かあるんですか?」
「そうよ、あなただけにあるわ。ユーリさんは聞かないで欲しいのだけど。」
「どうやら何か訳ありみたいだね。少しだけなら構わないよ。」
ユーリさんは1人だけ俺たちと距離をとってくれた。
「そうねー、私があなたに聞きたいのはガイルについてよ。私は彼が子供の時しか知らないのよ。」
「・・・ガイルは俺の父さんだったんだよ。」
「なるほどね、だから目が似ていたのね。それにだったって事はやっぱり死んでしまったのね。」
「ああ、俺を救うために。」
「あなたの為に禁忌を犯したのね。その為になかった事にされてしまった。あなたはガイルにとても愛されていたのね。」
「レステアさんは父さんとどんな関係だったの?」
「私と彼は短い間だったけど友達だったわ。あの頃はその時間がとても好きだったわ。といってもドアを挟んでのやりとりだったんだけどね。」
「そうだったんだ。ちなみに禁忌ってどう言う事ですか?」
「うーん、今はまだ話すべきじゃないかな。それについては後で教えてあげる。」
そう言われ話を終わらされてしまった。
今更ながら父さん達がなんで俺以外から記憶ごと消えてしまったのかも知らなかったな。
禁忌っていったいどんな事をしたんだろうか?