第10話 レステアの過去
another side レステア
あれは今からどれくらい前の事だっただろうか?
あまりにも前の事でわすれてしまった。
ただ覚えている事は、まだ教会で恩恵を授かる前の事でした。
その日は、いつもと変わらない生活をしていました。
朝起きてお母さんの手伝いをして、そのあとは仲の良かった友達と遊びに行っている時でした。
「ねー、レステア。何かおちてるわ。」
「待ってよラナ。」
友達のラナが何かが道に落ちているのに気付いて私を連れていくと、そこには翼を怪我して気絶している鳥がいました。
ラナは手でそっとその鳥を持ち上げると、
「レステア、この子怪我しているわ!なんとかしてあげなくちゃ!」
「そんなこと言っても、手当てってどうするの?」
「うーん、わからないわ。」
「それじゃ何もできないじゃない!」
「そうねー、私の家だと世話できないし、レステアの方は?」
「うちも無理よ、お母さん鳥が嫌いだもの。」
私とラナが話し合っていると、怪我をしている鳥が目を覚まし暴れ始めてしまいました。
「あっ!ちょっと暴れないで!」
「ラナ!」
鳥は暴れて、ラナの手から地面に向かって落ちてしまった。
私はなんとかギリギリで捕まえて鳥が地面に叩きつけられる事はなかったが、その時にそれが起きた。
どうやら私は掴んだ瞬間に怪我をしたのか手に傷ができていた。
そして鳥はなぜか怪我をしていたはずなのに、どこも怪我をしていなく私の手から空へと飛んでいってしまった。
「あれ?飛んでっちゃったね。」
「うん。」
私達は今起きた事がわからずに2人して間抜けな反応をしてしまった。
そのあとは、特に何事もなくラナと別れて家に帰る事にした。
そこで、手を怪我したことを思い出して、手をみてみると、
「えっ!うそ!傷がない。」
私の手にはどこにも怪我がなかった。
これが最初の出来事であり、地獄の始まりだった。
・・・
それからはあまり思い出したくもない。
だから簡単に内容をまとめると、その後で恩恵をうけわかった事は、私が不死である事、私の血を飲むと限りなく不死に近づくという事でした。
私の恩恵はあまりにも危険となり教会で保護をされたが、それは表向きの理由でした。
本当は私の恩恵の不死の力を手に入れたいだけでした。
私を保護した神父は私の手首をナイフで傷つけて、そこから出た血を啜るという異常な事をその日から毎日のようにしてきました。
正直最悪でした。
私がどんなに泣き叫ぼうが容赦なくその行為が続けられました。
そんな事もしばらくすると、神父が精神崩壊して終わりがきました。
けれど自由になる事はなく、別の同じような考えの神父が現れて、同じ行動が繰り返されました。
そんな事が何度も何度も何度も何度も続き私もゆっくりと精神が壊れてきました。
そして気付いた時には、私を崇めて不死になるために私を傷つけ血を啜る不気味な宗教が生まれていました。
彼らは皆異様に鋭い目を私に向けて意味不明な事を呟きながら私を傷つけていました。
そんな事が長く続き、これもまた突然に終わりがきました。
詳しくは覚えていません、ただ気がつくと今までいたあの場所にいました。
私は何をしても死なないためか、食事すら必要ありませんでした。
ただ誰もこないあの場所で一日中ずっとぼーとしているだけでした。
そんなある日あの人はきました。
ドスン!
「いってー!なんだよこの場所?つかなんだこの扉もどき!」
突然声が聞こえてきました。
どうやら何をしても開かなかった扉の反対側に誰かいるらしい。
こっちからは姿が見えている。
そこにはまだ男の子と言っていい人がいた。
「ねぇ、誰かいるの?」
「うぉ!声がした!」
「あなたは誰?」
「俺か?俺はガイルっていうんだ!お前は?つかなんでこんなところにいるんだ?」
私はガイルと名乗った男の子に、今までの事やなんでここにいるのかをわかる範囲で説明していきました。
その人は私に起きた事を自分の事のように怒ってくれた。
正直今までそんな人はいなかったのでとても嬉しかった。
それからしばらくは、多分毎日だったと思うけどいつも私に外の話をしにきてくれた。
けれどこれも突然に終わってしまった。
そしてまた孤独な時が来てしまった。
こうなるのなら、ガイルと会わなければ良かったと思った事もあるぐらいだった。
そして、彼がもうここには絶対に来れないとわかったのは、彼に対する記憶が呪いのように消されそうになった時だった。
私には結局それは聞かなかったが、きっと他の人達は矛盾が発生しても気にしないで、きっとガイルが生きていた事を忘れてしまっているのだろう。
私はそのあとはずっとどうやったら自分が死ねるのかだけを考えていた。
結局実行した事は全部無駄だったし、何か方法がないのかな?
そして、今私はあの場所から出てここにいる。
そしてあの時見た男の子と目がそっくりな人がいた。
不思議な事はこの人がガイルの事を覚えていた事だった。
私はその人に興味がでてしばらくは一緒にいてみようと思い行動をすることにした。