第15話追憶のかけら
俺とリリーが暮らしていたジルド村。
途中で一度はよったものの、しばらく誰も手入れをしていなかったために、雑草が成長してしまっていて、酷い有様だった。
「あー、これはまずいよな?」
「そうね、私達以外生き残りもいないから誰も手入れなんてしてくれないわよ。」
「まずは家の確認の前にこれを片さないとだよな?」
「これからここで暮らすから先にやっちゃった方がいいわよ。」
「仕方ない分担してやっちゃうか!」
それからは、みんなで担当の場所を決めてひたすら草むしりをしていくことになった。
俺は草むしりをしている時にふとある事を思い出した。
誰だったか忘れてしまったけど、昔ドヤ顔で「俺の恩恵は、高速草刈りだ!」なんて言っていた人がいたと思うんだよな。
それをリリーに聞くと、
「?そんな人いたかしら?」
「リリー覚えてないのか?」
「うーん、だめね。記憶にないわ。」
「そうか、俺の記憶違いだったのかな?」
おかしいな?
確かいたような気がしたんだけどな。
その後は特に何事もなく、拷問のような草むしりはなんとか終わらせる事が出来た。
その代わりにみんな普段しない体勢だったためか、腰をさすったり叩いたりして痛みをやわらげているようだった。
「まあ、今日はひとまず俺の家とリリーの家に分かれて泊まって、明日から家づくりにかかるか。」
「レインさん、それがいいですね。」
俺の言った意見にジェイドがすぐに賛成をしてきた。
ほかの仲間もみんな同じように賛成をしてきたため、リリーの家でみんなで食事をした後は男子と女子に分かれて泊まることにした。
「そういえば、レイン兄さん部屋って足りるんですか?」
「なんなら俺は野宿でも大丈夫っすよ!」
「使ってなかった部屋とかあるから大丈夫だよ。だからギギ外で寝なくていいよ。」
「それじゃあ、片付けないとですか?」
「それは俺がやるから、みんなはほかの部屋で寝てくれ。」
「いや、俺たちも手伝いますよ。」
「いいってバルド。明日の家の件は俺はまだ協力できないから、これぐらいは1人でやるさ。」
「あまり無理はしないでくださいよ。」
「わかってるって。」
そんな雑談をしているうちに家につき、俺は使ってなかった部屋の片付けをし、他のみんなには先に寝てもらった。
「そういえば、この部屋に入るのは初めてだったよな。」
家に住んでいながら入った事のない部屋があるのもどうかと思うけど、実際どうしてだかわからないがここに入った記憶がないんだよな。
「さてと、どんな感じかな?・・・えっ!」
俺はその部屋を初めて開いた、中は想像していた物置とは全然違いベットや本棚などの家具がちゃんと置かれていた部屋だった。
「なんで物置じゃなくて部屋?爺ちゃんの部屋じゃないし誰の部屋だったんだ?」
俺はその部屋の中に入り、とりあえずどんな部屋だったのか調べることにした。
とりあえず真っ先にダンスを調べると、男性用の服と女性用の服の二種類が見つかった。
俺の記憶には、そんな人達と暮らした記憶なんて全くなかったから、後で爺ちゃんにでも詳しく聞いてみるか。
次に本棚を調べていくと、本好きな人がいたのかいろんな種類の本が置いてあった。
本の表紙を見ていくとやがて表紙のない黒い本を見つけた。
ちょっとした興味で中を開いてみると、どうやら個人の日記らしい。
書いたのは、・・・ガイルという人のようだ。
なぜだろうか?
この名前はどこかで聞いた事があるような気がする。
俺はその日記を読んでいくことにした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◯月△日
今日は俺とメアリーの念願の子供が生まれた。
名前をどうしようかかなり悩んだ。
悩んだ上でレインと名付けることに2人で決めた。
意味は人が生きるには、水が必ず必要だ。
その水をたくさんの人に分け与えるように、優しさをみんなに与えられるような子になるように、レインと名付けることにした。
やっぱり子供は可愛いな!
この子がどういう風に成長をしていくのか楽しみで仕方ない。
◯月△日
レインが初めてハイハイをした。
一生懸命な姿を見ていると、何が何でもこの子を助けてあげたい気持ちが出てくるな。
◯月△日
初めて俺をパパと呼んでくれた。
レインの運命には親父が予言したような、辛いことが待っているのかもしれないと思うとなんとかしたいな。
みんなに協力をしてもらわないとだな。
◯月△日
ルードの情報で、各地に不穏な動きがあるようだ。
用心のためにも、色々と手を打っておこう。
◯月△日
レインの成人の日まで、後少しになってきた。
あの予言まであと少しになったか。
しかし、きっと大丈夫だろう。
今のレインはもう1人ではないからな。
それに、もしもの時はメアリーと一緒に逃せばいい。
それで、俺が足止めをすれば、きっと未来は変えられる。
◯月△日
多分これが最後の日記になるかもしれない。
ただなんとなくそう感じる。
朝から嫌な予感しかしないからな。
もしものためにここに、少し記録を残しておく。
レイン、この日記が運良くお前に届くと願ってこれを残すよ。
今のお前はどんな成長をしているんだ?
俺の期待通りなら、きっとリリーちゃん以外にも惚れられているんだろうな。
まったく羨ましい限りだよ。
だからこそ、馬鹿な選択を絶対にするんじゃないぞ。
きっとこれをレインが読んでいるとすれば、俺は馬鹿な選択をしたはずだ。
お前を助けるためと、勝手に自分の行動を正当化して、死んでいるんだろうな。
だからレイン、お前は俺のようになるな。
大切な人を守りたいなら、自分も生きて共に守りあうんだぞ。
自分を守れない奴は、誰も守れなくなるからな。
レインお前は、将来どうなっているのだろうか?
お前が立派になった姿が見れないだろうことが、俺の一番の後悔だろうな。
我ながらこの内容はひどいな。
レインに向けて書きたいことが次から次に出てきて、なかなかまとめられないな。
だから次で最後にしよう。
レイン、俺はお前がどんな結果を手にしようと、お前のことを誇りに思うよ。
お前を守りきれないであろう俺を許してくれ。
レイン、俺たちの大切な宝物、たとえ肉体を失い魂すら消失しようとも、俺はお前を愛しているよ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
これは、いったいどういうことなんだ!
この日記の内容は俺に関する事が書いてある。
内容からするとどうやら俺には両親がいて、ガイルとメアリーと言うみたいだ。
しかもあの襲撃があった日まで一緒に暮らしていたのか?
おかしい!
俺の記憶とだいぶこの日記はズレている!
考えるにつれてどんどん頭が痛くなってくる。
俺はふらつきながらも何とかベットにたどり着き横になった。
どのくらい掃除をしていなかったかわからないが、ベットはかなり埃っぽかった。
そしてなぜかわからないが、ふとベットから窓の方を見ると、一枚の写真が写真立てに入って飾ってあった。
俺は何気なくそれに近づき見てみると、
「・・・・・俺?」
そこには、真ん中に俺が写っていてその両隣に男性と女性が写っていた。
そして少し離れたところには別の男性が写っていた。
「あれ、おかしいな。何で勝手に涙が出てくるんだ?」
なぜか写真を眺めていると、自然と悲しくないはずなのに涙がでてきた。
俺はそのまま一晩1人で写真をみながら泣き続けた。