第13話罰と救済
another side ダレス
「主人。」
「ライ・・ケル・か?」
「はい。」
「すまな・かっ・・た。」
「いえ、私が選んだ道なので。」
「そう・・か・・。」
私は倒れた姿勢のままライケルがいるであろう方に顔を向ける。
しかし、そこにはすでにライケルは居なくただ灰があるだけだった。
そうか。
眷属化が解けている以上、本来とるはずだったぶんの年を一気にとったのだろう。
そんなことを考えていると、上の空間が光り女性が現れた。
「ダレス。」
「アイ・・リス・か・・。」
「私が何故きたのかわかるわね。」
「ああ、世話・・かけ・るな。」
「そうね、貴方に罰を与えるわ。どんな罰かはあえて教えないわよ。」
「それ・・で・・い・い・・」
「さようなら、ダレス。」
私の体はアイリスによって浄化をされるのだろうな。
さて私に対する罰とはどんなものだろうか?
思えば、私はきっと長く生きすぎたのだろうな。
願わくば、私を倒した彼と同じ様に人となって限りある人生を生きてみたいものだな。
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another side ガイル
「見つかったか?」
「ダメだ!存在が希薄すぎて見つからない。」
「早くしないと間に合わないわよ!」
俺たちは今最後の仕事をしている。
それは力を使いきり存在を消失しようとしているレインの魂を見つけることだ。
事は全てアイリス様から聞いていた。
たぶんレイン本人よりも俺たちの方が、彼の使ったスキルについて知っているだろう。
レインの最後に使ったダーインスレイブの力の代償は、使用者の理性崩壊と存在の消失だった。
それを知った俺たちは、何とか防ぐことができないのかをアイリス様に聞くと、1つだけ方法があった。
それは、その呪いにも近い代償を他の人が代わりに受け取ることだった。
もともと俺たちは、既に死んでいるのだから躊躇いはなかった。
まあ、その代わり俺たちの払う代償はちょっと高くついたが息子のためだから構わないさ。
「くそ!レインはどこなんだ!」
早く見つけないと、せっかく肉体が無事なのに魂が消失したら意味がない!
「いたわよ!」
その時メアリーから、レインの発見報告があった。
俺はすぐに声のした方へ向かった。
俺はレインの魂を見て、正直絶句した。
もうほとんど形はなく、かろうじて人魂みたいなのが存在するだけだった。
「急がないとだな!」
「ええ!」
「見つかったんだな?」
その時ルードも俺たちに合流した。
「何とか間に合ったよ。しかしルードお前はいいのか?」
「何度も聞くな。こいつは俺にとっても息子みたいなもんだ。」
「いうなー、父親の座は譲らないぞ!」
「最後にくだらないこというな!最初に俺が請け負う。」
「いいのか?」
「後ならひょっとしたら話せるかもしれないだろ?父親なら父親らしく褒めてやれよ。」
「ルード、すまない。」
「メアリーさん、預かるよ。」
「わかったわ。」
メアリーからルードにレインの魂が渡された。
「レイン、良く頑張ったな。さすが俺の自慢の弟子だ!お前は俺の事を忘れるだろうが、俺は常にお前を見守っているよ。」
ルードは魂にそうつげると、アイリス様から教わった方法で力を注いでいった。
やがてレインの魂がゆっくりと人の姿になっていき、代わりにルードの姿は薄れていきやがて完全に消えてしまった。
「あなた、次は私が。」
「待ってくれメアリー、俺が先に。」
「だめよ。」
俺が先にやると告げようとしたが、遮られてしまった。
「あなたは最後にレインを褒めてあげて、なんだかんだレインはあなたを一番尊敬していたのだから。」
「・・・わかったよ。」
「レイン、こんなになるまで良く頑張ったわね。母さんはあなたを誇りに思い続けるわ。リリーちゃん達と幸せになるのよ。」
メアリーもルードと同じ様に力を注いでいく。
レインはさっきよりもはっきりと人の姿になった。
かわりにメアリーは消失してしまった。
「まったくあいつら絶対レインが意識戻ったら、別れるのが辛くなるから先にしたんだな!」
俺が悪態をついていると、レインがゆっくりと目を開けた。
「・・・ここ・・は・・?」
「はは、寝ぼけてるなレイン。」
「・・・と・う・・さ・ん・」
!!
そうか!
力を注いだおかげで、今まで負っていた反動が治っているんだな!
まったく最後にいきな事があるもんだ。
「レイン、良く頑張ったな!さすが俺の息子だ!」
「・・とう・・・さん・・?」
「今は安心して寝ていな、後は父さんがやっておいてやるからな!」
「・・ああ、ありがとう父さん。大好きだよ。」
レインはそれだけ言うと眠ってしまった。
ああ、まったくこいつは!
泣くまいと思っていたのに、最後にとんでもない爆弾を落としやがって!
くそ、目から汗が出てきやがる。
「レイン、父さんも母さんもルードもお前が大好きだよ!たとえ忘れてしまったとしてもこれだけは絶対忘れるなよ!」
俺もルードやメアリーと同じ様に力を注いでいく。
「まったく、できるならこれからもずっと一緒にいてやりたかった!いつかリリーちゃん達との間に子供ができたら、その子達と遊ぶのがゆめだったんだよ!・・・・レイン、幸せになれよ。」
力を注いでいきながら俺は、アイリス様から聞いた俺たちの代償を思い出していた。
俺たちの代償。
それは俺たちの存在の消失だった。
つまり、今生きている人達の記憶から俺たちが存在した事が忘れ去られてしまう。
それには、もちろんレインも含まれている。
つまりレインは自分の両親について一切の存在した記憶がなくなり、初めから存在しなかった事になってしまう。
レインには残酷な事をしたのかもしれない。
けれど、レインが無事に生きれるのなら、俺たちは構わなかった。
レインには前に言ったが、死んだ俺たちより今を生きてるレインの方が大事だからな。
いつかレインは真実を知って悩むかもしれない、苦しむかもしれない。
それでも、俺は胸を張って言える!
「レイン、いつか真実を知って悔いがあるかもしれない、けど忘れるなよ俺たちは後悔をしていない。じゃあなレイン。」
やがてレインの姿がしっかりとしてこの空間から消えた。
俺もそれに合わせて消失をしていった。