第1話限界
「ここは?」
俺は今知らない場所にいた。
それなのに不思議と安心な場所に感じられた。
どういう事なのか説明するのは難しいが、とにかくここにいると安心するのだ。
「やはりここに来ていたのね。」
何処からか声が聞こえてきた。
「レイン、いつもあなたは無茶をするんだから。」
俺の目の前に突然女性が現れた。
この人は一体誰なんだろうか?
何故俺の名前を知っているんだ?
「どうしたの?そんな顔して?」
「すみません、あなたは誰ですか?」
「!!レイン、ふざけてるの?」
「いえ、真面目ですよ?会ったことありましたか?」
「・・・ここまで進んでしまったのね。一時しのぎにはなるかもしれないけど・・・するしかないわね。」
なんだろう?
俺はこの人の知り合いだったのだろうか?
あれ?
俺はなんでここにいるんだっけ?
やばいなあまり遅くなると父さんと母さんが心配するよな。
「レイン、少しごめんなさい。」
女性はそういうと、俺の手を握り締めた。
すると、そこから何か温かいものが俺の体に流れてきた。
「つぅ!」
「レイン、我慢して!」
突然に激しい頭痛がしはじめる。
とっさに手を離そうとしたか、女性が離さないように強く手を握ってきた。
「ああああ!」
「お願い頑張って!」
頭が割れそうに痛い!
力尽くでも手を離そうとするが、ますます力を入れてにぎってくる。
やがて永遠に続くんじゃないかと思った頭痛がゆっくりと治まってくる。
それに合わせて俺の頭がスッキリとしてきた。
「そうか、ここは精神世界か!」
「レイン、私がわかるかしら?」
「ああ、アイリス!」
そうだ!
ここは、俺の精神世界じゃないか!
それなら安心するのは当たり前じゃないか!
しかもアイリスの事を忘れていたなんて、いったいどうしたもんか。
「思い出せたのね。」
「なんとか。なんで忘れていたんだ?」
「力の反動よ。」
「まさか!・・・・・・そうか二回使ったからか。」
「そうよ。それに精神的負荷が重なったから、症状が一気に進んだのよ。」
「なら、なんで治ったんだ?アイリスの力のおかげか?」
「・・・レイン、これはあくまで一時しのぎよ。」
記憶が戻っているのが、一時しのぎって事か?
つまりまたしばらく経つと忘れていくのか?
「力を使わなければ、ある程度の間は大丈夫のはずよ。」
「それってどれくらい持つんだ?」
「長くて一年ぐらい。それからさっきの状態まで戻っていくわ。実際どれくらい忘れていたかわからないから、どんな状態に戻るのかわからないわ。」
「次に力を使ったらどうなるんだ?」
「次に力を使ってしまうと、・・・たぶん、全てを忘れてしまうかもしれないわ。」
「・・・そうか。」
つまり、俺は邪神との戦いでは、双剣の片方、ダークネスの精神攻撃は使えないのか。
使わなくて大丈夫ならいいんだが、ダメな場合には覚悟が必要か。
それも、全てを失う覚悟か。
「・・・ごめんなさい。こんな運命をあなたにしいてしまって。」
「アイリス?」
「私が、私が甘かったからいけないの。どんな悪人でも必ず改心すると信じて封印したのに、全てが裏目に出てしまうし、彼を倒す力にはこんなにも代償がついてしまったわ。」
「・・・・・・」
「私が覚悟も、力もないせいなのよ。レイン、あなたには私を恨む資格があるわ。」
「アイリス、俺はそんな事を考えてないよ。確かにこの力のせいで、たくさん失ったよ。けどこれのおかげで生きていのもあるよ。」
この力のせいで、俺の両親は2回も死ぬ事になった。
村の人達は、邪神の眷属に虐殺される事になってしまった。
ルードさんも、殺されてしまった。
失ったものは確かに多い。
けれど、この力のおかげで俺は村の襲撃で生き残れた。
レジーナとの戦いで勝つことができた。
操られていた両親を、解放して安心させる事が出来ただろう。
何より自分の大切な人を守れているんだろう。
「俺はこの力に感謝しているよ。」
「レイン、ありがとう。」
「次の戦いが最後になるんだよな?」
「ええ、レインどうか彼をダレスを止めて。」
「ああ、わかったよ。」
「彼は今暴走をしているわ。止めるためには、時空の狭間へいく方法を調べないとだわ。」
「そこにいるのか?」
「ええ、封印を一つ破壊したから、そこから出てこれないわ。ただ問題はもう一つ封印があることね。」
そうだった!
たしかどこか他に隠してあるんだよな。
「これは解かれない事を願うしかないわね。」
「そうだな。」
「最後にレイン、絶対に無茶をしないでね。私の巫女が悲しむからね。」
「わかっているよ。それじゃあ、そろそろ行くよ。」
「さすがに何度も来たから戻れるわね。」
「次は全部終わったら会いにくるよ。」
「わかったわ、楽しみにしているわ。」
いよいよこれが最後の戦いになるんだな。
どんな結末になろうとも、後悔しないように全力で立ち向かおう。