終話狂気
another side 闇
「ふふふふ、あはははは!」
「主人、どうしましたか?」
「してやられたよ。アイリスの奴め思い切った事をしてくれた。私の計画が台無しじゃないか!」
「いったい何がありましたか?」
「あの女、私のカケラを消し去りやがった!私が地上に降臨して全てを破壊するはずだったのに、全部台無しじゃないか!」
「それは、つまり。」
「そうだよ。ここから出れない。だが私の力は使える。虚像作成で地上を破壊してやる。」
「主人、あの2人は?」
「消されたみたいだよ。全く忌々しい器だ。さっさと殺しておくべきだった。」
なぜ、主人はここまで器に思い入れているのだろうか?
そんな事さえしなければ、きっと全て上手く行っていたはずだ。
「さてどうやって全てを破壊しつくしてやろうか!やっぱり圧倒的力で潰すべきだな!」
もはや主人はすっかり変容してしまっている。
かつて、私達が忠誠を誓ったあの頃の姿はなく、破壊にただ執着する残念なものに成り下がってしまっている。
あの頃が懐かしいな。
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One day side ライケル
何故だ!
何故、こんなことになってしまったんだ!
私の目の前には、絶望が広がっていた。
私が少し街を離れている間に、どうやら盗賊が街を襲ったらしく、私が使えていた主人、主人の家族、私の妻、息子、娘、同僚、中のよかった街の人々、全てが虐殺され火を放たれていた。
私の目の前には、ただ燃え盛る炎と燃えて一部炭になっている死体しかない。
どうしてこんな事になっているんだ?
盗賊ごときに遅れをとるような戦力ではなかったはずなのに!
何故こんな事になってしまったのだ?
「おや、旦那。生きていたんですかい?」
声の方を振り向くと、そこには私と同じ主人に護衛として使えていた人物がいた。
「いったいこれはどういう事なんだ?」
「旦那、そんなのわかりきってるじゃないですか!」
そいつは私の疑問にそう答えると、私に近づき抱きつくと、脇に鋭い痛みが走った。
「なっ!」
そこを手で触れると、真っ赤に手が染まった。
「旦那、俺はねもともとこれが目的だったんだよ!あいつはお人好しで簡単に騙せた。一番の危険は旦那だったんだけど、上手く隣町にいなくなったから、楽に実行できたんだよ。いやー、ありがたかったね。」
「貴様!」
「何もできずに死んでいくなんて、俺は想像ができないんだよ。なあ、旦那今どんな気持ちだよ。せっかくだから教えてくれよ。」
こいつはこんな奴だったのか、見抜けなかった自分が情けない!
こいつに言いたい事を言われ、何もできない自分が惨めだ!
私は、こんな事の為に生きてきたわけではない!
憎い、憎い、憎い、憎い!
何もできない自分が憎い!こんな事したやつらが憎い!目の前のこいつが憎い!こんな状況が憎い!なにもしてくれないやつらが憎い!この世界が憎い!全てが憎い!
「旦那、いい目じゃないか!無力で無様だな!」
こいつを殺す力が欲しい!この運命を壊す力が欲しい!どんなものでも構わない!絶対的な力が欲しい!この世界を破壊する力が欲しい!
そんな事ばかり考えていると、頭に直接声が聞こえてきた。
「力が欲しいか?」
ああ、欲しい!
「この世界を壊したいか?」
ああ、こんな世界なくなってしまえ!
「なら私に協力して、この世界を作り変えたいか?」
出来るんなら、こんなクソな運命を変えたい!
変えられるならなんでもする!
「交渉成立だな。私の力の一部をお前にくれてやる!使いこなしてみろ!」
俺の体に何かが流れ込んできた。
そのあとは、あまりよく覚えていない!
気がつけば、私は全身返り血で真っ赤に染まっていた。
奴を含む盗賊は全員肉塊にかわっていた。
「上出来だ!我が新しき眷属よ!私達とともに新たな世界を作ろう。」
これが私とダレス様との出会いだった。
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another side 闇
「準備が整ったぞ!さてじっくりと一気にどっちで地上を破壊してやろうか?どっちの方が楽しめるかな?」
ダレス様はすっかりあの時とはかわってしまっている。
かつては地上を破壊しても、必ず再生をさせる事を目的にしていたのに、今はただ破壊する事しか考えていない。
もはや、決意をしていた私だかもうついてはいけない。
これは、誰かにこの方の暴走を止めてもらうしかないな。
でも誰に頼めるだろうか?
・・・・・・彼しかいないだろうな。
彼はきっと私を恨んでいるだろう。
けどこのままでは私の望んだ未来は永久にこないだろう。
私は確かに世界の破壊を望んだが、けして消滅はのぞんでいない。
覚悟を決めて、ダレス様が気づいていないうちに、私はスキルの転移を使って、この狭間の世界から地上へと向かった。