第16話別れ
「どうしたレイン!口だけなのか?」
「くっ!」
俺の攻撃は父さんに全て防がれていた。
父さんのスキルを使って死角にまわっても、
「レイン、甘いわよ!母さんもいるのよ。」
母さんが防いでしまう。
それに合わせて父さんも斬りかかってくるために、結局距離をとるしかなくなる。
「おいおい、レイン。そんなんじゃ俺達を倒せないぞ。」
「そうよレイン。もっと考えて攻めないと意味がないわよ。」
2人とも簡単にいうけど、こっちは1人なあげくせっかく隙を作ろうにも、互いにかばいあうために難なくかわされてしまう。
さらに、下手に近づけば両方の攻撃をかわしながらになってしまい、単なる体力の消耗でしかなくなってしまう。
「レイン、いつまで悩んでるんだ!こっちから仕掛けるぞ!」
「ちょ!」
ガキン!
父さんが一気に間合いを詰めて攻撃をしてくる。
それを受け止めると、
「レイン、脇が甘いわよ!」
母さんが、父さんの背後から横に飛び出し、左脇を斬りかかってくる。
「くそ!」
それをなんとか受け流して防ぐ。
「レイン、なぜ母さんの武器を破壊した力を使ってこないんだ?」
「・・・・・・」
わかっているよ!
使えば確かにこの状況を変えられるだろうよ。
けどもう一度使ってしまっているし、次に使えばどうなるか不安で使えないんだよ!
「レイン、こたえろ!」
「そうよ、レイン何故なの?」
俺はなんとか2人と距離をとり、何故使わないのかを言った。
「あの力は反動が強いからもう一度は使えないんだよ!」
「・・・レイン、それは嘘だな。お前、まだ迷っているんだな。」
「父さん、そんなわけないだろ!」
「いや、俺の息子は大切な人の命の危険があるのに、そんな腑抜けた事を言うやつじゃない。」
「父さん、本当だよ!次に使えばどうなるかわからないから、使えないんだよ!」
「レイン、それは後からつけた言い訳だろ!」
どうしたら理解してくれるんだ!
クリムゾンを使えば体が危ないから、ダークネスを使って斬ればわかるか!
俺は父さんの攻撃をクリムゾンで受け、母さんが仕掛けてくる前にダークネスの力を使って父さんを攻撃する。
ダークネスは父さんの武器を通過して、父さん自身を攻撃した。
「・・・レイン!お前はばかにしているのか!」
次の瞬間には、父さんの蹴りでおもいっきし飛ばされた。
「ふざけるなよレイン!俺はちゃんと言ったよな?俺達を倒して解放してくれって!」
「・・・・・・」
「わかった。レインお前がそんなんなら、俺は、俺達はお前の大切な人を全員殺そう。」
「・・・何言っているんだよ父さん?」
「言ったはずだぞ?俺達の意思に関係なく邪神の命令を実行するってな。これはそう言う事だよ!ここで止められないなら、俺と母さんはそこのアレスや、リリーちゃんやヘレンも殺す事になる!それ以外にも会っていないお前の他の嫁や仲間もだ!俺達にそんな事をお前はさせたいのか!」
「・・・・・・」
「レイン、ガイルが、私達がどんな気持ちで言っているかわかる?あなたを信じているからよ!」
「・・・・・・」
「メアリー、もういい。こいつはこの程度の男だったんだよ。まずはアレスだな。」
「!!」
父さんは俺に背を向けると、アレスさんの方へと向かって歩き出した。
俺は止めようとしたが、母さんが邪魔をしてきた。
「母さん、どいてよ!父さんを止めないと!」
「レイン、これが最後よ。あなたは今を生きている人と死んでいる人、どちらが大切なの?」
「わかってるよ。でも父さんも母さんも今いるじゃないか!」
「そうね。でも生きてはいないわ。レイン知っているでしょ?私もガイルも死んでいるのよ。」
「でも目の前で生きている!」
「違うでしょ!私達は無理やり生き続けさせられているのよ!こんな屈辱はないのよ!」
「ううう。」
「レイン、私達を倒せないなら、母さんがあなたを殺すわ。」
母さんは剣を構えて、俺の首へと振り下ろしてくる。
俺はそれを受け止める。
「レイン、私は言ったわよ。あなたを殺すと!」
「!?」
受け止めた剣が突然重くなった。
そしてゆっくりと俺の首へと近づいてくる。
「母さん!」
「死になさいレイン!」
どうしてこうなるんだよ!
俺が何をしたっていうんだ!
「うわわわわ!」
俺はクリムゾンの力を使って剣と一緒に母さんを斬り裂いた。
「レイン、それでいいのよ。」
母さんはそのままそこに倒れた。
俺はすぐさま父さんに近づいて斬りかかる。
「はは、そうだよレイン!お前が守るべきは生きている人だ!」
「ああああああ!」
俺はただひたすらに斬りかかっていた。
父さんはそれを何とかしのぐだけになっている。
「レイン、ごめんな。お前にばかりこんな役目をさせてしまって。俺達を恨んで構わない。」
「父さん!」
俺は覚悟を決めて、クリムゾンの力を使って父さんを斬り裂いた。
「がはっ!」
父さんは、血を吐いてその場に倒れた。
「レイン、よく頑張ったな。」
「・・・父さん。」
「すまないが、母さんのところに連れて行ってくれるか?」
「わかった。」
俺は父さんに肩を貸して、母さんの倒れているところへと連れていった。
「はは、メアリーも派手にやられたね。」
「あら、あなたほどじゃないわよ。」
「父さん、母さん、俺は・・・。」
俺が2人に謝ろうとすると、父さんは俺の頭を撫でてきた。
「よくやったなレイン。さすが俺の自慢の息子だよ!」
「そうね、辛かったわよね。よく頑張ったわよ。」
母さんも俺を抱きしめてきた。
「レイン、俺はお前を誇りに思うぞ。」
「私もよ、レイン。」
「父さん、母さん!」
くそ!
力の反動なのか意識が遠のいていく!
待ってくれまだ2人に言いたい事があるんだよ!
「俺は・・2人の息子・・・で・・・・よ・・・か・・・。」
「おっと、限界みたいだな。こんなになるまでよくやったな。」
「そうね。もう体も精神も限界だったのね。」
「こうやって、寝ている姿はあの頃のままだな。」
「そうよ、レインはいつまでたっても私達の子供よ。」
「それは違いないね。ところでアレス。」
「何だ?」
「もうドアを塞いでなくていいよ。」
「気づいていたのか?」
「ああ、レインの成長のためにありがとな。」
「ふん、リリーやヘレンのためでもあるからな。」
アレスが壁から退くと、そこの壁が崩れリリー達がいた。
「えっ!おじ様、おば様?お父様どういう事ですか?」
「リリーちゃん、ごめん時間がないんでね。レインを引き取ってくれるか?」
「レイン!」
リリーが2人からレインを引き取って、2人と距離をとってその間にジェイド達が入った。
「警戒しなくて大丈夫だよ。もう少しで消えるだろうからね。それより、最後にレインの他の嫁を教えてくれるかい?」
ガイルの右手はすでに灰になってきていた。
「おじ様、ユフィーとミリーあの人達が、レインの両親よ。」
「はじめまして、ユフィーです。」
「ミリーです。」
「あらあら、2人とも可愛い子ね!レインったら。」
「これは、安心だな!まったく。」
「ねえ、リリーちゃん。レインに伝言預かってくれる?」
「はい、おば様。」
「ありがとう。それじゃあ、周りをよく見なさいって言って。それと私達はいつでも見守っていると。」
「俺からは、足を止めるなと、どんなに悩んでもいい、迷ってもいいけどけして歩みを止めるなよって、伝えてくれ。」
「わかりました。」
「限界みたいだな、レイン俺達の大切な宝物、お前の成長をずっとみていたかった。悩みを聞いてやりたかった。これからの事はアレス達に任せるよ。」
「任せておけ。」
「泣くなよ、親友。」
「お前だって泣いているだろ。」
「親の特権だな。」
ガイルとアレスは互いに泣きながら別れをすませた。
「ああ、私の大切な息子。これからの成長が楽しみだったわ。リリーちゃん達との結婚式できる事なら参加したかったわ。リリーちゃんにユフィーちゃん、ミリーちゃんこの子の事お願いね。」
「はい、おば様。」
「わかりました。」
「うん。」
「ありがとう。レイン、肉体が滅んでも魂はずっと一緒にいるわよ。」
「メアリー。」
「ガイル。」
2人は最後に見つめ合ったまま、ゆっくりと全身が灰になって消え去っていった。