第15話再会
キン、ガン、ギン!
俺と仮面をつけた父さんは、互いの攻撃を互いの武器で防ぎあっていた。
やはり父さんは強い。
どんなに斬りかかっても、フェイントを入れても、ことごとく防がれてしまう。
さらにはそれだけじゃなく、こちらの攻撃に合わせて返しまでしてくる。
俺はそれをギリギリかわすのがやっとだ。
アレスさんの方を見ても、俺と同じような感じだった。
仮面をつけた母さんが、アレスさんに一方的に攻撃をしていた。
ガキン!
そんな事を考えていると、首のギリギリの位置に父さんの剣撃がきた。
くそ!
武器のスキルを使おうにもあたるイメージが全くできない。
あたらないのにスキルを使うのは、本当に無駄遣いになってしまうから、なんとか隙を作らないとだな。
「く!レイン君、すまない。抑えきれなかった。」
アレスさんの方から声が聞こえると、俺の方へと鉄球が飛んできた。
なんとかかわすが、すぐに父さんの斬撃が襲ってくる。
「くっ!アレスさん大丈夫ですか?」
「両腕をやられてしまったよ。本気を出せればよかったんだが、ここだと使えないもんでね。」
そういえば、アレスさんのスキルはどんなのか知らなかったな。
今言ったくらいだから、条件が厳しいのだろう。
しかし、このままだと切り倒されるか、鉄球ですり潰されるしかないよな。
これは、どっちかの武器を破壊するしかないよな。
そうなると、可能なのは母さんの方だろうな。
俺は決意をすると、父さんの斬撃をひたすらかわす事だけに集中をして、次に母さんが仕掛けてくるのを待つ。
そして、母さんが仕掛けてきた時にスキルを使って破壊をした。
そのタイミングでやはり父さんが仕掛けてくる。
それをかわして、距離をとる。
それにしても、少し変だな。
父さんは、いまだにスキルを使ってこないな。
もしかして、使わないんじゃなくて使えないのか?
俺は確かめるために、父さんのスキルを使うことにした。
父さんに仕掛ける時に、加速のスキルを使うとすぐに後ろに移動する。
父さんは、反応できずにいる。
俺はダークネスのスキルを使って斬りつけた。
「グアアアアアアア!」
父さんと母さんが同時に苦しみ始めた。
しばらくは、叫んだりその場で暴れていたが、徐々におさまっていきやがて完全に動かなくなった。
「レイン君、どうなった?」
両腕を痛めた為に壁に寄りかかっているアレスさんが俺に聞いてきた。
「わかりません。」
それからしばらくして、2人がゆっくりと起き上がり始めた。
「くそ!随分好き勝手されたもんだよ。」
「そうね、本当にムカつくわ!」
2人はそんな事を言いながら立ち上がった。
「父さん、母さん。」
「ああ、レインしばらくぶりだな。」
「そうね、見ないうちに立派になっているみたいね。」
「2人とも大丈夫なの?」
「そうだな。今は大丈夫だな。」
「どういう事?」
「俺たちに強制の呪いがかけられてるみたいだ。」
「それって?」
「わかりやすくいえば、命令に俺の意思は関係なく体が動くって事だな。」
「な!そんな!」
「レイン、俺たちはもう死んでいる人間だ。生きているのはおかしいだろ?」
「けど、父さんせっかくこうして話せているんだよ?」
「そうだな。だから先に伝えたんだよ。いつこれが動くかわからないからな。」
「そうよレイン!先に知っていないと警戒できないでしょ?」
「それはそうだけど。」
「それにしても、アレスはダメだな。」
「ほっとけ、メアリーがおかしいだけだ。」
「ひどいわよ。アレスさん、私は普通に戦っただけよ。」
「まあ、メアリーの普通がおかしいのは、前からわかっていたけどね。」
「ところで、アレス。ここにはお前とレインだけか?ルードのやつはどうした?」
「知らないのか?前回の戦いで死んでるよ。」
「・・・そうだったか。あの時だったか。」
「ねえ、父さんはどうして邪神の味方に?」
「なりたくてなったんじゃないぞ。死んだはずだったのに、気がついたら目の前に奴がいて強制的に仲間にされたんだ。」
「そうだったんだ!聞けてよかったよ。」
「それよりレイン、母さんは聞きたい事があるの!」
「なに?」
「リリーちゃんと上手くいってるの?」
「そこは大丈夫だよ、それより戻ったら大変なんだよ。」
「そうだな、2人とも聞いて驚け!レイン君はリリー以外に今のところ2人も嫁ができたぞ!」
「おお!さすが俺の息子だな!」
「やっぱりね!さすが私の息子よ!」
久々に会話したけど、やっぱり父さんと母さんは変なところで息が合ってるな。
「さてと、いつまでも話していたいがどうやら時間みたいだな。レインわかっているだろ?俺と母さんを倒せよ?スキルはなんとか使わないように抑えといてやるからな。」
「私の方はメインの武器がないから、アレスさんの剣を借りるわ。何も持っていないと、何をするか私もわからないからね。」
「父さん、母さん、どうしてもやらないとダメなのか?」
「当たり前だろ?レイン、お前は生きているリリーちゃんと、死んでいる俺たちどっちが大切なんだ?」
結局解放できたのに、こうして話せるのに、倒すしか方法がないのか!
「レイン、私達を救えない悔いは残るかもしれないわ。けどね後悔だけはしないで、私達はもともと救えない存在なのよ!もう一度死んでるのよ!」
わかっているよ!
言われなくてもそんなことは!
くそ!
どうしても、理解はしていても納得できないんだよ!
「レイン、俺たちは邪神に拘束されて自由になれないんだよ。」
「そうよ、レイン!今の状態から私達を救って。」
「「レイン、死によってこの戒めから解放を!」」
俺はきっと今日のことを悔やみ続けるだろう。
けど同時に今日のことを誇りに思おう!
俺には、立派な両親がいた事を確認できたんだから!
「父さん、母さん、全力でいくよ!」
「ああ、俺に成長を見せて安心させてくれ。」
「ええ、あなたの成長を見させてもらうわ。」
「俺の今ある全てを出し切るよ!」
俺は父さんと母さんを倒すべく駆け出した。