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Rebellion Cord 〜黄昏の彼方へ〜  作者: shun
九章 アストラ王城決戦
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第5話ルナ


「まあ、レインはしばらく動けないんだから、ゆっくり休んでね。ご飯は持ってくるから。」


「リリー、これからみんな訓練を始めるのか?」


「そうよ、レインが目を覚ますまでこんな感じなのよ。」


「そうだったのか。」


「そういう事だから、大人しくしてるのよ。」


「わかってるよ。」


それだけ言い残して、リリー達は部屋からでていった。


みんな出て行くと、やっぱり1人になるとこの部屋は静かだな。

体が痛む以上できる事も何もないので、ベットの上でただじっとしているしかなかった。


けどよく考えると、あの事件以来こうして1人で何かをゆっくり考える時間ってなかったな。


こうしていると、今までのことが嘘みたいだな。

あの頃が少し懐かしいな。

そういえば昔俺が熱を出して寝込んだ時だったっけな、今みたいな感じでベットで寝たきりの状態で、父さんと母さんに看病されたんだよな。


父さんなんかかなりあたふたしてて、風邪には卵酒がよく効くはずだとかいって、母さんに内緒で作ってくれて飲まされたんだよな。


その後で俺の様子がおかしい事に気付いた母さんに父さんがボコボコにされたんだっけ。


・・・・・・いけないな!

どうも1人だと思考が悪い方にいってしまいそうだな。


どうやってこの暇な時間を過ごすべきだろうか?


俺がそんな事を考えていると、


トントン


「?あいてるよ。」


突然にドアを叩く音がしたので、返事をしたがすぐに入ってくる気配はしなかった。


「どうしたんだ?入ってこないのか?」


それからしばらくして、


「・・・・・・今少しいい?」


部屋に入ってきたのはルナだった。


「ああ、暇だったからちょうど話し相手が欲しかったんだ。」


「あの、ルナね、その、えーと。」


「慌てなくていいから。」


「・・・・・・うん。」


それからルナは、俺のいるベットの近くに椅子を持ってきて座り、しばらくじっとしていた。


「ルナ、何か俺に話があるのか?」


「うん、・・・・・・怪我は大丈夫?」


「ああ、まだ動けないけど。」


「・・・・・・いなくなったりしない?」


「大丈夫、目の前にいるだろ?」


「本当に?突然いなくならない?動かなくなったりしない?目を閉じたままにならない?」


ああ、そうだったのか!

俺はミリーが大丈夫だったからルナも大丈夫だろうと、勝手に思っていたけど本当は違うんだよな。


ルナが姉のユフィーを含めて、誰1人として名前を呼ばなかった事は気付いていたが、その原因が何なのかがわからなかった。


今のルナの言葉でようやく理解できた。

そうだよな、ルナぐらいの時にかなりきつい体験をしてしまえば、人付き合いにためらいがでるよな。


ルナは、まずはヘイブル王城から追い出される事を味わい、仲の良かった人達と無理やり離されるのを味わった。


次に移住した村で母親が死ぬ姿を見てしまったのだろう、後でユフィーにも確認しないとだけど、たぶんルナは母親が生き絶える瞬間に立ち合ってしまったのだろうな。


そんな経験をしてしまった以上、心に深い傷を負ってしまっても仕方がないのだろうな。


そして、無意識のうちに自分以外の人の名前を呼ばないでおいたのだろう。

名前を呼びあうのは、関係を作る上で最初でもっとも大切な事だからな。


また、母親の時のような気持ちを味わいたくないから、名前を呼ばずあまり他人と仲良くならないようにしていたのだろう。


けど今回はそれでも、ルードさんの事で味わってしまって混乱をしてしまっているのだろうな。


「なあ、ルナ聞いてくれるか?」


「なに?」


「今俺はちゃんといるだろ?」


「うん、けどいなくなるかもしれないでしょ!だから約束してよ!」


「約束したらルナは納得するのか?」


「うん、今だけは安心できるよ。けどボロボロな姿を見たから明日は安心できないよ。」


「そうだろうな。けどそれじゃ、ずっと不安が続いていくだけだろ?」


「だからずっと一緒にいてくれるって約束してよ!」


「それはできないな。」


「どうして!やっぱりお母さんみたいにルナを置いていっちゃうの?」


「そうじゃないよ。けどいつかは別れる時が来るだろ?」


「そんな時は来ないよ!」


うーん、思ったよりも根が深そうだな。


「ルナのお母さんはルナが嫌いでいなくなったのか?」


「ううん、そんな事ないよ!けどルナを置いていなくなっちゃったもん!」


「なあ、ルナのお母さんは、どんな人だったんだ?」


「ルナの?とっても優しくて、ルナが悪い事すると、とっても怖かったよ。」


「そうだったんだ!俺の母さんと同じだな。」


「そうなの?」


「ああ、そうだよ。ルナのお母さんと一緒で、優しくて厳しかったよ。」


「その人は今どうしているの?」


「ルナのお母さんと同じだよ、俺を助けるためにね。」


「・・・・・・何でそんなに平気なの?」


「今はこうだけど、その時は大変だったんだよ。その場で暴れまくって挙句には気絶したんだよ。」


「想像できない。」


「今回もそうだったよ。」


「!!」


「今回も俺は叫びまくってまた気絶したんだからね。」


「・・・・・・ならどうして?」


「そうだな、俺のせいでって思うのをやめて、俺のためにって思うことにしたんだ。」


「どういう事?」


「ルナだって、たぶんいなくなったのは自分のせいだって思っているだろ?」


「・・・・・・うん。」


「それをね俺がこの先、生きのこるための道を作るためだって思うことにしたんだ。」


「・・・・・・」


「だってそうだろ?ルナのお母さんも、ルナに生きて欲しいから、生きて幸せになって欲しいから助けてくれたんだろ。」


「・・・・・・」


「これは、とある人に言われたんだけど、犠牲になった人達に俺は愛されていて、生きて欲しいと願われたんだ、だから心を閉じちゃいけないって、そして失った物だけで今残っている物を考えろってね。」


「・・・・・・今残っている?」


「そうだよ。俺にはルナを含めて沢山の仲間がいるよ。だからもう迷わないんだよ。」


「・・・・・・ルナには。」


「同じだろ?それにルナにはユフィーがいるだろ?」


「・・・・・・お姉ちゃん。」


その時、タイミングよくユフィーが部屋をたずねてきた。


「レインさん、ここにルナがいませんか?」


「いるよ。入ってきて。」


俺が答えると、すぐにユフィーは中に入ってきた。


「ルナ!」


「お姉ちゃん。」


「まったく!心配したのよ!」


「ごめんなさい。」


ユフィーはルナを抱きしめた。

ルナは抱きしめ返しながら、


「ごめんなさい、ユフィーお姉ちゃん。」


「!!ルナ。」


それからしばらく2人は抱きしめあっていた。


「レインお兄ちゃん、ルナもそうやって考えるように頑張る。もしも、また不安になったら話聞いてくれる?」


「ああ、いつでも話にきな。」


「うん。」


これで、ひとまずルナの問題は大丈夫そうだな。

それにしても、初めてアイリスに会った時に言われた言葉が役に立つとは思わなかったな。

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