第2話最悪の敵
「うっ。」
俺は目を覚ますと、瓦礫が周りに散乱している場所だった。
「そうか、教会総本山後だったんだ。」
「おや?レイン君、目が覚めたかい?」
「アレスさん。」
「まだ起き上がらない方がいい。どうも怪我の治りが遅いみたいだからね。」
俺が起き上がろうとすると、アレスさんに軽く止められた。
実際少し動こうとしただけで、全身に激痛が走って無理だった。
「あの後どうなりましたか?」
「レイン君が分かっている通り、敵は死亡したが、こっちもルードが死んだよ。」
「そうですか。あのルードさんの亡骸は?」
「髪を一部とルードの愛刀を残して、あとは魔獣に喰われたくないから、遺骸は燃やしたよ。」
「そうですか。」
「あいつには、家族が居なかったから、墓は村に一緒にするつもりだよ。」
「ルードさんって、家族が居なかったんですか?」
「ああ、もともと孤児で傭兵団に引き取られたらしいからな。独立した後も、これといった出会いはなかったらしいな。」
「そうだったんですね。俺、自分の身近な人の事すらあまり知らなかったんですね。」
「レイン君、それは当たり前だよ。本来なら長い時間をかけて知っていく事なんだから、今知らなくても仕方ないよ。」
「でも!」
「知らないのが嫌なら、これから知っていけばいいんだよ。」
「それじゃ意味がないですよ。」
「そんな事ないよ。確かにルードにはもう話し合う事はできないが、君がルードがどういう人生を歩んできたのかは、ルードを知らない人には伝えられるだろ?」
確かにそうだな。
ルードさんとはもう話せないが、他の人には話す事は出来るんだな。
「そうですね。悔んでばかりじゃダメですね。」
「少しはいい顔になってきたね。」
アレスさんは心配をしてくれていたんだな。
俺の答えに満足をしたように頷いていた。
「そういえば他のみんなは?」
「レイン君が動けるようになるまで、どうするのかを話し合ってもらっているよ。」
「そうなんですか?それなら俺も参加した方がいいですよね?」
「あー、それなんだが、まだレイン君に話さなきゃいけない事があるから、他の人たちには中に入らないでもらっているんだ。」
なんだろうか?
アレスさんがなにやらものすごく言いづらそうにしている。
「どうしたんですか?」
「いや、そのな、なんていえばいいのかな。レイン君、驚かずに聞いて欲しい事があるんだよ。」
「なんですか?」
「今回の戦いの前に君とルードが、仮面をつけた人物に襲われただろ?」
「はい、確かに戦いましたよ。」
「私とヘレンも戦ったんだ。」
あね異様に強かった仮面の人物と戦ったのか?
なぜ戦った事を言うのを渋っているのだろうか?
「レイン君、君達は仮面の人物が1人だけだっただろ?」
「はい、そうでしたよ。」
「私達は2人いたんだよ。そしてその2人と戦って仮面を壊したんだ。」
!!
それってつまり仮面の人物が何者かわかったって事だな。
けどなんでそれでいい出すのを渋っていたんだ?
ひょっとして俺の知り合いだったんだろうか?
「レイン君、落ち着いて聞いてくれるね。」
アレスさんは俺に念押しで聞いてきた。
「大丈夫です。」
「・・・・・・仮面の人物は、ガイルとメアリー、つまり君の両親だったんだ。」
「・・・・・・は?それはないですよ。だって母さんが死んだのは、目で見てますし父さんは、確かルードさんが確認してますよ?」
「そうだね、私達も村に戻った時に、だいぶ傷んでしまっていたけど、2人の死体はみているからね。」
「それなら、似ている別人なんじゃ?」
「私は2人とは長い付き合いだから、見間違える事はないよ。」
一体どう言う事なんだろうか?
父さんも母さんも、死体は確認されているのに、仮面をつけて俺たちに襲ってくるなんて。
そういえばアイリスが言っていたっけ、次が一番の試練になるって、それはつまり俺は自分の両親と戦わなくてはいけないのか。
「アレスさん、父さん達はなんて言っていましたか?」
「なにも言わなかったよ。これは私の感じた印象だけど、ガイル達は無理やり操られているようだったよ。」
「本当ですか?」
「ああ、ガイルの本気はよく知っているからね。あれは力を使いこなせていなかったよ。」
ひょっとしたら、イワンと同じように強制的に従わされているのかもしれない。
確かイワンも、死んだはずだったのに生きて操られていたらしいから、ありえるかもしれないな。
「それがわかっても、父さん達と戦うしかないですよね。」
「そうだな。解除の仕方がわからないからね。」
まさか、父さんに母さんと戦わなくちゃいけなくなるなんてな。
これは覚悟を決めても、かなり辛いな。