第10話師匠
「ルードさん?」
俺は倒れそうになったルードさんを支えて、ゆっくりと横に寝かせた。
俺は今見ている光景を信じることができなかった。
あの時の母さんと同じ事がルードさんに起きたのだろう。
「くそ!奴のスキルは体を操るんじゃなくて血を操るものだったか!
レイン、いいかよく聞け。」
ルードさんは、胸を貫かれていながらも俺に話しかけてきた。
「ルードさん!すぐに治療します!」
「レイン、無駄だ。さすがに俺でもこの傷では無理だ。」
「そんな事ないです!必ず助かります。すぐにみんなを呼んできます!」
「レイン!待て!」
「でも、このままじゃ。」
「だから待て!レインお前に伝えておく事がある。」
ルードさんは真剣な表情で、俺に話しかけてきている。
今は命が危ないのに、なぜこのタイミングなんだ?
まだ助かるかもしれないのに!
「レイン、仮面をつけた奴がいただろ?あいつには絶対気をつけるんだ。いいな?」
「そんな事今言わなくていいでしょ!」
ルードさんの胸からは出血が止まらない。
このままじゃ本当に危ないんだ!
「レイン、すまなかった。あの時もっと早くついていれば。」
「ルードさん、何で謝るんですか!」
くそ!
何でだよ!
何で血が止まんないんだよ!
「くそ!意識が朦朧としてきやがったか。」
「ルードさんしっかりしてください。やっぱりすぐにみんなを」
俺がまだ戦ってるかもしれないみんなを、何とか呼んでこようとすると、ルードさんは腕を掴んで止めてきた。
「何で止めるんですか!」
「レイン、・・・・話を聞け。」
ルードさんは俺に有無を言わせない勢いで言ってきた。
「ルードさん。」
「・・・お前、体はどうなんだ?」
「えっ?」
「・・・気付かれてないと思っていたのか?」
「はい。」
「・・・どれくらい一緒にいたと思うんだ。」
「そうですね。」
「・・・今更・・聞いたりはしないさ。・・・でも、誰かに・・・相談するんだぞ。」
「・・・・・・はい。」
話しながらも俺は何とか治療をしようとしているが、全く効果がない。
「・・・レイン、・・俺は・・・約束を・・・・果たせたのだろうか?」
「ルードさん、約束ってなんですか?」
「・・・・俺は、・・お前に・・・残せた・・のか?」
「ルードさん!何の事ですか!」
「・・・・・はは、・・・そうだな・・・・役・・・は・・・果たせたんだな。」
くそ!
また俺は目の前で、大切な人を救う事ができないのか!
「・・・・・・自分・・を・・・・責めるな・・・」
ルードさんは俺の頭に手を伸ばしてなでてきた。
そうは言っても、結局俺は何もできない。
「・・・・・・レイン、・・・後は・・・頼む・・・・」
「ルードさん、しっかりしてください!」
何か方法はないのか!
くそ!
血が止まらない!
どうしてだよ!
「・・・レイ・・ン・・・・」
ルードさんは俺を最後の力で抱きしめてきた。
「・・・・・俺は・・お・まえ・・に・・あえ・・・て・・よかっ・・た」
「ルードさん?」
「・・・お・まえ・・の・・・さ・きを・・もっと・・・みて・・いた・かった」
「やめてください!そんな事言わないでください!」
「・・・・レイ・・ン・・・お・まえ・・・を・・・むす・・・こ・・の・・・よう・・に・・・おも・・って・・・い・・る・・・ぞ・・・」
「俺もそうですよ!父さんが死んでからはルードさんをそう感じていました。」
「・・・あ・・・・り・・・・が・・・・」
ルードさんが俺の腕の中で、ゆっくりと息を引き取っていった。
「ルードさん?冗談ですよね?お願いですから、起きてください。」
また俺は救えなかったのか!
力を持っていながら大切なものは1つも守れないのか!
ビキ!
「ガァァァァ!」
俺は力の反動と、ルードさんを失った事が重なり、なりふり構わず叫び意識を失った。