表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/21

9

その後の店内ではアレンは死闘(瀕死だった)を繰り広げていた。


「、、、コ、コーラル侯爵」


「やぁ、アレン君じゃないか。君も何か見に?あぁ、ミレアに何か贈り物かい?結構なことじゃないか」


アレンはこれはまずいと、とりあえず話をあわせて店からの逃走をはかろうとする。


「は、はい。でもミレア嬢が気に入るものがなさそうなので、、」


「そうか、この店のものはミレアにはまだ早いかもしれないな」


そこに割って入ったのはミレアの母親である。


「あなた、違うわよ。こちらの方はね、私に髪留めを送ってくださるのですって」


ね?そういってましたわよね?と詰め寄られる。


「えっ、、、それは、、あの、、」

焦るあまり何も言えなくなってしまった。


「髪留め?どういうことかな、なぜ君が私の妻に贈り物を?」


「いえ、特には意味は、、はい、ないです。すみませんでした!」


「すみませんとはどういう事だ?」

コーラル侯爵は大分お怒りのようだ。


「まさか、、お前!」


アレンへ何か言おうとしたが妻に「あなたは黙っていてくださる?」と言われその後出番はなかった。


そしてミレアの母親が一つの商品を手に取る。


「ほら真っ赤な宝石のついた髪留めとはこれよね?似合うかしら?せっかくですからいただきますわ。どなたかこれを包んでくださる?」と侯爵夫人は店の者に髪留めを渡す。


買えるわけがない。いろんな意味で。

「あの、ここで失礼させていただ」


「あら?お支払がまだでしてよ」


「、、はい」


こうして高い買い物をさせられたアレンだったが当然支払えるわけがない。実家の名前でつけ払い。身分はコーラル侯爵が保証した。アレン、、、ボロボロどころではすまないだろう。


「用が済んだのならお帰りになったら?それともまだ何か贈り物をしてくれるのかしら?」


「いいえ、、はい。失礼します」


アレンはこれからの事を考えてか大分顔色が悪い。


「まっすぐお家に帰るのよ。いいわね」


「、、はい」


『カランカラン』


こうしてアレンは侯爵夫妻から解放され、これから恐ろしい目に遭わされるだろう両親の待つ自宅へと帰って行った。





ミレアの母親はアレンが出ていってすぐ店の者に話しかける。


「ちょっといいかしら?ごめんなさいね。この商品はコーラル家で購入させていただきますわ。間違ってもマレシュ侯爵家に請求などしないでね。あなた、いいわね?」


「もちろんだよ。で、アレン君はなぜ君と?」


「ぷっ、いじめすぎたかしら。それにしてもハンカチは傑作だったわ。ふふふっ。私の顔知らなかったのかしら?一度会っているはずだけど」


「おい、一体なんなんだ」


「あなた、彼はダメよ。ミレアにはふさわしくない」


侯爵は急に真剣になってそう告げた妻に何も言えなくなってしまった。


店での買い物を終えたあと、帰りの馬車でハンカチの件からの一部始終を聞かされたコーラル侯爵は怒りが頂点に達する。が、「あなたの見る目がどれだけないのがが良く分かりました」と言われ深く反省することになる。




++++



一足先に家へ着いていたミレアは帰って来た両親を出迎える。


「お父様、お母様お帰りなさい。ねぇねぇ二人のお出かけは楽しかった?何処へ行ったの?何かお食事はしたの?」


なんとも言えない顔をしている二人。父親の顔色が悪いようだ。


「お父様?」


「ミレア、すまなかった。私が間違っていた。あれはダメだ」


「あれ?お母様?」


「この人のことは気にしなくていいのよ。それより見てほしいものがあるの。ミレアのために沢山買ってきたのよ。気に入ってくれるといいのだけれど」


ミレアはテーブルの上に並べられたものの中に気になるものを見つける。


「これ素敵だわ。これはお母様のでしょ?とても似合うわ。さすがお父様ね」


「そ、それは、、、」


ミレアが手に取り父親にみせたのは、真っ赤なガーネットがちりばめられた髪留めだった。


アレンはセンスがあるらしい。




その日のうちに婚約の話は立ち消えとなった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ