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(嫌な予感がする)
私は「旦那様がお呼びです」とメイドに告げられ父親の私室前まできていたが、どうしても扉を開ける気にならずにいた。
よし!と気合いを入れ扉を叩くとすぐに「入りなさい」と入室の許可がでる。
「お父様、失礼し、、えっ」
意外な人が父親の隣に立っているのが視界に入り驚いて入室の挨拶が中途半端になってしまう。
「ミレア、待っていたよ。こちらが婚約者のアレン君だ。自己紹介はいらないかな」
父親が責任取らせたぞ!とばかりにあの笑みを見せる。
「こ、婚約者とはどなたのですか」
何かの間違いであってほしい。
「ミレアの婚約者に決まっているだろ?まぁまだ正式ではないがね」
なぜかアレン様は私の婚約者になっていた。
はっ!ダリアの手紙!!ダリアは知っていたの!?
「あとは二人で話でもするといい。アレン君、分かっているね。ミレアに指一本ふれるなよ」
いや、そんなに心配だったら出ていかないで!!
『パタン』
無情にもドアが閉まった。まぁ、アンがいるので二人きりではないが、こないだの暴言から数日しか経っておらず気まずい。しばらく沈黙が続いたあとアレン様が話しだす。
「あの、質問してもいいかな」
「どうぞ」
「怒らないで聞いてほしいんだけど、その、ダリアが婚約破棄を言い出した原因って「あなたの浮気でしょ!」」
思わず言ってしまった。
「えっと、それはそうなんだけど君は私の事がす「嫌いです」」
この人は一体何を言い出すんだ。いい加減イライラしてきた。あれだけの暴言吐いたあといまさら丁寧な言葉はいらないだろう。
「言いたいことがあるのならはっきり言ってもらえます?」
「いや、あー、だから、あー、よし!言うぞ!」
気合いを入れないと話せない事なの?
「君は私の事を愛するあまりダリアに嫉妬して浮気のようなものを告げ口し婚約破棄になるよう仕向けたあげくダリアになり代わって私の婚約者になろうとしたんじゃないのか?」
一息で言ったせいか酸素不足で顔が真っ赤になるアレン様。あまりの自意識過剰な発言に怒りを通り越して呆れた。浮気のようなものって何だ?あれは完全に浮気。アンの額には青筋、、、。
「はい?どこにそんな要素がありました?まったくもって不愉快です」
「では、私の婚約破棄もこの婚約も君が望んだことではないのか」
「当たり前です。なぜあなたのようなうわ、、、失礼。婚約破棄についてはアレン様ご自身が招いた事でしょうし、この婚約に至っては私も今初めて知りました」
「そうなのか、、おかしなことを言ってすまなかった。あ、君にケガをさせたこと謝らせてほしい。改めて、申し訳なかった」
出ました土下座!
「もういいです。そんなことよりこの婚約なかったことにしましょう」
頭脳明晰、家柄良し、顔良し、性格良し、あとは私だけを愛してくれる、というなら考えなくもないが。アレン様のことだ、きっと無理だろう。浮気に悩まされる未来しか見えない。それに好きにはなれなそうだし。(色々な現場を何度か見ちゃってるし)
「、、、それは無理」
「では私に一生あなたの浮気に悩み苦しめと?」
「、、、浮気はしない」
「ウソですね。私はこの目で何度か見てますから」
「うっ、」
ほらアレン様、目が泳いでますよ。
「では私から父にこの婚約のお話を無かったことにしてもらうよう話します。幸い正式なものではないと言ってましたし」
私に激甘なお父様に言えばすぐに解決と部屋を出ようとしたところで声がかかる。
「頼む!」
また頼むですって?頼み事の多い人ですね。というかまだ土下座中でしたか。
「なぜです?」
「もしこの婚約が破棄されたら、、、頼む!オレを助けると思って婚約を続けてくれ!」
「はい?意味がさっぱりわかりませんけど、婚約がアレン様を助けることになるとして、なぜ私が助けなければいけないんです?」
そんな泣きそうな顔されても嫌なものは嫌。
「親父が、、、」
「お父様が?」
「、、、こわい、最悪死ぬ」
こわい??
あぁ!そういえばアレン様の家は代々軍をまとめる役についていて、父親である侯爵様は数年前から軍のそれはそれは偉い職につかれているとか、剣の腕が素晴らしいだとか聞いたことがある。
なるほど、それであの日はボロボロに、、、。よっぽどしごかれたのね。
でも父親がこわいから婚約してくれってどうなの?侯爵様、指導が足りないんじゃない?
「それにケガをさせた責任はとるから。君のお父上ともそういう約束を」
いやいや、ケガって今は痕すら残ってませんから。普通の貴族令嬢は大騒ぎしてここぞとばかりに結婚を迫るかもしれませんが私は違います。
私のお父様とアレン様のお父様のダブル侯爵で話し合った結果が婚約ですか?
今から暴言吐きます!(心のなかで)
『侯爵ってバカなの?』
「とりあえず今日は帰っていただけます?この件に関してお互い各々の家での話し合いが必要だと思いますので」
「わかった」
「あ!ちょっと待った!」
素直に出ていこうとするアレン様に言い忘れたことを伝える。
「もちろん破棄の方向で!」