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夕刻過ぎにダリアの家から戻った私は父親に呼ばれる。
「お父様どうかされました?」
「ミレア!ケガをさせられたとは本当か!」
父親は15になる娘から未だ子離れ出来ずにいる。
「えぇ、まぁ、」
きっとアンが報告したのだろう。
「話は聞いた。レインのとこの馬鹿息子だろ。大丈夫だ。ミレアは何も心配しなくていいぞ。きっちり責任はとらせるからな」
レインとはアレン様のお父様だ。
アレン様に掴まれた箇所が赤から少し黒っぽく変わった腕を見て「ここだな?痛むか?大丈夫か?可哀想に、今日はもう休みなさい。ちゃんと冷やすんだぞ。あとは父様にすべて任せなさい。ミレアを傷物にしやがって、、」という父親に不安しか感じなかった。
休めと言われたので自室に戻りベッドに横になるとすーっと眠りに入った。意外に疲れていたのか朝まで起きることはなかった。
私の父親とアレン様の父親での話し合いがもたれたのは数日後。
話し合いの内容はケガをさせたことに対する抗議だけではなかった。
私はなぜ父親にすべて任せてしまったのだろうか。まさしく後悔先に立たず。
++++
数日後
ダリアは無事に婚約を破棄することが出来たらしい。喜びの手紙が届いた。ハイン様とは「婚約破棄したことで堂々とアプローチ出来る。これから頑張る」とあった。手紙の最後に「ミレアも大変ね。でもアレンはもう浮気はしないと思うわ」と書かれていたのが非常に気になった。
私とアレン様は知り合いの知り合いくらいの関係だから浮気しようがどうでもいい。
たいしたケガでもないのに、娘を溺愛する父親から言い渡された長い自宅療養期間が昨日で終わった私は、気晴らしにアンを連れて買い物へ出ることにした。そして会いたくない人に会ってしまう。
「ミレア嬢?」
「はい?あら、アレン様こんなところでどうしました?」
(周りには女性はいないようだ。っともう報告はいいんだった。癖ってすごい。アレン様はどこにいても目立つから。それよりもなんか色々とボロボロではない?老けた?たしか私より3つ上だったかしら?まだお若いのに)
「その、婚約が破棄されて、、、君が告げ口を、、したんだろう?」
『プチン』
(ミレア15歳、今日まで自分は温厚な性格だと思っていましたけど、少し違っていたかもしれません。ダリアのことがあったので今まで黙っていましたけど、もう我慢しなくていいですしね。こういう浮気者にははっきり言ってやりましょう。さて。)
「はぁ?告げ口ですって?どの口がそんなこと言ってるのよ。人を責める前に告げ口されるようなことしていないと言える?あなた、婚約者がいながらそこら中で女の子に声をかけまくり、この間は抱きしめていたわね。そんな男は婚約破棄されて当然です!あなたは女性の敵よ。それに私にケガをさせたことを謝りもせず、告げ口したんだろうなんて責めるなんてどうかしてるから。謝るつもりがないなら私に二度とその無駄にいい顔を見せないで頂戴!」
私の勢いにおされたのか唖然とするアレン様を放って買い物を続けた。イライラしていつもよりいろいろと多く買いこんでしまった。お菓子は屋敷で働くみんなに配ろうか。
家へ帰った私を待っていたのは父親の黒い笑みだった。
「お帰り。ミレア」
「ただいま帰りました。お父様」
「すべてうまくいったからね。安心するといい」
すべて?その笑顔、全然安心出来ないんですが。