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今日の演目は昨日と違って悲恋ものだったがとても良かったと大満足のミレア。
アレンのエスコートも完璧だった。ミレアの歩幅に合わせて歩いてくれるのはもちろん、少しでも段差があればスッと手を差し出してくれる。馬車の中で話す内容もミレアを飽きさせないものだった、アレンのことだからここぞとばかりに触ってくるのではないかと警戒していたがそんなことは全くなかった。自分には魅力がないのかもしれないとさえ思うほどアレンは紳士だった。
ミレアに食べさせたいと言っていた食事はとても美味しかったし、デザートが格別だった。食後に紅茶を飲んでいると暑くなったのかアレンはシャツの腕を捲りながらミレアへちょっといいかな?と質問をはじめた。
「で、カインのことはどう思ってるのかな」
「はい?」
「少なくとも嫌いじゃないよね?」
「もちろん友人ですから」
「友人か、、恋人にはならない?」
「恋人ですか、、どうでしょうか」
「否定しないってことは可能性はあるってことだよね」
「、、勝手に決めないでほしいですね」
「ごめんごめん。一応お兄さんだからカインのことが心配なんだ。今日だって本当はカインが良かったんじゃないかなぁとかさ」
「カインとは昨日一緒に観ましたけど」
「うーん、そっか。今日は楽しめた?私は楽しかったし、また付き合ってくれる?」
「遠慮しておきます。私、目立ちたくないんです」
今日は痛い視線をビシビシと浴びた。
なんであんな子がアレンの側にいるの?釣り合わないわ!と言われている気分になった。
「あぁ、今日は注目されてたね。女の子に嫉妬されるほど可愛いってことだよ。自信持っていいよ」
(いや、絶対違うから)
食事が済み、店を出て馬車の停めてある場所まで歩いている途中のことだった。
何も言わす真剣な顔をしたアレンに抱きしめられる。とうとう本性を現したかと非難の声をあげるミレア。
「きゃっ、アレン様何をするんで、、」
『ゴンッ』
『パリーン』
「痛っ」
(えっ?なに??割れた音!?)
すっと身体を離されて顔を上げるとニコニコしているアレンの顔。
「ケガはない?無事に帰すって約束だったからね」
「ア、アレン様、、そ、、れ、」
対してひきつるミレアの顔。
ケガなんてさせたら本当に侯爵に殺されちゃうよなんて言っていたがそんなのはどうでも良いくらいに動揺していた。
それもそのはず、彼の顔に血が流れていたのだから。
「大丈夫ですか!すいません!今いきます!」頭上から男の声がした。
2階のベランダに吊り下げられた鉢植えがなにかの拍子に落ちてしまったらしい。鉢植えは一階にある店の庇部分に当たり割れ、一部が凶器となりミレアを庇ったアレンの腕へと落ちていった。
「いいえ。大丈夫ですよ。気にしないでください」
そんな顔を見て気にしない人はまずいない。鉢植えを落とした彼がアレンにペコペコしながら謝っているが今はそんなやり取りをしている場合ではないと「顔が、すぐ手当てを、、アレン様早く医者へ、、」そうオロオロするミレアだった。
「大丈夫だよ。ほら切れたのは腕。ジャケット着ておくべきだったよ。とっさに頭は守ったから顔は平気、美男子が台無しにならなくて良かったと思わない?父親のしごきにくらべたら大したことないし、ははっ」
何でもないように言うアレン。ミレアは耐えきれなくなって切れた。
「アレン!大したことないって笑いごとじゃないのよ!うちのミーちゃんは手当てが遅れて歩くのもやっとなの!いいからちゃんと手当てしなさいよ!」
「ミーちゃん?誰?それよりアレンって、、うん、いいね。じゃあミレア、君が手当てしてくれるかい?」
「ええ、しますよ!しますとも!」
馬車に戻ると待機していたアンがアレンの様子を見て絶句した。




