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目の前には二人の男女が手を取り合い見つめあっていた。
「ミレア、一目惚れなんだ。私じゃだめかな」
「ユール、本当に私でいいの?」
「もちろんだよ!」
二人の顔が近付き今にも口付けが、、、というところでカインはたまらず声を出す。
「もちろん、、、ダメに決まってるだろ!」
自分の声にびっくりして目を開くと見覚えのある自室。『はっ!夢?』カインはベッドの上だった。
「嫌な夢だった。僕は重症だな。はぁ、起きるにはまだ早いけどもう眠りたくない、、起きよう」
間もなく陽が昇るかという薄暗い外を眺めながらカインは呟いた。
++++
時間は昼を過ぎ、自室にいたカインは庭から賑やかな声が聞こえてくることに気がついた。
(この声もしかして、、)
カインは慌てて部屋を後にする。
庭へ出たカインはその場にいる兄のハインもダリアも目に入らないようでミレアだけに声をかける。
「ミレア!」
「カイン、お邪魔してるわ。少し騒がしかったかしら?またダリアについてきちゃったの」
「そんなことないよ、大歓迎だよ。ミレアは花が好きなんだよね。うちの庭はもう見た?まだなら僕が案内するよ。」
ミレアはダリアへ目配せすると行ってらっしゃいと手を振る。
「じゃあお願いするわ」
こうしてカインはミレアと二人きりで過ごす時間を手に入れたのだった。
残されたハインとダリアは二人の様子を見て「なかなかいい雰囲気じゃないかな」「そうかしら?」などと言い合っていた。
花壇に咲いた花を見ながらミレアはカインへ気になっていたことを質問する。
「カイン、今日は自分の事オレって言わないのね」
「えっ?あ、う、うん。やっぱりオレのほうがいいかな」
「ううん。私は今日のカインのほうがいいわ。カインにオレなんて似合わない」
そう言ってミレアは笑った。
今度はカインが顔を真っ赤にして言う。
「もう絶対オレなんて言わないから!」
「ふふっ。変なカイン」
すると近くの茂みがガサガサと揺れる。「やぁ」と言って茂みから出てきたのはアレンだった。
「兄さんどうしてそんなところから?」
「稽古の途中だったんだけど休憩?みたいな?」
絶対逃げてきたんだなとミレアは予想した。このまま挨拶もしないのはまずいだろうと声をかけることにする。
「アレン様。お邪魔しております」
「これはミレア嬢ではありませんか。今日はどんな、、あぁ、ではあちらでお茶でも飲みながら話しましょうか。じゃあカインまた後で。さぁ行きましょう」
「「えっ?」」(カインとミレア)
アレンは勝手に話をまとめミレアの肩を抱きどこかへ連れていこうとする。
一瞬呆然と見送りそうになったが我にかえってからが早かった。ミレアの肩に置かれたアレンの手をカインが振り払う。
「ミレアに触れるな!兄さんだって許さない。ミレアは、ミレアは僕の大切な人なんだ!」
「「えっ?」」(アレンとミレア)
「カインの好きな人ってミレア嬢なのか?」
「ち、ちが、、、わない。僕はミレアが、、好き、、なんだ」
「悪かった、勘違いさせたな。オレはそんなつもりはないよ。ただ謝ろうとしただけだ」
「謝るような感じじゃなかったじゃないか」
「それはな、、ここじゃゴニョゴニョ」
「兄さん!聞こえない!」
近くにいたミレアははっきりと聞こえていた。「ここじゃ土下座出来ないだろ」と。
すっかり蚊帳の外になっていたミレアは告白されたことは置いといてアレンへ助け船を出すことにした。
「もう謝って頂きましたので結構ですわ。今後謝罪は結構です」
「じゃあ、父にそう言ってくれないか。このままじゃ、、」
稽古によってボロボロで泣きそうなアレンが可哀想になったミレアはそのお願いを承諾した。
「はぁ、分かりましたわ。今から侯爵様に会えますの?」
「ありがとう!ミレア嬢」
アレンは嬉しさのあまりミレアに抱きついた。ミレアは固まる。カインは叫ぶ。
「兄さん!ミレアから離れて!」
そんな状況をそろそろ帰ろうと二人を探しにきたハインとダリアが「ミレアに触れるな!」あたりから見ていたことに三人は気付いていない。
「ハイン様、カインって意外に情熱的なのね。」
「ミレア嬢が固まっているけど、大丈夫かな」




