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「そんなの認めない!」
その場にいた全員の視線がカインへと集まる。
「いや、その、、急に言われてもミレアが困るだろうと、お、思って、それにミレアの両親に話を通さなければ、けっ、結婚なんて認められないだろ!」
「そうだね、いきなり過ぎたね。ごめん。でもこれだけは受け取ってくれるかな?」とユーレイルは花束をミレアへと差し出した。
とまどいながらもそれを受け取ったミレアは礼を言う。
「えぇ、ありがとうございます。とってもキレイですね」
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これはね、家で品種改良したピンクの薔薇なんだ。君にピッタリだと思って
まぁ、うふふっ。初めて会ったのにピッタリだなんて、、
初めてではありません。一方的ですがこの前音楽鑑賞会でお見かけしたんです。
まぁそうでしたの!あの日の演奏はどれも素晴らしかったですわ。
私は特にバイオリンの響きが良かったですね。
私もです!
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そんな盛り上がりを見せる二人の様子にカインは強く手を握った。心なしかプルプル震えている。そこへダリアが
「ちょっとカイン今のなに?「認めない!」ってやつ。もしかして」
「ダリア、どうしてあの男を連れてきたの」
「どうしてってミレアに紹介するためよ」
「余計なことを、、」
カインとユーレイルは顔見知りだった。たまに会えば話をするくらいの仲。二人は同い年で背格好も同じくらい。違うのは二人に対する女性の態度。カインは王子と表現されるようにイケメンだがきつめの顔つきで近寄りがたく鑑賞用とされ、一方のユーレイルは同じくイケメンだがたれ目がチャームポイントの優しい顔つき。だから女性はユーレイルへ寄っていく。
「ダリア、僕帰るよ」
カインは帰って行った。
++++
なんだかんだで二人はいい雰囲気だったなと落ち込むカインに「どうしたんだ?」とアレンが声をかける。
「兄さん、実は、、」
名前を伏せて今日の出来事を話す。ミレアの名前など間違っても出せるわけがない。
「好きな女の子が他の男と仲良くしているのが面白くないって、、そんなの他の女性に目をむけろよ」
「そんな簡単じゃないよ。兄さんはモテるからそんなことが言えるんだ」
「相手がどんな女性かで対応も変わるんだけどな、、、分かった可愛い弟のためだ、俺にまかせろ」
女っていうのはな、、、と、女性の扱いについてある意味最強の先生からレクチャーを受けたカイン。
早速ミレアを誘うことにした。
「ミレア、ぼ、くじゃなくて、オレと出掛けないか」
(僕は子供っぽいから絶対にダメだって言われたっけ)
「カイン様、いつ?どこへ?」
「明後日は?きれいな場所があるんだ。散策して外でご飯を食べない?」
「いいですよ」
「やった!じゃあ迎えにいくね」
「楽しみにしていますね」
++++
当日迎えに行くとそこには呼んでいないはずの二人がいた。
「なんで、、、ユーレイルとダリアまで」
「いたらまずいのかしら、カイン?」
「私もお誘い頂いたんだ」
「今日のことをダリアに話したら絶対に行くってきかなくて、、ダリアがユールも呼ぼうと言い出して、、、だめでしたか?」
すまなそうな声を出すミレアに慌てて
「ううん、全然いいよ!」
(って、ユール!?いつの間に愛称で呼ぶ仲になったの。僕なんてまだ様つけなのに!)
「ミレア!ぼ、オレのこともカインって呼んでくれないか。あと敬語はやめてほしい」
「えぇわかったわ、カイン」
(う、うれしい)
四人を乗せたマレシュ侯爵家の馬車は本日の散策場所へと到着した。もちろん四人の乗った馬車の後ろからは各家の侍女や護衛の馬車もついてきていた。
バラが咲き誇る庭園などの散策を一通りおえると簡単につまめる食事となった。その食事も終わり各自まったりしているとカインは次の行動に移る。
(よし、次は髪を誉めるんだ)
隣をゆっくりと歩くミレアの髪を触ろうと手を伸ばした。その手はいつの間にか間に入ってきたユーレイルの髪へ。
「君の髪はとってもキレイだね」
カインは深夜までシミュレーションしていた言葉を止めることは出来なかった。
「あ、ありがとう。ちょっと男性に誉められるってなかなかない体験だから恥ずかしいね」
女性二人のカインを見る目は微妙なものだった。
(なんでユーレイルの髪を触って誉めなきゃいけないんだ!絶対変に思われた!)
(よし、次は手を握る、、だ。ドキドキする)
「ミレア、隣いい?」
「どうぞ」
ベンチに座っていたミレアの横へ移動したカインはタイミングを伺っていた。
(いまだ!)
「え?何?今行くわ」
手が触れる前にミレアはダリアに呼ばれ、さっと席を立ってしまった。
カインの手の勢いは止まらない。
ミレアの手があった場所にはベンチの後ろの花壇からカエルがピョンと飛び出してきた。
カインはカエルを握ってしまった。
そこへ現れたのはユーレイル。
「カインはカエルがすきなのか?」
「、、そんなわけないだろ」
「手を洗ったほうがいいと思うよ。ほらそこの小川で」
「、、、わかってる」
(なんて僕はダメなんだ、せっかく兄さんに教わったこと一つも出来なかったよ)
カインは何も出来ないままその日を終えた。出来なくて良かったとは気付いていない。




