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今日ミレアはダリアに呼ばれて公爵家へと来ていた。
「アレンとの婚約の話は完全になくなったのね」
「そうなの。マレシュ侯爵様がアレン様を連れてうちへ来たから正式な婚約が結ばれるのかと思ったのだけれど」
謝罪に来たと言っていたが、実際アレン様とは婚約していないのだから一体何に対しての謝罪だったのだろうか。一言「無しで」で済んだのではないか。
(お父様もお母様も何か隠してるのよね。大人の事情って何かしら?)
さすがにミレアの両親もアレンが婚約者になるかもしれない女性の母親にまで声をかけたことは伏せたいらしい。
「きっとアレンがなにかやらかしたのよ。大丈夫だなんて無責任なことを言ってしまってごめんなさい」
「いいの、婚約なんてまだ早いと思ってたし。今回の件でお父様もだいぶ大人しくなってラッキーだったわ」
「それなんだけど、いずれはお婿さんを迎えるのよね?早くしないと良い相手なんていなくなるわよ」
「それはそうだけど」
「ねぇ、私に任せてくれないかしら?今度こそはミレアの役に立たせて!」
「いや、ダリアは何もしなくていいから」
「そうね、いつがいいかしらね」
結局三日後また家に来るようにとダリアに押しきられてしまった。
++++
約束の日
客間へと通されてダリアを待っているとそこへ現れたのはカインだった。
「カイン様、どうしてこちらへ?」
「ダリアからミレアに会えるよう場を調えてもらった。どうしても僕からも謝りたくて。兄との婚約の話、すまなかった」
え?
頭を下げられた。土下座じゃないだけ良かったが。
「いや大丈夫です。正式に決まっていたわけじゃありませんしそれにカイン様が謝るようなことでもないですから」
「なぜこんなことになってしまったのか僕も分からないんだ。ただ、ミレアの気持ちを考えると僕も辛くて」
「気持ち?あの、」
「婚約の話は無くなってしまったが、僕がなんとかしてみせるから!本当はイヤだけど(小声)」
「なんとかって、、、」
カインの思い込んだ表情に嫌な予感しかない。
「もちろんミレアと兄との婚約だよ」
「はぁ?」
「兄も残念がっていた」
(そうでしょうよ。侯爵からのお仕置きがまっていますもの)
「あれから何かを忘れるようにひたすら兄はよく父と剣の稽古に励んでいるんだ」
(でしょうね、稽古という名の何かでしょう)
「ボロボロになってもやめない」
(、、、それはやめさせてもらえないのでは)
「きっと兄はミレアを忘れようと必死なんだと思う」
(絶対違うから。えっ?カイン様今にも泣きそうなんだけど)
「ミレアも同じ気持ちなんだろうことはわかっている。君の為に何かしたいんだ。だから任せてくれないか」
(カイン様って思い込みの激しいタイプだったのね。いい加減付きあうのも飽きたな)
「カイン様。よろしいですか?まず大前提として私はアレン様のことはなんとも思っていませんわ」
「え?では兄は一方的にミレアを」
「それも違いますわね」
それから私はカイン様にアレン様とのあの出会いから話してあげた。
「では僕は勘違いを!良かった!」
(じゃぁミレアを諦めなくてもいいんだ!)
カインはミレアに一目惚れしていた。アレンの婚約者として紹介させては諦めるしかなかったから。
「と言うことなのでなにも謝る必要などありません」
それならばとカインは一世一代の告白を、、、
「ミレア、こんなこと今言うのは不謹慎かもしれないけど僕とつきあ」
『トントン』
「そろそろいい?」
邪魔された。
顔を出したのはダリアだった。
「えぇ話は終わったわ。今日はカイン様に会わせようとしていたのね」
「違うわ。カインはたまたま時間が合っただけよ。会わせたい人がいるの。はやく来て!」
「あ、ちょ、僕まだ話が」
ダリアはカインを無視してミレアを連れて出ていってしまった。二人の後をカインがついていく。
通された客間には一人の男性がいた。男性はミレアを見るなり用意していた花束を持って近付き跪き頬を染めながら笑顔でこう言った。
「初めましてアベール伯爵家次男ユーレイルと申します。結婚を前提に付き合ってください!」
言われた言葉を理解出来ずに唖然とするミレアより先に口を開いたのはカインだった。
「そんなの認めない!」




